第一話「俺と委員長」

「ほい、ジゴロ」
「な・・・てめぇ、まさかジゴロ賽使ってんじゃ・・・」
俺は、目の前の丼の中の賽子を凝視するが、それはいたって普通の賽であった。
「んじゃ、タカシ。おまえ罰ゲームな」
「ちっ・・・」
目の前のアホ面は、俺の悪友の山田。今は、こいつと俺を含め五人程で、罰ゲームを賭けたチンチロに興じていた所だ。
負けの代価が罰ゲームというのが、いかにも高校生らしくて健全に見えるが、実はそうでもない。
素直に掛け金払うよりも、タチが悪い場合もある。
今回はまさに、そのパターンであった。
「じゃ、罰ゲームは告白な」
「・・・はぁ?俺は好きな奴なんていないぞ」
「おまえの感情は関係ない」
きっぱりと言い放ち、山田は一人の女子を指差した。
・・・なるほど。山田が言いたいことを俺は瞬時に理解した。

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山田が指を差したのは、椎名千奈美・・・通称『委員長』
そのあだ名の通りクラス委員長を勤める女子だ。
物静かで近寄りがたい雰囲気・・・そう言えば聞こえはいいが、簡単に言うなら無愛想で無口。しかも、クラス一の秀才でもある。
そのせいもあるのだろう・・・彼女は心ない女子共から嫌がらせを受けることもあるようだ。
 彼女らからすれば、千奈美は異質で、気に入らない存在なのだろう。
 ・・・詳しくは知らないけどな。
「・・・で、どうすりゃいいのよ?」
「簡単だ。椎名に告白する。んで、OKだったら付き合えw」
「はぁ?OKな訳あるかよ・・・」
彼女と俺は、事務的なこと以外は話すらしたことがない。告白したって普通はOKなぞ出ないだろう。
・・・まあ、その方が好都合か。悲惨に振られて笑い者になれば、罰ゲームはそれで終了だ。
「・・・しょうがねぇな。わかったよ」
俺は、けだるく山田に答えると、静かに席を立った。

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「委員長」
「・・・・・・」
予想通りだ。千奈美は、俺が話かけても振り向きもしない。
「なあ、委員長」
「・・・・・・なによ」
俺がしつこく呼び掛けると、千奈美はようやく声を出した・・・が、やはり振り向きはしない。
「ちょっくら話があるんだが・・・」
俺は恐る恐る切り出す。すると、千奈美はこちらを振り向き、短く切り返した。
「・・・・・・何?」
「い、いや・・・ここではちょっと・・・」
ちらりと山田を振り返ると、にやにやとこちらを指を刺しながら何やら言っている。
冗談じゃない。このままじゃこの場で告白するハメになりかねない。
「ちょっと来てくれ」

「な・・・・・・ちょっと」 俺は戸惑いの声を上げる千奈美を強引に教室から連れ出した。

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「・・・・・・」
千奈美は、鋭い視線で俺に無言の圧力をかける。
まあ当然だ。いきなり訳も言わず校舎裏までひっぱってこられたのた。
「あのな・・・委員長」
「・・・・・・」
うーむ・・・冗談でやるにしても、告白をしなければならないのだ。やはり緊張する。
「・・・用がないなら帰る」
うじうじ悩む俺に、千奈美は背を向けた。
とっさに俺は、彼女の肩を掴み、叫んだ。
「す、好きだ委員長!付き合ってくれ!」
・・・遂に言ってしまった。
突然の申し出に、千奈美は一瞬目を見開いた。が、すぐにいつもの表情に戻る。
はぁ。ま、これで悲惨に振られて、罰ゲームはジ・エンドか。
「・・・・・・いいよ」
「だ、だよな〜。やっぱいきなりこんな事言っても駄目だよなー・・・・・・・・・・・・って、今なんつった!?」
「・・・・・・付き合っても、いいよ、って」
「・・・・・・はぁ!?」
「・・・用はそれだけ?じゃあ・・・」
「え・・・あれ?え?」
俺は、あまりに予想外の展開に言葉を失い、ただ去っていく千奈美の背中を見つめるだけだった・・・


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