【悪の組織の幹部なツンデレと新人ヒーローな男】
バイトを探してたら時給がいいところがあったので行ってみると、即採用された。なんか、ヒーローになってほしいらしい。
よく分からないまま幼稚園児を助けたり怪人っぽいのを倒したりする毎日。そんなある日、怪人を倒した後に女がやってきた。
「我が名はみこと! 貴様の勇名、我がアジトにまで響いているぞ。どうだ、我が配下に加わらんか? どんなことも思いのままだぞ?」
「ほう、それは興味深い話だな。例えば、おまえとえっちとかできたりするのか?」
「なっ、ななななな!? な、何を言うか馬鹿者! そ、そんなことできるわけないだろうが!」
途端、みことは顔を真っ赤にして否定した。
「わ、我はエリートなのだ! 貴様のような凡庸な輩とおいそれと、その……そういうことができるわけがなかろう!」
「そういうことって?」
「だ、だから、その……」
「どんなこと? 具体的に?」
「だ、だから……えっちなことだ!」
「つまり、○○○○に×××を△△することだな」
「はっきり言うなぁっ!」
みことはウブなようだった。
「こほん。……貴様は我の作りし怪人を、幾多も倒してきた。それほどの力を持つ者が、どうして正義などというつまらぬものに組する?」
む、正義の人としての真価が問われている感じがする! 天国ポイントを稼ぐチャンス! いくぜ偽善!
「正しい事を成すことに理由はいるのかい?」
「……嘘臭いな。本当の事を言ってみよ」
「正義こそ我が本懐! 全ては力なき者のために!」
「……本当の事を言うと、そ、その、……我にちょっと触っても」
「時給がいいんだ! 言った! いくぞセクハラ!」
「うっきゃあああああ!?」
ヒーロー力を完全に発揮し、みことにダッシュ&抱っこ。そのままほっぺをすりすりする。
「あああああ、やーらかいなー、ふにふにするなー」
「ままままま待て待て待て! ちょっとと言ったはずだ! こんな触る事は許可してないっ! 離れろばかーっ!」
「あー、ちゅーしたいなー、ちゅー。していい?」
「不許可だっ! いいかげんにしろ、この痴れ者がっ!」
調子に乗ってたら思い切り蹴られた。
「あいたたた……」
「うう、なぜこんな者が我が組織と戦えるのだ……」
「ヒーローだから!」
「うるさいばかっ! ヒーローならヒーローらしくしろ!」
「らしく……よし分かった! 悪は許さない! 具体的には焼却処分!」
「ひいいいいっ!?」
ヒーローの秘密武器、火炎放射器の砲口をみことに向けると、すごく驚かれた。
「どっ、どこから出したっ!? そ、そんな武器反則だぞっ!」
「汚物は消毒だぁ〜!」
「明らかにヒーローじゃないセリフだぞっ! ええいっ、今日のところはこの辺にしておいてやる! だが忘れるな、我らはいつだって貴様を付け狙ってひゃああああ!?」
隙まみれだったので、もう一度抱きついてみる。
「だ、抱きつくなあっ! どうして貴様はすぐに抱きつく!」
「あー、みことは可愛いなあ。ちゅーしたいなあ、ちゅー。していい?」
「だから、ダメに決まっているだろうが、このばかーっ!」
石採場にみことの声が響くのだった。
【悪の組織の幹部なツンデレと新人ヒーローな男2】
こんにちは、ヒーローです。先日、敵の幹部っぽいのに誘われてから、ドキがムネムネします。これって……恋カナ?
