その1

タ「はぁ……疲れた。今日もお勤めご苦労さんだぜ、俺」
ち「…………」
タ「お。かわいー娘、女子高生か。初々しいねぇ……て、あれ?あの車、赤信号に気付いて……ちょ、やべぇっ!!」
ち「え…………っ!!!!」


タ「う…………ん……真っ白い部屋…………?俺の部屋、こんなに……白かったっけ?」
か「あ、タカシ!!目が醒めたの!?」
タ「か、かなみ……久しぶりだな。で、なんで俺の部屋に」
か「はぁ……馬鹿。何時まで寝てるつもりよ。ここは病院よ、病院。この私の可愛いナース服、目に入らない?」
タ「び…………病院?かなみが居るってことは、神野病院か。で、俺は何してんの?」
か「あんた、覚えてないの?居眠り運転の車から女子高生を庇って大怪我したの」
タ「あ…………そ、そうだ、あの娘は!?」
か「無事よ。あの娘に感謝するのね、あんな怖い目に合ったのにちゃんと救急車呼んでくれたんだから。もう何時間か遅かったら、あんた死んでてもおかしくなかったわよ?」
タ「オーバーだなおい。……て、あれ?」
か「あ、無理しちゃダメよ?あんたの手足。今は一本も動かないから」
タ「ははは。何言って……あ、れ?」
か「いくら私でも、そんな洒落は言わないわよ。え、と……心して聞いて欲しいんだけど……」
タ「な、なんだよ、いきなり」
か「あのね…………」

タ「…………あぁ、纏めると、日常生活を取り戻すには厳しいリハビリが必要で、経過次第じゃこんにちは車椅子、て訳か。」
か「あ、あのさ、あんまり落ち込むんじゃないわよ?何事もやればできるって言うじゃない?」
タ「あぁ、大丈夫だ。思ったよりは冷静に聞けてるよ。血が足りないからか?」
か「笑えないわよ。バカ」
タ「まぁ、冗談は置いておいて、俺も車椅子生活はごめんだしな。戻れるかどうかは別として、仕事もあるし」
か「ふぅん。前向き」
タ「だろ?」
か「ま、まぁ。その……私が看護したげるんだからさ、頑張んなさいよ。」
タ「おう。」
か「それじゃ、先生呼んでくるからさ、色々問診されると思うから」
タ「あぁ、またな」
か「うん」


?「入るぞ」
タ「あ、はい」
?「失礼する。私はお前の主治医になった尊だ。宜しく頼む」
タ「あ、こ、こちらこそ」
尊「はは。あまり改まらなくていい。では、いくつか質問させていただく」
タ「あ、はい」
尊「はは。だから硬くなってくれるな」
タ「入院、初めてなもんで」
尊「病院の世話になど、ならないに越したことはないからな、それじゃあ、はじめるぞ」


尊「ふむ。ありがとう。やはり頭を打たなかったのは不幸中の幸いだったな。目が醒めたばかりなのに意識もはっきりしているようだ」
タ「あの、歩けるようになるには、どれくらい……」
尊「焦ってはダメだ。ギブスが外れるまで2ヶ月近くかかるんだ、それまではリハビリも何も」
タ「そんなに……」
尊「辛いと思うが、頑張ってくれ」
タ「あ、えぇ。」
尊「よし。では、これから説明することを覚えておいてくれ」
タ「なんです?」
尊「お前の担当看護士とリハビリ医についてだ。先程までここにいたかなみと、ちかという看護士ごお前の担当になる」
タ(かなみが……)
尊「それから、看護士長の神野」
タ「神野……?」
尊「あぁ、院長の娘の神野リナ。若くして婦長を勤めるだけあって優秀だぞ」
タ「…………」
尊「うん?どうした」
タ「あ、いや。その人、高校の先輩なんです」
尊「あぁ、たしかかなみとも高校の同級生らしいな」
タ「はい」
尊「なんにせよ、顔見知りがいるというのは心強かろう」
タ「ですね」
尊「最後に、リハビリ医の纏。まぁ……少し厳しいが、彼女も優秀な医師だ」
タ「はい」
尊「まぁ、こんなところだ」

尊「あ、それからな。」
タ「はい?」
尊「聞くと君はご家族がいないそうだな」
タ「えぇ」
尊「会社にはこちらから事情を説明させてもらった。差し出がましいとは思ったが」
タ「いえ、助かります」
尊「しばらくは体も動かなくて退屈だろうが、我慢してくれ」
タ「はい。」

タ「やべぇ……暇すぎる……」
?「しつれーしまーす。」
タ「は、はい」
?「尊せんせから説明あったと思うけど、君のお世話することになった、ちか。よろしくね」
タ「あ、ど、どうも」
がらがらがらがら
ち「あ、これは君のお昼。病院食だから味はあんまりだけど、出来れば食べた方がいいね。」
タ「そういえば、お腹すいてる」
ち「それはいーことだよね。」
タ「それじゃあいただき……いてぇっ!!」
ち「あのさ、腕、動かないってもう忘れたの?」
タ「うっかり……」
ち「まぁ、いきなりこんなことになったんだしね。ほら、ちゃっちゃと口あける」
タ「へ?」
ち「あーんしてって言ってるの。それとも自分で食べる?」
タ「え、あ…お願いします」
ち「よろしい。それじゃ」
タ(うわ……こ、これ、はずかし)
ち「ん〜?顔が赤いねぇ」
タ「よ、よしてください…!」

タ「ちょ……ま、うぇ……」
ち「うゎ……」
タ「え?」
ち「あ、あのさ、健康なのは良いことだけど、こ、これじゃあちょっと……やりずらいかなぁ?」
タ「なんのこ……はぅ!?」
タ(や、ややややべぇ!!た、勃ってる……死ね!俺死ね!!)
ち「もぉ……し、仕方ないな。あ、あのさ、ちょっと目閉じてて貰ってもいいかな?」
タ「な、な?」
ち「えへへ……いいから。僕にお任せ。だよ?」
タ(こ、ここ、これなんてエロゲ?)
ち「目、閉じたかな?」
タ「は、はは、はひ!?」
ち「じゃあ………」
ぎゅむっ
タ「いぃっ!?ひ、いでででで!つ、つねらないで、脇腹、つねらないでー!!」
ち「あははは。収まったみたいだね。さっすが僕」
タ「こ、心を犯されました……」
ち「あはは。何か期待したのかなー?」
タ「うるさいやいっ!!」
タ(てか、この状況…………やば、恥ずかしすぎ……はぁ。これがあと2ヶ月以上続くのか……持つかな、俺の理性)

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