第10話『トラブル・トラベル―京都・宿泊編―』

新幹線に乗り数時間…
アナウンスが次の停車駅が京都であることを告げた。
もう既に周囲は薄暗くなっており、旅行への期待にはしゃいでいた生徒たちも心なしか疲れて見える。
タカシも長い間シートに座っていたため、腰や肩が軽く痛かった。首を捻ってみるとゴキゴキと音が鳴った。
タ(僕ももう若くはないってことかな…?)軽くヘコむタカシ。
梓「ね〜タカシ〜」後ろの席に(とはいっても席を回転させ向かい合っていたのだが)座っていた梓がタカシに、
梓「今日はこのまま宿に直行して一泊するんだよね?」
タ「ああそうだけど…旅行の予定はしおりに書いてあるはずなんだがな…小久保、しおりはどうした?」
梓「え!?あ、あ〜…えっとね、それは…」急にしどろもどろになる梓。目が思い切り泳いでいる。
タ「まさかお前…しおり忘れたんじゃないだろうな?」タカシの眼つきが険しくなる。
梓「ちがうよ〜!あのね…、実はね?」梓が言いにくそうにモジモジしながら、おもむろに話し始めた。
梓「さっきジュースこぼしちゃってさ…」
梓「拭くものなくてしおりで拭いちゃった。ボロボロになったから捨てるしかなくてさ〜」
タ「お前なぁ…作った生徒会の人たちが泣くぞ?まったく…」
タ「せっかくの修学旅行なんだぞ?もう少ししっかりしろ」
梓「遅刻したくせに」
タ「うっ…」梓の反論にタカシは苦しげに胸を押さえる。
梓「あまつさえ生徒の車で送ってもらったくせに」
タ「ううっ…」
梓「人のこと注意できる筋合いじゃないんじゃないの〜しっかりするのはどっちだよ〜」
タ「くそ…ここぞとばかりに正論を…」
至極もっともな言葉にタカシは引き下がるしかなかった。
タ「…わかったよ、お互い様って事にしようじゃないか」結局タカシが折れた。
梓「分かればいいんだよ分かれば〜」鬼の首を取ったように勝ち誇りながら梓が言った。
タ「はぁ…じゃ、これからの予定をざっと説明してやるからよく聞けよ」
梓「りょ〜かい♪」
タ「先ずは修学旅行の予定だが…」
タ「今日は新幹線から降りた後バスに乗って温泉旅館に向かう。そこで一泊だ。」
タ「2日目は午前中は代表的な寺院などを回る。午後からは自由行動だ」
タ「3日目は大阪で自由行動。4日目に学校へ向かう」
タ「次は部屋だが…お前の部屋は116号室だ。メンバーはいつもの8人。大人数だが16畳あるって言うしな、問題ないだろ」
タ「さすがに部屋の位置を言葉で説明するのも難しいな…」
タ「椎水、梓を頼んでいいか?お前がこの中では一番しっかりしてそうだし」タカシは隣の席に座っていたかなみに話を振った。
か「なんで私が…まあ、迷われても困るし、引き受けますけど…」
タ「助かるよ、椎水。ありがとう」
か「あ、梓が迷うと困るからです!貴方の頼みなんか本来は断るところですけど、仕方なくですからね!(//////)」
そうこうしているうちに京都駅に着いたようだ。アナウンスが到着を告げる。
梓「ホラ!早く行こうよタカシ〜ボクしおりないからわかんないし、一緒に来てよね!」
タ「しょうがないな…それじゃお前ら、新幹線から降りたら整列して待機だぞ」
タ「その後バスで旅館に向かう!わかったか?」その言葉に生徒たちは疲れの混じった返事で返す。
梓「ホラホラ早く〜!」梓がタカシの腕を引っ張って急かす。
タ「わかったわかった…」
タカシは梓に腕を引っ張られ、新幹線から降りていった。

ち「…かなみちゃんも素直じゃないんだから…ちゃっかり隣に座っておいて…」席を立ちながら、ちなみが呟く。
か「私は他の人が友達と離れて寂しい思いをするのがイヤだっただけよ」
ち「…私たちと先生の隣の席を取り合ってジャンケンするときに、あんなに必死になっておいて…よく言う…」
か「う…違うったら違うの!別に一緒に座りたいわけじゃなくて他の人たちだったら何か間違いあったらイヤだし…」
