・MONSTER HUNTER TD 第1話

今日は珍しく早起きした。
太陽の光は窓を通って侵入し、部屋の中を明るく照らし出している。
まだ朝が早いにも関わらず、家の外から人の声がせわしなく聞こえてくる。
「ご主人、おはようですニャ」
コイツはこの家に住み込みで働いているアイルーのメイだ。
もっぱらする事は料理だけだがその腕はかなりのもので、十分満足している。
「ああ、おはよう、メイ」
俺はタカシ。このドンドルマに住んでいるハンターでありこの家の主人だ。
「朝ごはんができてるから食べるといいニャ」
「おお!サンキュ!美味そうだな〜」
メイはうれしそうな顔をしてこっちを見ている。
テーブルの上に湯気を立てている料理はリゾットだ。正直朝にはうれしい。
「それじゃ、いただきま〜す」
その料理を口に入れた瞬間強烈なまでの不快感が俺に襲い掛かり、
無残にもその場に倒れこんでしまった。無念・・・
「ご主人!!!?どうしたニャ!?」
「メイ・・・この料理に何を入れた・・・?」
「え〜と・・・確か銀シャリ草とサシミウオだったニャ・・・」
今の季節は温暖期だ。そしてこの2つの食材は寒冷期のもの・・・完全に腐っている。
「メイ、食材を使うときは腐ってるかちゃんと確かめてからにしてくれ・・・」
「ごめんなさいニャ・・・」
そういうとメイは肩を落として自分の部屋である穴の中へ入っていった。
正直朝食は食えたものではなかったので家のすぐ前にある食材屋で頑固パンとスネークサーモンを買った。
「さってと、今日はどうするかな・・・」
なかなか噛む事のできない頑固パンを口に含んだまま大衆酒場へと足を向けた。
ドンドルマの大衆酒場は常に活気で満ちている。
テーブルに突っ伏して寝息を立てている輩も多いが、大半のものは世間話に花を咲かせている。
「よぉ!ボウズ!毎日面を拝んでるけどなかなかしぶといもんだなwww」
テーブルに座っていた黒鬼というハンターが話しかけてきた。口は悪いが腕は確かなハンターだ。
「まだまだくたばる気はねーよ!wwそれよりアイツ見かけたか?」
「いや、見てないぜ。なんだ?またデートか?」
「いや、たまには一人で行くつもりだ。アイツがいるとうるさくて構わないからな・・・」
「誰がうるさいですって!?」
後ろからアイツことカナミが姿を現した。タイミングでも謀ってたのか?
「お前以外にいるわけがないだろ?大体なんで何時も俺とクエストに出るんだ?ほかにメンバー探していけばいいだろ」
「何言ってんの!?あんたみたいな出来損ないのハンターがいたらほかの人に迷惑がかかるでしょ。それに、
女の子のハンターを見つけたらどうせ見境なく襲い掛かるつもりでしょ?」
おい、いくらなんでもそれは酷いだろ・・・俺を何だと思ってる。
「性犯罪者予備軍」
即答するな。それに人の心を読むな。
「じゃあ何でお前はその出来損ないな性犯罪者予備軍と一緒にいるんだ?」
「ボランティアよ、ボランティア。私が犠牲になる代わりに他の人が助かるんだから安いもんだわ」
嗚呼、神よ・・・何故貴方はカナミをこんな風にしたのですか?昔はカナミはこんな奴じゃなかった。
カナミと俺は此処、ドンドルマから南東に位置するジャンボ村という小さな村の出身だ。
家が近かったためかよく遊んでいたものだ。まあ幼馴染という奴だ。
だが十代半ばに入ると急にカナミの奴は冷たくなった。事あるごとに非難を浴びせてくるし、
暴力を振るうことも多くなった。
何か嫌われるようなことをしたか?俺・・・
「何ボーッとしてんの?さっさと行くわよ」
俺が考え事をしている間にカナミはクエストを受注していた。ちゃんと2人分。
結局1人でクエストを行くことは諦めるしかなかった・・・