「その辺りどう思います?」
「うるさいっ! なんでそんななのに強いんだ、貴様!」
今日も敵の怪人をちょちょいのちょいで倒した後、みことがやってきた。
「その秘密はこのヒーローグッズにあります」
そう言って、ポケットから小さな袋を取り出す。
「ぬ? ……そうか、貴様自身が弱々のへにょへにょであっても、ヒーローに変身すると強くなると……さては、その袋に変身するための何かが入っているのだな!」
「ふふり」
「その袋を寄こせ! ……いや、力づくで奪ってやる! 渡さなかった事を後悔するがいい!」
みことが飛びかかってきたきたので、さらりとかわす。
「ふぎゃっ!」
ちょうど背後にあった木にぶつかり、みことは変な声を出した。
「よけるな、ばかっ!」
「これ、欲しい?」
袋を差し出すと、みことは鼻をさすりながらコクコクうなずいた。
「何かを手に入れるのなら、それ相応の代価が必要だよな?」
「ま、まさか……」
何かを察したのか、みことはゆっくりと後ずさった。
「さーやって来ました、おっぱいタイム! 思う存分そのちっちゃなおっぱいにむしゃぶりつきましょう!」
「なっ、何を言ってるんだ貴様はっ! そんなことさせるわけないだろうっ! ちっちゃいは余計だっ!」
みことは胸を隠し、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「おや、この袋はいらないのかにゃー?」
見せびらかすように袋を振ると、みことは歯噛みして悔しがった。
「ぬ、ぐうう……そこまでしていらぬわっ!」
「む。じゃあさ、おっぱいじゃなくて、ほっぺすりすりならどうでしょうか?」
「ぬ、ま、まぁそれならなんとか我慢できなくもないような……」
「よし許可出た! いくぜヒーローダッシュ!」
「にゃああああっ!?」
ヒーロー力を遺憾なく発揮し、みことの元へ0.01秒で到達すると、さっと抱きしめてすりすりする。
「ああっ、やっぱいいなあ、みことは可愛いなあ」
「ぐうう……や、やっぱダメだあ! やめろっ、すりすりするなあっ!」
「よし、このままさり気なくちゅーへ移行しよう。みことのことだ、すりすりに気を取られてキスされたことに気づくまい」
「気づくに決まっているだろう、このばかっ! ええい離せ離せ離せっ! 貴様といると妊娠するわっ!」
「はっはっは。みことは可愛いなあ」
「ええいっ、すりすりするなあっ! ぎにゃーっ!」
頭をぺけぺけ叩かれたので、しぶしぶ離れる。
「ぜーっ、ぜーっ……ほら、すりすりしただろっ! さっさとその袋を寄こせっ!」
「うーん、正直まだし足りないけど……ま、いっか。ほら」
袋を渡すと、みことは満面の笑みを浮かべた。
「やった! ……ふっふっふ、愚かなり、ヒーロー! これで貴様はもう変身できまい!」
「それはどうかな?」
「え、だってこれ、変身グッズが入って……るんだよな? ちょっと待ってろ!」
そう言うと、みことは袋の中を探った。
「なんだコレはっ! なんでみかんが入ってるんだっ!!」
「はっはっは、騙されたな! それはこの間実家から大量に送られてきたみかんだ! おすそ分けだ! よかったらどうぞ!」
「こんなもんいるかっ! よくも騙しおって……許さ」
「こらっ!」
俺の大声に、みことはびっくりした様子で俺を見た。
「食べ物を粗末に扱ったらダメだろ! 全く……これだから近頃の若い者は」
「え、いや、あの、今怒ってるのは我だと……」
「…………」(黙って火炎放射器準備中)
「ごめんなさい我が悪かったです! みかん頂きます!」
「分かったらいいんだよ、分かったら」
にっこり笑ってみことの頭をなでると、みことは安心したように息を吐いた。
「はぁ〜。……あっ! きっ、貴様、なでなでするなっ! 我を誰と思っている! 貴様の敵だぞ、敵! 分かってるのか!?」