ち「…自分なら何か間違いあってもいいってわけ…?」
か「…何か今日は妙に絡むわね、ちなみ」
ち「別に…先生は梓ちゃんが連れてったし…さすがに疲れたし…ちょっと意地悪してみたくなっただけ…」
か「ああそう…」かなみがどんよりとした目で言った。
ち「…それにしても…こんな事なら私もしおり忘れておけばよかったかな…」
か「何言ってるのよ、まったく…あれ?」
ち「どうしたの…かなみちゃん」
か「梓、ジュースなんてこぼしてたっけ…?」
ち「…そういえば…見てないね…」ちなみはさっきまで梓が座っていたシートを見る。
少なくともジュースがこぼれた後など何処にもなかった。
ち「あれ…?なんだろう…コレ…」シートと壁の隙間になにやら挟まっている。ちなみはそれを掴んで取り出した。
それは、修学旅行のしおりだった。
か「しおりがこんなところにあるってことは…さっきの梓の話は…」
ち「…そうみたい…梓ちゃん…先生と一緒に居たいから、嘘…ついたんだ…」
ち「油断してた…勝負はもう始まってる…」悔しそうにちなみが呟いた。
ち「かなみちゃん…いつまでもそんな事言ってると誰かに先生取られるよ…私かも」そう言うとちなみは新幹線から降りていった。
か「あ!ちなみ!だから私は…ったく行っちゃった…私は別にアイツの事なんか…」そうぼやきつつ、かなみも新幹線をおりた。
そして一向はバスへ乗り温泉旅館へと向かった。

バスで走る事数十分、タカシ達は温泉旅館に到着した。旅館の名は「温泉旅館 住谷」とあった。
バスを降りた後、点呼をつつがなく終えると、生徒たちは自分たちの部屋へと荷物を重たげに持ちながら三々五々と散って行く。
かなみたちも部屋に向かう事にした。
か「えっと…116号室は…と…」旅館は思いのほか広く、なかなか自分たちの部屋が見つからない。
?「お困りですか〜?」後ろから低い声。
か「あ、従業員の方ですか?実は…」そう言いながらかなみは振り向き、そして硬直した。
その男は、皮製で出来たボンテージ服と黒い帽子をつけ、サングラスと金属製のアクセサリをいくつもつけていた。
服は妙に体のラインが出るもので、その上ムダに露出が多かった。
HG「私本旅館の館長をしておりますHGと申しま〜す。お客様フォーーーーーーー!」腰をカクカク言わせながら喋るHG。
か「え…HGって…館長って…ええ!?」あまりのショッキングな光景に思考が麻痺してしまい頭が回転しない。
周りも見るとちなみたちも顔を引きつらせ、絶句していた。
HG「セイセイセイセーイ!私が来たからにはオ〜ルオッケ〜ですよ〜。遠慮なく御用をお申し付けくださ〜い♪」
か「いや…あの…その…」なおもかなみが口をパクパクさせていると、
タ「コラ、住谷。うちの生徒を怖がらせるな」後ろから来たタカシがHGを制止する。
か「お知り合い…なんですか?」かなみがおずおずと聞く。
タ「僕の高校時代の同級生なんだよ。そのコネを使って宿泊費サービスしてもらったんだよ」
タ「コイツの親の実家が温泉旅館経営しててな。それを継いだってわけさ」
泉「お、センセの数少ない取り得、『人脈』やな〜まあ、安くなるのはありがたいけどな」
タ「数少ないとか言うな。否定できないから凄くヘコむんだぞ?」
泉「まあ、褒めてるし感謝してるんやしええやないの」
タ「自分で言うなよ…」
タ「それじゃ、住谷。僕が皆を案内するから、他のトコ言っててくれよ」
HG「オッケ〜イ!しかしタカシはホントに先生になったんだね〜先生フォーーーーー!」
タ「行くぞ皆」
か「でも…放っておいていいんですか?」
タ「アイツがコレくらいの事でへこたれるもんか。それにお前たちはアレ以上アイツに関わりたかったのか?」
『いやまったく』かなみたちは意図せず声をハモらせていた。
タカシの案内に従って歩いていると、苦もなく部屋にたどり着いた。
