六日目


―――(略)―――

カップラーメンをすする二人
か「ズルルルル……手抜きね。カップラーメンって……」
タ「仕方ないじゃないか。まさか朝からしようなんて言い出すとは思わなかったし」
か「な、何よ。その言い方じゃあ、まるでアタシがせがんだみたいじゃない。撤回しなさいよ」
タ「撤回もクソも、事実じゃん」
か「違うわよ。アンタが無理矢理――」
タ「絶対違う! お前寝ぼけてたから、言ったこと覚えてないんだよ」
か「ね、寝ぼけてなんかないわよ。とにかく、しようっていいだしたのはアンタよ」
タ「違うって、かなみだって」
か「違う!」
タ「違わない!」
か「むーーっ」
タ「ふぬぅっ」
か「…………」
タ「…………どっちでもいいか」
か「そうね……」
タ「ズルルルル……で、今日はどうする? 折角学校も休みだs――あ! そうだ! かなみ、料理作ってくれよ」
か「………え?」
タ「料理。前言ってたやつ。どうせやることないだろ? だったら何か料理作ってくれよ。
  別に3時のおやつ的なのでもいいから。俺、かなみの手料理食ってみたい」
か「え……えっと……それは……」
タ「………もしかして、やっぱり下手なのか?」
か「へ、下手じゃないわよ! なめないでくれる!?」
タ「じゃあいいじゃん」
か「う……うぅ………」
タ「決定だなw 楽しみだな。かなみの手料理w」
か「…………」

―結果―
もちろん
タ「………何これ……」
か「な、『何これ』とは何よ! 『何これ』とは!!」
タ「いや……マジでなにこれ?」
か「から揚げよ。から揚げ」
タ「……これは……世間一般では炭と言う」
か「から揚げよ!」
タ「じゃあ食ってみろよ。ほれ、あーん」
か「う……」
タ「はぁ〜……まさか、ここまでとは……」
か「う、うっさいわね……(////)」
タ「これは徹底的に正す必要性があるな」
か「え? 正す?」
タ「俺が料理教えてやるよ。まだまだ時間は十分にある。今から駅前のスーパー行って、
  材料とか買ってこよう。よし! そうしよう! ほら、行くぞかなみ。そうと決まれば膳は急げだ」
か「え? ええ?! ちょ、ちょっと待ってよ!?」

というわけで駅前スーパー
タ「とりあえず何作りたい?」
か「ん〜……そうね……肉じゃがとか、作ってみたいかな」
タ「肉じゃがね。ジャガイモは家にあったな。あとは……タマネギ、人参、椎茸、インゲンくらいかな?」
ち「お肉を忘れてますよ。豚肉」
か「ちなみっ?! 何でここに!?」
ち「何で?とはまた不思議なことを訊きますね。別に私がスーパーにいても不思議はないでしょう?」
タ「まぁ、そうだな。ちなみちゃんがスーパーにいちゃいけない理由はないな」
ち「そういうことです。ところで何でわざわざ肉じゃがの材料を二人で買いに来てるんですか?」
タ「あぁ、それはだな。かなみn――」
か「わーっ! わーっ! わーっ!」
ち「? お姉ちゃんがどうしたんですか?」
か「何でもない。ちなみは早く家に帰りなさい」
ち「家出中の人に言われたくありません。で、お姉ちゃんがどうしたんですか?」
タ「かなみのやつに料理を教えてやろうかなって思ってな。こいつ料理ド下手だから」
か「(////)」
ち「はぁ……なるほど……よくタカシさんにお弁当を作ってあげようとして失敗してるお姉ちゃんを
  見ますけど。確かにあれは酷いですよね」
か「ち、ちなみっ!」
タ「何だ? かなみはそんなことしてくれてたのか?」
ち「はい。朝5時に起きてよく奮闘していました」
か「(///////)」
タ「おぉ〜かなみ可愛いなぁ〜」
ナデナデ
か「や、やめてよ! こんな人前で頭なんて撫でないでよね!」
ち「………ところで、タカシさん」
タ「ん? 何?」
ち「私も参加してもいいですか?」
か・タ『え?』