「でりゃああああああああああああ!!!!!!」
カナミの叫び声が密林に響き渡る。
華奢な体に似合わない大型の槌をブンブンと振りかざし桃色の怪鳥、イャンクックに次々と打撃を加え込んでいる。
そんな中俺はひたすらカナミの支援に徹している。カナミは典型的な特攻型なのでダメージを受けやすい。
オマケに戦闘を離脱して回復を行うという動作を全くしない。
ガンナーの俺はとにかくカナミに回復弾を撃つことぐらいしか仕事がない。
正直に言うとそれしかできないのだ。カナミは特攻主義者である上に獲物をとられるのを異常に嫌っている。
もしも俺が獲物を倒した暁には俺が獲物になりかねないのだ。
さて、そうこうしているうちにもう倒してしまったようだ。カナミは上機嫌に素材を剥ぎ取っている。
「楽勝楽勝♪私に勝てると思ったら大間違いなんだから」
「・・・・・・・・・」
俺は大衆酒場に戻ってからもずっとカナミを見ていた。
「何よ、なんか言いたいことでもあるの?」
「いやさ、カナミってイャンクック以外倒したことあるのか?」
「(ビクッ!)何よ・・・急に・・・」
「いやさ、お前が他のモンスターと闘ってるところ見たことないからさ。もしかしたらと思ってね・・・」
「ままままま・・・まさか!私にかかったらリリリ・・・リオレウスなんてイチkrなndk」
めちゃめくちゃ動揺してる・・・やっぱりか・・・
「お前何年ハンターやってんだよ・・・」
「うるさいわね!大体アンタがちゃんと援護できたら私だってもっと強い敵を倒してるわよ!!」
ずいぶんと理不尽なことを言うもんだな、オイ・・・しかたがない・・・
「ったく・・・よし、今夜俺の家に来い」
「ア!アンタ自分がなに言ってるか分かってんの!!?(////)」
「何って・・・別におかしな事じゃないだろ?仲間同士なんだから・・・」
「け・・・けどさ・・・(////)」
「じゃあ、夜9時な。遅れんなよ」
その後カナミは顔を赤らめて何かブツブツ言っていたが気にしない。

夜9時 自室

「約束どおり来てやったわよ・・・で、何の用なの」
「まあ、こいつを見てくれ」
俺は白く濁った液体の入ったビンをカナミに渡した。
しばらくすると顔を真っ赤にしたカナミがビンを俺に投げつけてきた挙句、殴りかかってきた。
「何てもの渡すのよ!!!バカ!変態!痴漢!性犯罪者!!!!!(/////////////)」
「ちょ!まて!何を勘違いしてる!!落ち着けって!!」
カナミを静止すること数十分。なんとかカナミも黙ってくれた。
「よし、それじゃ本題に入ろう。カナミはフルフルは知ってるよな?」
「知ってるわよ、それくらい・・・あの白くて気持ち悪い飛竜でしょ?」
「よくできました。それで、さっき渡したのはそいつから取れる体液でな、薬の能力を数倍に高める能力を持ってるんだ。」
「ふーーん・・・で、それがどうしたの?」
「手持ちが少なくなったから調達しておこうと思ってね」
「じゃあ、死なないようにがんばってね」
「お前も行くんだよ」
「ハァ!!!?何言ってんのよ!なんでアンタのために一緒にクエストに行かなきゃなんないの!?」
「たまには俺の言うこと聞いてくれてもいいだろ?あ、もしかして恐いのか?wwww」
「(ビキッ!!)上等じゃないの・・・行ってやろうじゃない。後からやめるって言っても聞かないんだからね・・・」
やはり食いついてきた・・・単純なやつだな。
「あ、それと支給品の回復剤と携帯食料は全部私のだからね!」
「工エエェェ('д`)ェェエエ工」
「これくらい当たり前でしょ?それとも何か文句あんの?」
カナミの背後からとてつもないオーラが立ち込めている。このオーラですでにモンスターを狩れそうである。
「ないです・・・orz」
「それじゃ、明日の朝10時に大衆酒場に集合ね!自分で言ったんだから遅れたら死刑よ!」
そういうとカナミはそのまま家から出て行った。
「相変わらず強引な人だニャ・・・あんな人に振り回されるご主人が気の毒だニャ」
一部始終を見ていたメイが出てきた。いるんならカナミを抑えるの手伝ってくれよ。
「まあ、そう言うな・・・ああ見みえてもカナミの奴本当はかなり脆いんだよ。俺が支えてやらんと」
「料理も一人前に作れないご主人の言える台詞じゃないニャ」
「ハハ、そうかもなwww」
「でもご主人、なんでいきなりフルフル狩りなんかに誘ったんだニャ?」
「俺のためじゃないよ。アイツのためだ」
「でもあの人はすごく強いから1人でも・・・」
「確かにアイツは強いがいつまでたってもイャンクック止まりじゃ意味無いだろ?何事も経験さ」
「ご主人にしては珍しく正論だニャ」
「ありがとよ・・・」
俺は金色の龍の紋章のついた眼帯を眺めながらそう呟いた。


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