タ「それじゃ、お前たちの部屋はここな。荷物置いて浴衣か体操着にでも着替えとけよ」
勝「タカシは…どの部屋に泊まるんだ?」
タ「ここだよ」タカシはかなみたちの部屋の隣―117号室だ―のドアを叩きながら言った。
『えええええええええ!』またも声をハモらせ驚くかなみたち。
尊「な…私たちの部屋の隣に泊まるというのか!?」
纏「さては…コネを使って隣の部屋になって儂達に何か破廉恥な行いでも企んでるのではあるまいな…?」
泉「マジで?うっわ、感心して損したわ〜」
ち「…最低…」
タ「違う違う。人聞きの悪い事言わないでくれ。実は本来僕が泊まる部屋に手違いで別の客が泊まっててね」
タ「その代わりにこの部屋をあてがわれたわけさ」
か「なんだ、そういうことですか。ならまあ、仕方ないですね…」
勝「そうだな…まあ、そういうことなら、そこに泊まっても…いいぜ」
タ「そうか。まあ近くにいることだし、何かあったらすぐ呼んでくれ。それじゃ」そう言うと、タカシは部屋の中へ入っていった。
ち「…らっきー…」ちなみのその言葉に、誰もツッコむことはなかった。
全員、同感だったからである。

かなみたちは部屋に入ると、さっそく会議(という名のお喋りではあるが)を始めた。
リ「まさか隣の部屋にタカシが泊まるなんて…正直、驚きですわ…」
尊「うむ…何事もなければよいが…」
纏「そうじゃの…あ奴も男じゃ。血迷って夜這いするやもしれんな」
ち「なら…」ちなみがおもむろに立ち上がる。
か「ちょっとちなみ?何処に行くのよ?」
ち「もう…入浴時間帯でしょ…お風呂に入って体を綺麗にしておこうと思って…」
ち「『何かあったとき』のために…ね…」ちなみが微かに微笑む。
梓「な、『何か』…って?(//////)」顔を真っ赤にしながら問う梓。
ち「…さっき…纏ちゃんが言ったじゃない…そんなことがあったときに、汗クサイ奴だなんて、思われたくないもの…」
か「ま、まあちなみが言うような事なんて無いと思うけど、汗を流すために私も入るわ!」
勝「お、おう、そうだな…躰はキレイにしとかなきゃな…」
泉「ショーちゃん、なんか漢字変換がおかしくなっとるで…?まあ、ウチもはいろっかな」
梓「そういうことなら私も入る〜1人より皆で入ったほうが楽しいもんね!ただそれだけだよ!?」
リ「私も入りますわ。庶民が入る浴場を見ておくのも悪くないでしょうし」
尊「うむ。体を清潔にすることは良い事だ。ただ…それだけ、それだけだ…(//////)」
纏「濡れた髪が張り付くと嫌がられるしのう…よく乾かさんとの…」
こうしてかなみたちは大浴場へと向かった。

浴場は思いのほか広く、大浴場と露天風呂の2つに分かれていた。
梓「うわ〜結構広いね〜♪露天風呂の眺めも最高じゃん♪」
そう言って梓は露天風呂から身を乗り出す。その言動から多くの人間が彼女は幼児体型だと想像しがちだが、
小柄ながら出るとこは出て、締まるべきところはきっちりと締まっている。
いわゆるトランジスタ・グラマーというやつだ。
か「お湯の温度もちょうど言いなぁ…気持ちい〜」かなみが湯船につかり、顔を緩ませる。
かなみは巨乳の部類に入る。湯船からプカリと浮かんだ2つのふくらみがなんともいえない。
男の欲求というか本能に直球で訴えかける体型と言えるだろう。
ち「…極楽だね…でも、ちょっと…恥ずかしいな…(//////)」そういいつつ恥ずかしげに湯船の隅で静かに入っているちなみは、
まだ幼さを残す体型だが、むしろ『そのテ』の趣味の人たちにはパーフェクトな体つきと言えるだろう。
リ「まあ…庶民にしては、いい趣味してますわね…」
そう言いながらお湯で体を洗い流すリナは、胸こそないが、それ以外の部位のスタイルがずば抜けている。
まるで計算されつくしたかのような優美な曲線は、まさに芸術品といって差し支えない。