タカシ宅:台所
タ「まずは、ジャガイモの皮をむいて、4〜6等分に。人参は乱切り。椎茸は石づきを取って
  半分〜4分の1に。玉ねぎは皮をむいて半分に切ったものを6等分位に、豚肉とインゲンは
  半分位に切る。はい、始め」
か「タカシ。ちょっと質問。石づきを取るってどういうこと?」
タ「えっと、それは――」
ち「キノコの、軸の先っちょ。この硬い部分のことです」
タ「お、その通りだちなみちゃん。よく知ってるな」
ち「えっへん」
か「………」
タ「ほら、かなみ。手が止まってるぞ」
か「う……うん……」
トントントントン…
か「ねぇ、タカシ。乱切りってどうするの?」
タ「ん? 乱切りは……ちょっと失礼……こうやって手前に回しながら、斜めに包丁を入れてくんだ。
  わかるか? ほれ、やってみろ」
か「う、うん」
トントントントン…
タ「そうそう。上手いぞ」
か「そ、そう? (////)」
ち「タカシさん。終わりました。次はどうしますか?」
タ「お? 速いな。それじゃあフライパンにごま油垂らして、豚肉を炒めるんだ。それで
  豚肉の色が変わったらタマネギを入れて」
ち「はい」
ジュー!!
タ「ほら、ちなみちゃん速いぞ。かなみも急いで」
か「せ、急かさないでよ! アタシだって頑張ってるんだからね!」
タ「ん?………おい……かなみ?」
か「何よ」
かなみの切ったタマネギを手にとってみると。見事に連結されたタマネギたち
か「あ………(///////)」
タ「まるでマンガだな。ほら、ちゃんと切りなおして」
か「う、うっさいわね。言われなくてもやるわよ」
ち「タカシさん。タマネギはどれくらいまで炒めればいいんですか?」
タ「あ、えっと。うん。これくらいならもういいよ。後はインゲン以外の材料を全部入れて
  ざっと炒めて、次に、砂糖、だし醤油にみりん、酒を入れて、蓋をして中火くらいで
  ジャガイモが柔らかくなるまで煮込むんだ」
ち「はい。わかりました」
タ「ほれ、かなみ。ちなみはもう結構できてるぞ」
か「わ、わかってるわよ! で、できた! タカシ、切り終わったわよ。次はどうするの?!」
タ「次は――」

―何だかんだで―
か「できた………」
タ「よくできました」
ナデナデ
か「! やめて!」
パシッ!
タ「いて!? いいじゃんか、別に周りに人がいるわけでもないし」
ち「お姉ちゃんは、妹の前で頭をナデナデされることも恥かしいんですよ」
タ「姉妹なんだしいいじゃんか」
か「嫌よ! バカ!」
ち「まぁまぁ。とにかく、折角できたんですから早く食べましょう」
タ「そうだな」
か「………(タカシ、美味しいって言ってくれるかな……)」
タ「まずはちなみちゃんから」
か「ちょっと、なんでアタシからじゃないの?」
タ「え?」
か「何でちなみからなのよ。アタシの食べなさいよ。もともとアタシに料理を教えるのが目的だったんだから」
ち「まぁまぁ、いいじゃないですか」
か「ちなみは黙ってて。早く。食べなさいよ」
タ「まぁ、落ち着け。楽しみは最後までとっておくものなんだよ」
か「え……楽しみ……?」
タ「そういうこと」
か「な、なら仕方ないわね。それじゃあちなみの食べましょ」
ち「……ニヤニヤ」
か「何笑ってるのよ(////)」
ち「いえ。では、タカシさん。お姉さん。どうぞお召し上がり下さい」
タ「ん……見た目は凄くいいね。では頂きます………モグモグ……ん! おいしい! 凄く美味しいよちなみちゃん!」
か「ほ、本当だ……おいしい……」
ち「ありがとうございます。では私も……モグモグ……うん。おしいですw」
タ「さてと、次はかなみだ」
か「ゴク……」
タ「頂きます……モグモグ」
ち「モグモグ……(ん……これは……ちょっと醤油が多い気がする……辛い……)」
タ「うん。おいしいよ」
か「ほ、本当っ!?」
ち「…………」
か「ちなみは?」
ち「え……あ……ちょっと醤油が多い気がしますけど……おいしいと思う……」
か「そう?! ありがとう、ちなみ!」
ち「い……いえ……モグモグ……」
タ「やればできるじゃないかかなみ」
か「うん! ありがとうね、タカシ!」
タ「どうしたしまして」

