・MONSTER HUNTER TD 第12話


「それじゃ、取調べを始めましょーか」
トモコがそう言ったときカナミ達は内心緊張していた。
彼女は明らかに自分よりは年下であるが、れっきとしたナイト
の一人なのだ。答えなかったら後々どんなことをされるかも分かりはしない。
だが、さっきの様子を見るとトモコとタカシの仲は良いようで
ここに入った理由をタカシに言われたならばひとたまりもない。
「それじゃ、最初の質問・・・」
トモコがそういった時二人はつばを飲んで、来るべき攻撃に備えた。
「いつからタカシ君のこと好きだったの?」
「はい・・・?」
カナミと纏はその変化球を受け止めることが出来ず、呆気にとられた。
その質問をした当の本人の顔は明らかにこの状況を楽しんでいる表情をしていた。
「ちょっと!何でそんなこと!私はタカシが好きだなんて・・・」
「15の時ね・・・カナミさんのお父さんが亡くなったの・・・」
「へ?」
カナミはまたもや呆気にとられた。
彼女はいきなり何を言い出すのだろう・・・そして何故それを?
「その時貴女は父親が死んだショックで約二週間の間家に帰らなかった。
いいえ、帰れなかった。ジャングルの中で脚をくじいて動くことが出来ず、おまけに
道に迷ってしまってジャングルの出口を見失ってしまった・・・」
カナミは今日で三度目の戦慄を感じた。
まるで頭の中が見透かされているような感覚だ。何もかもが彼女の手のひらにあるような・・・
「でもそれをタカシ君に助けられた・・・それからでしょ?
ただの幼馴染にしか思ってなかった存在が大きくなったのは」
そういうとトモコはにっこりと笑ってカナミの顔を見たが、カナミは目をそむけた。
彼女の緑色の瞳を見ていると吸い込まれるような感覚に陥るからだ。
「今度は纏さんね。え〜と?腕に怪我を負って一時期ハンターを辞めていたけど
タカシ君が復帰させた・・・」
「そうだったの?」
カナミが驚いた様子で纏の方を向いた。今まで彼女は何故纏がタカシに
好意を寄せているのかを知らなかったからだ。
「その通りじゃ・・・しかし何故分かったのじゃ?儂は今までお主に会ったことなど
一度もないぞ。もしやタカシから聞いたのか?」
「違うわ。私は解るの。相手の思っていることが一から十まで・・・」
「どういうことじゃ?」
トモコは一息ついて微笑み混じりに言った。
「私はね、他人の心の中やその人の記憶が読めるの。だからどんな上辺だけの言葉で取り繕っても
私には全然通じないし騙されもしない」
二人はタカシの言った言葉の意味を理解した。彼女に嘘は通じない。
心の中を見透かされては口から発せられる音など意味を持たないのだ。
「おやおや?他にも色々見えてきた・・・」
その言葉を聴いて二人は飛び上がった。一体何を見られるのか想像もつかない。
「あらら・・・二人とも毎晩タカシ君のことを思って・・・結構大胆ね・・・」
「ちょ、ちょっと!何見てるの!!?(////////////////)」
「お主!こんなことやって恥ずかしくないのか!?(/////////////)」
「すごい、これタカシ君にも見せてあげたいわね・・・」
「「(////////////////////////)」」

「終わったから入っていいわよ」
トモコは満足した様子で部屋の外で待っていたタカシを呼び寄せた。
「随分と騒がしかったな・・・ってなんで二人とも顔真っ赤にして俯いてるんだ?」
「「・・・・(/////////////////)」」
タカシは不思議そうに椅子に座ると、トモコに話しかけた。
「で、ここに来た理由は何て?」
「どうやらタカシ君に会いに来たみたいね」
それを聞くとタカシの表情が緩んだ。
「やれやれ、逮捕される危険を犯してまで俺に会いにきてくれるとは・・・
俺も随分と好かれたもんだな」
「そ、そんなわけないでしょ!!それより・・・」
カナミは机をバンと叩いて、タカシに詰め寄った。
「なんで黙ってたのよ!?アンタがナイトに入ってるってこと」
「同感じゃな。何か秘密にする必要でもあるのか?」
タカシは明らかにトーンを落とした声で言い放った。
「必要がなけりゃ話してるさ。俺だって話せたほうが楽だった・・・」
「だったら・・・」
「ちょっといい?」
カナミの言葉にトモコが割って入った。彼女の目は先程と違い真剣だった。
「一つ聞くけど、二人はギルドナイトは一体誰がメンバーでどこに住んでいるか知ってる?」
その言葉に答えることは出来なかった。
知らないのだ。思い返してみると一体誰がギルドナイトの一員なのかというのは全く持って知らない。
「これが答え。私たちは自分がナイトの一員だというのを本当は喋っちゃいけない。
ナイトには敵が多いから下手をしたら命を狙われるの・・・」
その言葉に付け足すようにタカシは言った。
「俺等は知名度こそ高いがもっぱら活躍するのは裏の社会だ。
正直、今こうやって俺が一言喋るたびに機密情報がどんどん漏れていってるんだよ」
カナミ達はこれ以上深追いする気になれなかった。彼等ナイトに自由はない。
ナイトという輝かしい栄誉を得る代わりに己の自由を払うのだ。
「いつからナイトになったの?」
「4年前、俺が二十歳の時だ。だからまだまだ新米だよ」
カナミの問いにタカシは冷静に答えた。
「そろそろ夜が明ける。悪いがトモコは二人を出口に連れてってやってくれ。
俺は大長老に報告をしてくる」
トモコは返事をすると扉を開け、部屋を出てから二人を連れ左に曲がり、タカシは左へと曲がった。
タカシは大老殿へと続く地下道を歩いていると、何やら気配を察知した。
振り向いてみれど、そこには人影はなく道の端に大タルが一つ置いてあるだけだ。
「・・・いいセンスだ」
タカシはそう呟いて薄暗い地下道を進んでいった。


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