泉「ふぅ〜…確かにこりゃ極楽や…高いカネ払った甲斐があるっちゅうもんやな」
湯船につかりながらそういう泉は、まあ、普通の体型である。
泉「ちょお待て!ウチだけなんやそれ!」
ち「誰に…言ってるの…?」
泉「う〜…なんかエライひどい扱いを受けた気がするわ〜…」
泉は憮然とした顔つきでぼやいた。
纏「泉…何を騒いでおる…」
纏「いくらこの時間は他の客と入らないように調整されてるとはいえ公共の場所でみだりに叫ぶのではない」
そういいつつリナ同様体を洗い流す纏は、実は着やせするタイプである。
胸の大きさこそかなみに及ばないが、なんと言うか色っぽいのである。
程よく肉がつき、なんとも言えない艶っぽさが体からにじみ出ている。
腰掛けるときに「ふにゅっ」とお尻の肉が微かにつぶれるのが、なんというか、たまらない。
尊「おお…中々良いところではないか…コレはとても疲れが癒せそうだな…」
勝「そうだなぁ…ま、とにかく体流して入ろうぜ」
浴場のドアをくぐりながらそう話す勝子と尊は雰囲気こそ違えど、
体のラインを崩す無駄な脂肪や筋肉がついていない引き締まった均整の取れた体型をしている。
尊は剣道部で鍛えているため、勝子は声量をアップするためにトレーニングしているのである。
「肉体美」と言う言葉はマッチョなボディービルダーではなく、
彼女たちの様な人間にこそ相応しいのではないか。そう思わせる体型である。
しばらくの後、彼女たちは風呂から上がった。
体がいつになくピカピカになっていたのはいうまでも無い。
そして夜。夕食もそこそこに終え、消灯時間が近づいていた。
皆落ち着きがなく、そわそわしている。
そんなことがないとは思いつつも、もしかしたら…そんな淡い期待を覚えずにはいられないのだ。
そろそろ寝ても良いのだが、自分たちが寝た隙に誰かが抜け駆けしたら…
あまつさえタカシとあんな事やこんな事をしたらと思うと…寝るに寝られないのだ。
その時、ドアを開けられた。
入って来たのはタカシだった。
か「うわわわわわ、た、タカシ先生!?ちちちょっと早過ぎないですか!?」混乱のあまりかなみの声は裏返っていた。
タ「遅くはないだろ…もう消灯時間だからな」
か「あ…そ、そういうことですか。そ、そうですよね!」
タ「…?まあいいけど、夜更かししないですぐに寝ろよ。と言っても今日日の女子高生がこんな時間に寝れるわけもないだろうけど」
タ「あまりハメをはずして他の先生に怒られないように。それじゃあな」
尊「タカシは…これから寝るのか?」
タ「違うよ…まあ、あんまり言いにくいんだけど。教職陣でこれから宴会なのさ」
梓「なにそれ〜先生達だけずる〜い」口を尖らせる梓。
タ「まあそう言うなよ…お前らを引率するのって想像以上の重労働なんだからな?コレくらいの役得があっても良いだろ」
梓「ったく、大人ってずるいんだから…」そういいつつも引き下がる梓。
タ「じゃあ、また明日な。おやすみ」そういいつつ優しく微笑むと、タカシは部屋を後にした。

宴会と聞いて、タカシが『何か』しにくる可能性も無いと知ると、皆すぐに寝入ってしまった。
いや、1人だけ起きていた。かなみである。
か「眠れないな…」かなみは身を起こす。
『かなみちゃん…いつまでもそんな事言ってると誰かに先生取られるよ…私かも』ちなみの言った言葉が頭にこびりついて離れない。
か(別に…私は…先生のことなんて…ことなんて…)心の中ですら、それ以上言えない。
好きだけど、素直になれない。そう、自分の心にすら。
思考は堂々巡りし、心にモヤモヤとした感情だけが広がって行く。しばらく眠れそうになかった。
か「外の空気でも吸おうかな…」そう1人ごちると、かなみはベランダに出た。
部屋同士のベランダは繋がっており、通路になっている。そのためしおりにも『窓にもしっかり鍵をかけておく事!』と明記してある。