何だかんだで夕方
ち「それでは、さようなら」
タ「うん。気をつけてね」
か「明日には帰るからね」
ち「はい。じゃあ今日はお二人さん。最後の夜ですね…………ニヤ」
か「ちょ、ちょっと、何なのよその笑みは!?」
タ「任せろちなみちゃん」
か「タカシも何馬鹿なこと言ってんのよ!」
ち「では、今度こそさようなら」
タ「バイバーイ」
か「ばいばーい」
タ「………さてと……俺は後片付けするから、かなみはお風呂入れてきてくれ」
か「うん……」
タ「? どうした?」
か「タカシさ……本当にアタシの料理美味しいと思った? ちなみも言ってたけどさ、
  確かに辛いと思った……お世辞にも、あれは美味しいとはいえないと思うの……タカシさ……我慢してた?」
タ「そんなことはないよ。美味しかったよ、かなみの肉じゃがは」
か「嘘つかないでよ。正直に言ってよね」
タ「……はぁ〜。いいか? 俺の座右の銘は『常に正直者であれ』だ。俺は、嘘はついてない。
  俺にはあの肉じゃがが美味しいと思った。だから美味しいって言ったんだよ。嘘なんて言ってない。
  ていうか、かなみが頑張って作ってくれたものなら、なんでも美味しいよ」
か「ぁ……(////)」
タ「あ、でも朝の炭から揚げは勘弁なw」
か「う……うるさい。バカ……(////)」
タ「ほら、わかったらお風呂入れてきて」
か「うん………タカシ」
タ「ん?」
か「ありがとう。大好きだよ」
タ「あぁ、俺も大好きだぞ」
か「(////) うん!」

風呂場
徐々に上昇してくる湯気の立つ水面を、バスタブの縁に顎を置き、ぼーっと眺めているかなみ
か(……タカシ、やさしいな……(////) あぁ〜……タカシ大好きぃ〜…………(////) 
  あ……でも、明日の午後にはタカシの親が帰ってくるのよね……ちなみの言った通り、
  今日がタカシと一緒にいられる最後の夜か………寂しいな………それに、まだタカシといっぱい
  エッチなことしたいのにな…………………あ……そうだ!)

台所
皿洗い中のタカシ
タ「………よし。終わった」
か「タカシ?」
タ「ん? 何?」
か「ねぇ、一緒にお風呂はいろう♪」
タ「はいっ!!??」
ガシャン!!
か「わっ!? ご、ごめんタカシ!」
タ「え?」
か「え? あれ? お皿割ったんじゃないの?」
タ「お皿? 別に割れてないけど?」
か「?」
タ「それより、何だよお風呂って!?」
か「あ! そうそう、お風呂お風呂。一緒に入ろうよ?」
タ「ちょwwwwwモチツケwwwww――

風呂あがりですよ
タ「うわっ!? 二時間も入ってたのかよ!?」
か「ホントだ」
タ「何か、これじゃあもうバカップルだな。俺たちw」
か「え………」
タ「ん? どうした?」
か「あ、アタシ達って付き合ってる……の?」
タ「え? だって、お互い好きって言ったし、こんなエッチなことしてるし」
か「そ、そうだけど。まだ正式に告白とかしたわけでもされたわけでもないし」
タ「ん〜……それじゃあ」
ガシ(←かなみの両肩を掴み、真剣な表情でかなみを見つめるタカシ)
か「え?!」
タ「俺はかなみのことが大好きだ。もしよかったら、俺と付き合ってくれないか?」
か「ぁ……(////) ぅ……うん……ぃぃょ……(////)」
タ「よし、これで晴れて正式なカップルだなw」
か「そ、そうね……あ! でもでも」
タ「ん?」
か「学校の皆には内緒だよ? そ、その……恥かしいから……ね?」
タ「え〜。それって学校じゃあイチャイチャできないってことか?」
か「い、いいじゃないそれくらい」
タ「一組の杉村、遠野カップルは休み時間とかイチャイチャしまくりだぞ?」
か「あ、あれはただのバカップルなのよ」
タ「俺たちも十分バカップルじゃん」
か「そ、そうかもしれないけど。ひ、人前でそんな……イチャイチャとか恥かしすぎるよ……(////)」
タ「ぅ〜ん……まぁ、かなみが嫌なら仕方ないか」
か「うん! じゃあ決定ね。付き合うけど、学校の皆には秘密で」
タ「了解」
か「うん♪」

夜:タカシの部屋
か「……タカシ?」
タ「ん? 今日もか?」
か「うん。最後だしね」
タ「あぁ、そういえば明日には親父達帰ってくるのか。はい、どうぞ」
か「ありがと」
ゴソゴソ…
か「……」
タ「……どうした?」
か「ちょっとね……寂しいなって思って」
タ「まぁ、そうだな。親父達が帰ってきたらこんな生活できないしな。できるとしたら高校卒業までは無理だな」
か「あと半年はお預けか……ま、仕方ないか。もう寝よ?」
タ「そうだな。おやすみ」
か「おやすみ、タカシ」


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