「また遊ぼうな」
「遊んでいるつもりなぞ毛頭ないっ! ええいっ、次こそ貴様を葬ってやる! 覚えてろばかーっ!」
負け惜しみを言いながら逃げて行くみことだった。
【悪の組織の幹部なツンデレと新人ヒーローな男3】
今日も今日とて悪人退治。そして今日もみことがやってきた。
「ふっふっふ……今日こそ貴様の命日だ、ヒーロー! 今日の怪人はすごいぞ、牛を1秒で100匹殺せる力を持ってるんだぞ!」
「えい」(火炎放射器のノズルをしぼり、ぼぼぼぼぼ)
「ごあー」
怪人は登場1秒で丸焦げになりました。
「ああっ、我の怪人が! 貴様、普通必殺技は最後にするものだろう! いきなりする奴がどこにいる! 第一、倒してしまったら巨大化できないではないか! 貴様も巨大ロボを出せなくて困るのではないのか!?」
「よく分からん事を言うなあ……」
「と、とにかく! 今日のところは勝負を預けてやる! 我の寛容さに感謝するんだな! はーっはっはっは……は?」
逃げようとするみことを捕まえる。
「な、何をする! 無礼者め、離さぬか!」
「さーやってきましたイチャイチャタイム! 18禁同人誌もびっくりなラブ展開に、果たしてみことは耐えられるのでしょうか?」
「にゃーっ!?」
みことが猫っぽくなった。
「きっ、ききき、貴様っ! 一体なにをするつもりだっ!?」
「突然だが、俺の弱点はすりすりされることだ。もしされると、全身の穴という穴から青紫色の汁が噴出して死ぬだろうなあ」
「明らかに嘘だろっ! 今まで何度嫌がる我にすりすりしたと思っている! 仮に本当だとしても、死に方が嫌すぎる!」
しまった、脚色が過ぎた。
「本当は穴という穴からお味噌汁が出てきて、とても美味しいと好評なんだ」
「もういい、貴様と話してると頭が痛くなってくる……」
「頭痛を治すには、ヒーローにすりすりすれば治るという都市伝説が」
「ああもう分かったっ! つまり、貴様にすりすりすれば我を解放するという話だろう!?」
「その通りで御座います」
「……わ、分かった。貴様の下劣な策に乗ってやろう。だ、だが勘違いするなよ! 我は嫌々するのであり、決して自ら望んでするのではないのからな!」
「あと5秒以内にしないとちゅーします。ごーよんさんにーいち」
「したぞしてるぞ、我はすりすりしてるぞっ! 5秒以内だったぞ!」
残念なことに、みことは俺にすりすりした。ちゅーしたかった。
「……しかし、なぜ貴様はこうも我にすりすりしたがる? 仮にもヒーローなのだから、頼めば誰でもしてくれるのではないか?」
ふと疑問に思ったのか、俺の胸に顔をこすりつけながら、みことは俺に尋ねた。
「馬鹿だなあ」
にっこり笑って、みことの頭を優しくなでる。
「ば、馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。なぜ我にするのか聞いて……ま、まさか、貴様、我の事をっ!? い、いかんいかんぞ、我と貴様は敵同士なのだ! そ、そんな……困るぞ」
「嫌がる奴が嫌がりながらするのが楽しいんじゃないか!」(この上ない満面の笑み)
「…………」
「ん? どした、みこと? すりすりが止まってるぞ? よーし、こうなったら俺からすりすりしちゃおうかなーいたたたたっ!」
ぽかーんとしていたかと思ったら、突如みことは俺の首筋に歯を立てた。人より犬歯が尖ってるのか知らないけど、すげー痛い。あまりの痛みに掴んでいた手が緩み、みことは俺から離れてしまった。
「こ……この外道めが! 我は怒った、怒ったぞ! 決めた、貴様だけは絶対に何があろうと殺す! 否、貴様と貴様に関わるその全てを滅ぼしてやる!」
「じゃあ負けじと俺も決める! みことをいつか必ず俺のペットにする! で、『ご主人さま、大好きですにゃん♪』とか言わせる!」
