・MONSTER HUNTER TD 第14話


自然界には必ずしもその場を治める主が存在する。
この雪山においてもそれは例外ではない・・・
「ハァ・・・ハァ・・・」
雪の吹き荒れる白銀の世界に、二つの人影が息を切らしながら突き進んでいた。
「クソ!話と違うぞ!」
「二人とも殺された・・・俺たちももう駄目だ・・・」
二人の姿は見るも無残で、男の一人は完璧に意気消沈している。
「バカヤロウ!諦めるんじゃねえ!」
男の一人が渇を入れるも、その声には不安の色が混じっているのも確かだった。
『ベキィッ!!』
突如として地面が割れ、一つの巨大な影が姿を現し男は宙高く振り上げられ
鈍い音を立てて地に堕ちた・・・
男の下には血の池が溜まり、白い雪を紅く染め上げていく。
そして巨大な影は悠々とした足取りでもう一人の男へと近づいてゆき、その巨大な
腕を天高く振りかざした。
「あ・・・・ああ・・・ああああああああああああああ!!!!!!!」

ドンドルマにあるギルドナイトのオフィスでタカシは書類と対面していた。
ただ、乗り気ではないらしく机にぐったりと突っ伏して書類を見ているわけだが・・・
「やっぱ俺はデスクワークは向かねーわなー・・・」
そう言いながら彼は羽ペンにインクをつけると書類にサインをした。
「相変わず腐れてるな、タカシ」
「ああ、ブーンか・・・」
ブーンと呼ばれた男は見かけは30代ほどの色黒の男で、少し色の褪せた蒼い
ギルドガードスーツを着込んでいた。
「マウントフィールドと呼べと言っただろうが。いつになったら覚えるんだ?」
「残念ながら俺は物覚えが悪いんでね」
ブーンは諦めたような顔をするとタカシの机の近くの椅子に腰掛けた。
「ほれ、追加の書類だ。今日中に目を通しとけ」
「マジかよ!?・・・全く、スネークの爺さんやトモコはどこに行ったんだ?」
「爺さんもトモコも単独任務中だ。文句を垂れる暇があったらさっさと仕事をしろ」
タカシは何か一つ言ってやろうかと思ったが止めておいた。
いくら仲間といえど下手なことを言えば真っ先に拳が飛んでくるからだ。
彼は受け取った書類をパラパラとめくっていたが、あるところに目を留めた。
「第二狩猟試験でパーティ全滅・・・何だこれ?なんでこんなもんがあるんだ?」
ブーンはそれに反応すると読んでいた本を机の上に置いて話し出した。
「ああ、実はそれ少し奇妙な事件でな・・・発注者以外のハンターは少し名の知れたハンター
でな、二回目の狩猟試験で壊滅なんてことは珍しいと思ってな」
「フーン・・・で、どうしてこれを俺に?」
「念のためだよ。お前の仲間がクエストに出る時にもしものことがあったらと思ってな。
一応、お前の仲間を守れるのはお前自身なんだから用心しとけよ?」
タカシは「ありがとよ」と一言言って机の上に書類を投げた。

「やっぱり雪山はいいな・・・心が癒される」
タカシはベースキャンプで空を見上げて呟いた。
「感傷に浸っている場合ではなかろう(バシッ)」
「あうっ!」
纏に頭を叩かれたタカシは纏を睨みつけた。
「何だよ〜少しくらい別にいいだろ?」
「これはカナミの狩猟試験なんじゃから気を引き締めんといかんじゃろう」
纏はカナミを見ろとタカシに目で諭した。
カナミは少しばかりナーバスになっているようで、その顔からは緊張の色が窺えた。
「何やら壁に向かってブツブツ言っているようじゃが・・・何をやっておるのじゃ?」
「アイツの緊張した時の癖だ・・・しょうがねぇ」
そう言うとタカシはカナミのほうにゆっくりと歩み寄った。
「カーナーミ!」
「へ?・・・ギャアアアアアアアアアアアア!!(ベキィ!)」
「モルスァ!!!」
カナミの放った鉄拳はタカシの顔面へと直撃し、その威力に耐え切れないタカシは
その場へ崩れ落ちた。
「イッテ〜・・・何すんだ!」
「何すんだって・・・そんなマスク着けていきなり話しかけたら誰だってびっくりするわよ!」
タカシの着けているマスクというのはブランゴUキャップのことで、その外観は
しいて言うならばとてつもなく不気味だ。
「そんなマスクってなんだ!デザインした人と愛用している人に謝れ!!」
「なんか癪に障るけど・・・ごめんなさい」
「よし、それでいい」
タカシは満足してように言っていたが、そのマスクを着けたままなので表情が全く
分からない上に、やはり不気味だ。
「調子に乗るでない(バシッ)」
「イテッ!何だよ、二人して俺をいじめて・・・そんなに楽しいか?」
「楽しくなけりゃやらないわよ」
カナミがそう言うとタカシはその場に座り込み、ブツブツと独り言をもらし始めた。
「そうだよな・・・俺なんてどうせな・・・結局・・・」
「鬱陶しいからやめ!それより、アンタの格好やけに寒そうだけど大丈夫なの?」
タカシはそれを聞いた途端先程とは打って変わった様子でその場に立ち上がった。
「良くぞ聞いてくれた!正直コイツは露出度は高いが耐寒性はかなり高いぞ。むしろ暑い所
で着たら死にそうになった」
「確かに厚い毛皮を使っておるみたいじゃしのう」
「ちなみに露出度はここが一番高くなっております」
そう言うとタカシは腰の布を持ち上げるとそこに現れたのは少しの布でしか覆われてない
タカシの股間だった。
「!!!!!!!!!???(////////////)」
「そんなものを見せるでない!!!(///////////)」
顔を真っ赤にした纏の脚がタカシの急所へと直撃し、タカシはこの世のものとは思えない
叫び声を上げてその場に倒れこんだ。
「あぁ・・・俺の紅玉が・・・オニマツタケが・・・・・」
「自業自得じゃ!さっさと行くぞ(///////)」
「・・・(////////)」
頬を赤らめながらベースキャンプを後にする二人をタカシはふらついた足取りで追いかけた。

