一日目

夜:タカシ宅
ピーンポーン
タ「ん? 誰だこんな時間に。はいはーい?」
ガチャン!
タ「うわっ!? って、かなみ!? 何しにき――って、なに勝手に入ってるんだよ!?」
か「うるさい! ちょっと落ち着きなさい!」
タ「お前が落ち着け! 何しに来たんだよ!?」
か「これから週末までお世話になるわ」
タ「は!? い、意味がわからん。何言ってるんだよ!?」
か「そのまんまの意味よ」
タ「ちょ、ちょっと待ってくれ! お願いだから俺に分かり易く、理由を教えてくれないか?」
か「親とケンカしたのよ。で、ムカついたから出てきたの。『週末まで帰らないからねっ!』
  って言ってねw お父さん今頃後悔してるわよw あぁ〜俺は可愛い娘になんてことをし
  てしまったんだぁ〜ってw」
タ「ケンカ? 一体何したんだ?」
か「お父さんがね、アタシの部屋に勝手に入って日記読んだのよ。本当、信じられない。
  娘の部屋に勝手に入っただけでも重罪なのに、その上日記まで読むなんて」
タ「ふーん……あのおじさんが。なんか意外だな」
か「でさ、アタシお父さんに怒鳴りつけてやったのよ。そしたらさ、お母さんがお父さんを
  庇うのよ? ありえない。同じ女だったら気持ちわかるでしょう?って話。もう、絶対
  向こうが反省するまで帰らない。というわけでお世話になるわよ」
タ「まぁ、待て。色々訊いて言いか?」
か「? いいわよ、何?」
タ「まず一つ目。何で一週間なんだ?」
か「それくらい家出しといたら向こうも嫌でも反省するでしょ。だからよ」
タ「なるほど。じゃあさ、二つ目。何で俺の家に来たんだ?」
か「そ、それは、アンタの家が一番簡単に泊めてもらえそうだったからよ」
タ「俺の家は緊急避難所か? つーか、別に女友達の家とかでも泊めてもらえるんじゃな
  いのか? いくら幼馴染って言っても、いい年の男女が一つ屋根の下で二人きりって
  のは駄目だと思うぞ?」
か「う、うっさいわね。アンタの家が一番近かったのよ。見てよ。こんないっぱいの荷物
  持ってたら、そんな遠くには行けないでしょ? だからよ、バカ」
タ「うーん……」
か「それよりも、部屋どっか案内してよね」
タ「やっぱ帰ったほうがいいんじゃないか?」
か「嫌よ。絶対帰らない」
タ「頑固だなぁ〜」
か「あったりまえよ。アタシがどれだけ怒ってるのか、しっかりと理解してもらう必要が
  あるしね。ところで、アンタん家やけに静かね?」
タ「あぁ、そりゃ母さん達いないしな」
か「………は?」
タ「どうした?」
か「いないってどういうこと?」
タ「そのままの意味だけど?」
か「……………なんでいないの?」
タ「結婚20周年記念。夫婦水入らずで温泉旅行一週間の旅。日曜の午後には帰ってくるかな」
か「ちょ、ちょっと! 聞いてないわよそんなこと!?」
タ「言ってないもん」
か「お、お兄さんは!? アンタお兄さんいたでしょ!?」
タ「いたけど1年前に一人暮らし始めたよ。知ってるだろ?」
か「あ……と、とりあえず整理していい? アンタの両親は今いなくて、来週まで帰って
  こない。それで、お兄さんも家にはいなくて、今家にいるのはアンタだけ?」
タ「それとかなみもな。さっき言っただろ? いい年の男女が一つ屋根の下でって。やっ
  ぱりやめとくか?」
か「………」
―ここからかなみの妄想―
―ここまでかなみの妄想―
タ「おーい、かなみー?」
か「はっ!? あ、アンタなんてことしてんのよっ!?」
タ「え?! お、俺が何した!?」
か「え!? あっ!! ち、違う違う! 気にしないで……(////)」
タ「??? で、どうするの? やめるか?」
か「やめる? やめないわよ。家出は絶対やり遂げるんだから」
タ「けど、俺の家は止めといたほうg――」
か「やると言ったらやるのよ!」
タ「は、はい……」
か「とりあえず部屋、案内して。お兄さんの部屋空いてる?」
タ「あぁ、空いてるよ。ベッドもそのままだからそこでいいか」
か「確か二階よね?」
タ「あぁ、そうだけど……かなみ? 荷物は? 持って行かないのか?」
か「はぁ? アンタが持って来るのよ。当たり前でしょ?」
タ「そんな当たり前知らないぞ」
か「男は荷物運び。これは世界のいえ宇宙の常識よ」
タ「ジェンダーだジェンダー」
か「 う る さ い ! 」
タ「も、持ちます持ちます」