「そんなこと決めるなあっ! 絶対にそんなものにはならぬし、仮になったとしてもそんな頭の悪い台詞言わんわ、この痴れ者がっ!」
「溺愛するのにか!?」
「余計嫌だっ!」
俺の愛情は伝わらなかったようだ。
「とにかくっ! 貴様は生まれてきた事を後悔するほどの責め苦の後に殺してやるからな! 覚悟しておけっ!」
「じゃあ俺は『お願いだから挿れてください……』と哀願するほど責める」
「ななな何の話だ、なんのっ!? いや待て言うな、言うなよっ!」
「○○○○○を××で責め続けた際のみことの台詞」
「だから、言うなと言ってるのにーっ! このばか、へんたいーっ!」
半泣きで逃げて行くみことだった。
【悪の組織の幹部なツンデレと新人ヒーローな男4】
ヒーローとはいえ、冬は寒い。
「ふっふっふ、よく来たなヒーロー。見よ、これこそが荒ぶる海の悪魔、怪人ホンマグロだ! 強い上おいしいという素晴らしい怪人だぞ! ふふん、恐れ入ったろう?」
「なんでこんなクソ寒いのに海なんかで悪事を働くか、このおばか!」
大威張りしてるみことのおでこを指でぐりぐりする。
「うああっ、ぐりぐりするなっ! くっ……なんたる屈辱だ。許さん! いけっ、怪人ホンマグロ!」
「しゃー」
おでこを押さえるみことに命じられ、怪人ホンマグロは海に飛び込み、海中をぐるぐる回った。海の中にいる奴が相手では、俺の武器(火炎放射器)じゃ効果が薄い。どうする……おや?
「ま、待て怪人ホンマグロ! どこへ行く!?」
「しゃー……」
しばらく回転した後、ホンマグロは地平線の彼方に消えました。
「…………」
みことは呆然と地平線を見つめている。どうしよう、とても気まずい。
「……ええと、今日も恐るべき相手だった!」
「戦ってない! 逃げた! なんだあいつ、折角稚魚の時から頑張って育ててやったのに! ああもうっ!」
みことは地団駄を踏んで悔しがった。割と手間をかけているのだなあ。無意味だったけど。
「……と、とにかくだ! 今日のところは勝負を預けてやる! 次こそが貴様の命日にゃーっ!?」
突然みことが猫化したのではなく、俺が背中からむぎゅーと抱きしめたため、猫っぽくなったのだろうと思う。
「ま、またかまたなのかっ!? また我をすりすりするのか!?」
「いや、今日は寒いので人肌で温まろうかと」
「我はホッカイロではないっ! ええいっ、離せ離せ離せっ!」
「ちゅーしてくれたら離す」
「誰がするかっ! いつもいつも我にすりすりしおって……我を誰だと心得ておるっ! 我こそは数万の兵を統べる悪の大幹部、みことだぞっ!」
「そんなみことも今は俺のホッカイロ。落ちるのは早いな」
「ちーがーうーっ! 落ちるとか言うなっ! ああこらっ、すりすりするなあっ!」
みことのふにふにほっぺにほおずりする。とてもやーらかくて幸せ。
「この……いい加減にしろっ!」
俺の腹に肘打ちして、みことは素早く離れた。
「ぜーっ、ぜーっ……貴様、ヒーローならばヒーローらしくちゃんとしろっ! どうしていつもいつも我にすりすりうにゃあああ!?」
「だから寒いと言ってるだろう!」
離れた距離をヒーロー力で詰め、今度はみことを前からぎゅっと抱きしめる。
「はっ、離れた、離れてたのにっ! ずるいぞ!」
「今日は戦ってないのでヒーロー力が余りまくってるんだ」
「いつも戦ってない! 火炎放射器で燃やすだけだろっ! そうだ、いい機会だから教えてやる! そもそもヒーローが戦闘するなり必殺技使うなんて」
「うーん、やっぱ寒いな。よし、帰ろう」
「ままま待て! 話を聞けっ! いやそれより、我を置いていけ! 貴様の基地なんかに連れて行かれたら、我を拷問して秘密を聞き出した後、色んな男が我に、その……色々するに違いない!」
「いや、えっちなことするのは俺だけと決めてるよ? 俺のみことに酷いことなんてさせやしない!」