月明かりに照らされた京都の町並みは、ため息が出るほど綺麗だった。
か(私は…先生の事をどう思ってるんだろ…先生は…私のことどう思ってるんだろ…)
かなみはしばらく景色を眺めながらぼんやりと黄昏ていたが、不意に声をかけられた。
タ「よ、椎水。もう消灯時間っていうか、日付が変わってるぞ?どうした。眠れないのか?」
か「まあ、そんなところです」目の前にいる男が眠れない原因などとは言えはしなかった。
か「先生は、何でここに?宴会じゃなかったんですか?」
タ「ちょっと呑み過ぎちゃってね。酔い覚ましに外の空気でも吸おうと思ったのさ」よく見ると、ほんのり顔が赤い。
か「そうですか…てっきり夜這いでもするのかと思いましたよ」
タ「ひどいな。そんなことする訳ないだろう」
か「そうですか…ならいいですけど」
タ「隣、いいかい?」
か「別に…私がここを占有してるわけじゃないですし、ご勝手にどうぞ」
タ「そうか」タカシはそれだけ言うと、外の景色に目を向けた。

しばらく2人とも、景色を眺めていたが、おもむろにタカシが口を開いた。
タ「椎水…俺は少しはこのクラスに馴染んで来ただろうか?」
か「知りませんよ、そんな事…まあ、梓とか懐いてる人もいる事ですし、嫌われてはいないと思いますよ」
タ「そっか。椎水、お前は…僕のことをどう思ってる?」
か「え…(/////)どういう意味ですか?」顔が赤くなる。
タ「いやだって、お前僕のこと一番煙たがってたじゃないか。少しは見直してくれたかな?って思ってな」
か「そうですか…」何処となくがっかりした調子でかなみが答える。
か「まあ、まだ授業はつたないし、どこか抜けてるし、黒板の字は未だに汚いし、おまけに鈍感だけど」
タ「ひどいな」タカシは苦笑した。
か「でも…私を身を挺して守ってくれた気持ちは、あのときの真剣な目は、本物だと思うから」
か「これからも、立派な教師になるため、努力するんですよね?」
タ「ああ、勿論さ」
か「なら…ちょっとだけ…ちょっとだけですよ?」
か「信じて、あげます。好きになって、あげます」かなみは微笑みながらそう言った。
月明かりに照らされた彼女の笑顔は、とても、綺麗で―
タカシは一瞬、ドキリとさせられた。鼓動が早いのと、顔が赤くなったのは酒の所為だけではなかっただろう。
タ「そ、そう言ってもらえると、頑張ってる甲斐があるな」
タ「まあ、そろそろ戻るよ。椎水、お休み」
か「はい。また明日」彼女もそういって踵を返そうとしたが、
か「あっ…」足が滑って、バランスを崩してしまった。
タ「危ない!」タカシはそういってかなみを支えようとしたが、引っ張られるような形でタカシも倒れた。
か「ちょ…先生、何て体勢なんですか!(/////)」端から見れば、タカシがかなみを押し倒しているようにも見える。
タ「あ、す、スマン!わざとじゃないんだ!今離れる」あわてて離れようとするタカシ。だが、もう遅かった。
尊「なんだこの物音は…って、かなみ…それにタカシ…」物音を聞いて起きた尊がこちらを見ていた。
尊「貴様…こんなところで、生徒相手に何をしている…」尊の体から殺気が発せられる。
タ「御剣!?いや待て早まるなコレは誤解だっていうかその前にその手に持っている木刀を離して落ち着け!」
尊「貴様という奴は…見損なったぞ…くそ…何故私ではないのだ…」後半の言葉は小さくてよく聞こえなかった。
タ「いやだから違うんだ僕は無実だ!」
尊「問答無用!チェストォォォォォォォォォォ!!!!!」尊の木刀がタカシにクリーンヒットする。
タ「モルスァ」タカシは派手に吹っ飛び、そのまま動かなくなった。
その後かなみから事情を聞いた尊とかなみでタカシを看病したのだが、
結局朝までタカシが目覚める事はなかった。


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