兄の部屋
か「ここね? ホント、ベッドだけね。ま、贅沢は言ってられないか」
タ「はぁーっ……はぁーっ……かなみ、これ何入ってるんだよ? めちゃくちゃ重いぞ?」
か「ん? とりあえず一週間で必要そうなものは手当たりしだい入れたからね」
タ「よくこんなもん持ってここまで来たな? すっげぇ怪力」
か「タカシ? 死にたい?」
タ「ご、ごめんなさい許してくださいオネガイシマス」
か「ったく。ほら、アンタはさっさと出て行きなさい。ここは今から女の子の部屋。男の 
  子は立ち入り禁止。無断で入ったりしたら●●●の刑ね」
タ「(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
か「ほら、出てった出てった」
バタン…
タ「………めちゃくちゃだな……はぁ〜…………」

―一時間ぐらいして―
プルルルル! プルルルル!
タ「電話? 誰からだろう? はい。もしもし。別府です」
かなみ母『あ、タカシ君? こんばんは。かなみの母です』
タ「おばさん? どうしたんです――(って、かなみのことか)」
かなみ母『ちょっとね、家のかなみが家出しちゃったのよ。タカシ君知らない?』
タ「……えっと……(言っちまうか。このままかなみに居座られたらたまったもんじゃな
  いしな) かなみは――」
 突如、タカシの首筋に出刃包丁が触れる。全身に鳥肌が立つタカシ。包丁を持っている
のはもちろんかなみ。
か「ごまかしなさい。でないと……」
タ「か、かなみは……ごめんなさい。わかりません」
かなみ母『そう……あの子ったら何してるのかしら……本当、ごめんなさいね。もしかな      みについて何か分かったことがあれば連絡してね?』
タ「は、はい。わかりました」
かなみ母『うん。それじゃあね、タカシk――ん? 何、ちなみちゃん? え? 代わっ
     て欲しい?』
タ「? おばさん? どうしました?」
かなみ母『あ、ごめんね。ちょっとちなみが代わって欲しいって言うのよ。良いかしら?』
タ「ちなみちゃん? いいですけど」
ち『こんばんは』
タ「ちなみちゃん? 何?」
ち『………いますね?』
タ「え?………だ、誰が?」
ち『……………ニヤ』
タ「(な、何故だろう……電話の向こうで笑っているちなみちゃんが見える……)……
  ど、どうしたのちなみちゃん?」
ち『いえ。もういいです。おやすみなさい』
タ「え? あ、うん……おやすみ……」
かなみ母『あ、タカシ君? ごめんなさいね。それじゃあおやすみなさいね?』
タ「あ、はい。おやすみなさい」
ガチャ
か「ちなみが出たの?」
タ「あ、あぁ」
か「何か言ってた?」
タ「いや、何かよくわからんかった」
か「うーん……怪しいわね……ま、いいわ。とりあえずこれでしばらく大丈夫ね。一週間
  お世話になるわよ」
タ「…………」

こうして、タカシとかなみの一週間だけの同棲?が始まった。


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