「だっ、だだ誰が貴様のものかっ! 貴様なんてだいっ嫌いだっ! 離せばかーっ!」
みことは顔を真っ赤にして暴れた。
「ええい、暴れるねい。連れて行かれるのが嫌なら、代わりにやってほしいことがあるのだけど」
「ま、まさか……まさかまさか!?」
何かを察したのか、それとも経験が知らせるのだろうか、みことは声を荒げた。
「さーやってきましたイチャイチャラブタイム! 俺の大いなる性欲……げふんげふん、大いなる愛に、果たしてみことは耐えられるでしょうか?」
「性欲って言った、言ったぞ!?」
「気のせい。さて、とりあえずちゅーしましょうか」
「せんわっ! 何をさも当然のように言ってるか!」
「何だと!? こんなにちゅーしたいのにか!?」
「我はしたくないわいっ!」
なかなか俺の願望とみことの願望は合致しないようだ。
「ちぇ。非常に不満ですが、すりすりで我慢します」
「何が不満か! 我はすりすりだって嫌なのだぞ! そんな態度だと、してやらんぞ!」
「すいません、ほおずりしてください」
「まったく……最初からそう言えばいいのだ。いいか、我は貴様に強要されて嫌々するのだぞ? その辺り勘違いするなよ!」
そう強調して、みことは俺にほおずりした。もちもちした頬の触感が気持ちいい。
「んに、んに……ど、どうだ? もうよいか? もうよいな?」
「まだ。あと12時間」
「長すぎるわ! もっと常識で考えてものを言え!」
「それくらいしてほしいほど幸せなんですよ、この時間が」
「ぬ……ま、まあ我も鬼ではない。もう少しだけやってやろう」
満更でもない顔をして、みことは再び俺にほおずりをした。
「しかし、相も変わらずふにふにで、幸せすぎて死にそうですね」
「お、大げさな。……そんなによいのか?」
「いい。一生このままこうしていたい」
あまりの心地よさに、思わずみことをぎゅっと抱きしめ、自分からふにふにほっぺにすりすりする。みことはくすぐったそうに目を細めた。
「こらっ、やめよ」
「へへへっ。みことー」
感極まって、みことのほっぺをぷにっと押す。
「にゃうっ。こら、何をするか。このイタズラ坊主めが」
「あっ、便所行ったあと手洗ってなかった」
「にゃうううううーっ!!?」
みことが極めて猫っぽくなったかと思ったら、俺を思い切り突き飛ばした。
「いたたた……なんだよ、折角恋人みたいな甘々空気だったのに」
「どこに汚い手で恋人を触る奴がおるっ!」
「世界に一組くらい、そんな恋人がいてもいいと思わないか?」
「思わんっ! そ、そもそも、我と貴様は恋人でもなんでもないっ! 敵同士だっ!」
「あんなにラブ空気を出しておいて、何を言ってるかな……」
「そっ、それは貴様があんまりにも幸せそうだったから、我もついムードに飲まれて、その……」
「じゃあもう一度しましょう。ラブ空気出すから。はあっ!」
数ある特技の一つ、ヒーロー蒸気を出して周囲を霧に包む。
「な、なんだっ!?」
「ラブ空気」
「明らかに違うっ! 見えん、何も見えんぞっ!?」
「おや、確かに1m先も見えませんね。これは困った。はっはっは」
「ぬ、しかしこれは逃亡のチャンス……はっはっは、自らの技で我を逃がすとは、愚かなりヒーロー! 覚えていろ、いつか必ずぎゃふんと言わせてやるっ!」
はっはっは、という高笑いがしたかと思うと、
「みぎゃっ!」
何かにぶつかったのか、みことは愉快な声を上げた。
「おーい、大丈夫かー?」
「うっ、うるさいっ! ちょっとおでこぶつけただけだっ!」
その後も“みぎゃ”とか“ふぎゃ”とか言う声と何かにぶつかる音を出しながら、みことはどうにか逃げたようだった。
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