タ「ここがVIP高校・・・僕が赴任する学校かぁ・・・」
彼は校門で感嘆しながらそう1人ごちると、その高校の校舎を見上げた。
彼の名は、別府タカシ。今年、大学を卒業したばかりの新米社会人である。
彼は小さな頃から教師になるのが夢だった。
「学校の先生になりたい」その一年で勉学に励み、見事教員試験に合格し、この高校に赴任することになったのだ。
タ「しかし・・・ちょうどよく欠員補充のために教員募集されててよかったなぁ」
タ「・・・それも僕の卒業した学校なんて・・・運命って奴かな?」
タ「・・・と、こんなことしてる場合じゃない、早く行かなきゃ!」
こうして彼は校内へと足を踏み入れた。その後に待ち受ける運命など知る由もなく。
臨時の全校集会での挨拶と、教務室での教員達への紹介もそこそこに終え、彼は教室に向かう事になった。
教室に向かう道すがら、1人の教師が声をかけてきた。
高「こんにちは」
タ「あ、こんにちは。えっと・・・」とっさに名前が出ないらしく、声を詰まらせる。
高「貴方の受け持つクラスの副担任になった高瀬ですよ。さっき紹介されてたでしょう?」その様子に苦笑しながら彼女は答える。
高「もう、さっき会った人たちの名前くらい覚えないと、自分の受け持つクラスの生徒の名前なんて、覚えられませんよ?」
タ「ははあ・・・面目ない・・・」
高「まあ、今日は初日ですしね、大目に見てあげます」そういうと、彼女は悪戯っぽく笑ってみせる。
高「教室へ案内しますね。ついてきてください」
タ「あ、はい!」こうして2人は歩き出した。
緊張感を紛らわすために、タカシは高瀬に話しかけた。
タ「緊張するなぁ・・・クラスの生徒たちは、どんな子だちなんだろうなぁ・・・」
高「タカシ先生・・・この学校の先生に欠員が出た理由を御存じないんですか?」
タ「いえ、まったく聞いていませんが。・・・何かあったんですか?このクラスに問題でも?」
高「ええ・・・少し。前にこのクラスを受け持ってた人は、ストレスで体調を崩して辞められたんですよ」
タ「え・・・」タカシの顔に一筋の汗が流れた。

高「いえ、クラス全体に問題があるという訳ではないんです」弁解するように高瀬が言う。
高「ただ・・・少し問題のある生徒が何人か居て、その人たちが問題を起こしたり言う事を聞かなかったりで・・・」
タ「問題児、と言うわけですか」
高「ええ、そういうことです・・・。初めて受け持つクラスとしては、不適当かもしれませんね」
タ「・・・胃が痛くなってきたなぁ」
高「ま、まあ、出来るだけフォローしますから!」
高「まあ、私は他のクラスの担任でもあるので授業に出る事は出来ませんが」
タ「・・・わかりました。やってみます」その言葉に露骨にテンションが下がったのか、がっくりとうなだれる。
タ「ちなみに、その生徒って言うのはどんな風に問題があるんですか?」
高「会えば解ります」
タ「・・・そうですか」
そうこうしている内に、教室の前へとたどり着いた。ドアの上には『1-B』の文字。
高「それでは、私は自分の受け持つクラスに行きますね。それでは、頑張ってください」」
高瀬はそうガッツポーズをしながら言うと、階段を上がっていった。
タカシはおもむろにドアの前に立つ。
タ(よし・・・まずは第一印象が肝心だ・・・かっこよくかつさわやかに、それでいて笑顔は絶やさずに・・・)
やがて意を決したのか、タカシはドアを開け、教室へ足を踏み入れた。
ばふ。頭に何かが当たったと思った瞬間。
彼の視界は真っ白になっていた。

視界を白く染めていたのは、チョークの粉だった。タカシは思わず咳き込んだ。
タ「ゲホゲホッ!・・・いったい誰がこんな古典的な悪戯をしたんだ・・・!」
頭についたチョークの粉を払いながら生徒たちに問いかける。
そのときだった。
梓「やったやった〜大成功〜♪こんなのに引っかかるなんて、間抜けな先生も来たもんだね〜♪」
尊「フン。気合が足りんな」
勝「・・・くだらねぇ」
泉「あはは、アホやな〜こんなのが担任かいな」
ち「・・・ばかみたい」
リ「まあ、この高貴な私と違って明らかに庶民然とした空気を放っているんですもの。多少間抜けなのもしかたないですわね」
纏「・・・修行が足りんのう・・・小学生、いや保育園か幼稚園からやり直したらどうじゃ?」
口々に暴言をはいてくる女の子たち。
タ(この子達だな・・・高瀬先生の言う前の先生を辞職の追い込んだ『問題児』って子たちだな・・・)
タ(成る程、確かに会えばわかるなこれは)
タカシが呆然としてると、いきなり鋭い声が飛んできた。
か「先生!いつまで馬鹿みたいにぼーっと突っ立っているつもりですかっ!?早く教壇に立ったほうがいいんじゃないですかっ!?」
タ「あ、ああ。その声にのまれるように、彼はおずおずと教壇に上がる。
か「早く始めてくれませんか?勉強の時間って言うのは貴重なものなんです」
か「教師の無能さゆえにその貴重な時間を削られるのは我慢なりませんから」
次々とタカシに突き刺さるトゲトゲしい言葉。
タ(この子もか・・・)
前途多難。まさにそんな言葉がぴったりだった。
頭はチョークの粉で真っ白だったが、お先は真っ暗だった。


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