「そういえばさ、なんでタカシは弓使ってんの?」
雪の吹き荒れるエリア6でカナミはタカシに向かって訊ねた。
「ああ、このクエストは一応カナミの実力を見るもんだからな。今回は行動を
少しばかり自重しようと思ってな。だから今日は回復弾の援護は無しだ」
タカシがそう言うとカナミから不満の声が上がったが、それを纏がとがめた。
「まあそう言うでない。此奴など、いてもいなくても同じようなものじゃ」
「知ってるか?ニトロダケには傷に触れると強い刺激を生み出す成分が含まれててさ、
強撃ビンはそれを応用したものなんだぜ」
「無視して話をするでない!!」
荒ぶった声をあげる纏をタカシはなだめる様にして言った。
「まあまあ、確かに俺今まであんまり役に立った試しはないけどさ、それはあくまで
ナイトであることを隠すために本気を出していなかったということで・・・」
「フルフル相手にやられたくせによく言うわよ」
それを聞いた纏の視線が軽蔑へと変るのがタカシには良く分かった。
その『たかがフルフルごときに・・・』とでも言いたげな眼はこの雪山よりも冷たい。
「それは言わないでくれ・・・orz」
無論彼も何もなかったわけではない。あのクエストの後ギルドナイトの仲間から
再教育という名で拷問紛いの洗礼を受けたのだ。
思い出したくもないだろう・・・
「ま、使えるかどうかは親玉が出てきてからじゃの」
纏はそう言って足元に転がったブランゴの死体へと眼を向けた。
その体は彼女の持つ烈火によって切り裂かれており、傷口は熱のせいで溶接していた。
「どこのエリアを探してもいなかったけど・・・」
「恐らく、俺らが移動するのにあわせて奴もエリアを移動してるんだろう」
タカシは冷静な口ぶりで自らの足元にもあるブランゴの死体へ眼をやった。
「・・・!静かにしろ!」
突然纏は姿勢を低くし、武器を構えて辺りの様子を窺い出した。
「近くにいるのか?」
タカシがそう訊ねると纏は静かに頷き「ああ」と一言言った。
それを聞いたタカシは指で合図を出して言った。
「三角陣形。どこから来るか分からない。油断するな」
三人はエリアの中心で三角形の陣を作って辺りを見回すが、一向に現れる気配はない。
「・・・出てこないわね・・・・・」
カナミがそう言って武器を下ろすと同様に二人も武器を下ろした。
だが次の瞬間地面が大きく揺れ、カナミ達の足元に次々と亀裂が生まれていく。
「な、何!?」
「下から来るぞ!!散れ!!!」
タカシがそう言うか早いか、地面が引き裂かれ巨大な白い塊が宙に放たれた。
『ウオオオオォォォォォォォォ!!!!』
地面に着地するなり白い塊は大きな咆哮を上げた。
その生き物、ドドブランゴの口には咥内に収まりきらんばかりの巨大な二つの牙が鈍い
光を放っており、その巨体を支えるべくして発達した腕はすらりと地に立っている。
「おいでなすったな・・・行くぞ!」
タカシが叫ぶと二人は頷き獲物目掛けて走り出した。
「でりゃあああああああああああ!!!!」
カナミは走りながら勢いを付け巨大な鎚をドドブランゴの体へ叩きつけた。
彼女のガンハンマから放たれる爆炎は獲物の体を焦がし、筋肉を破壊した。
纏も負けじと華麗な手つきで太刀を振るい、次々と獲物の体を切り刻んでゆく。
『ウオオオ!!』
二人の猛攻を受けたドドブランゴは一瞬たじろいだが、体を起こし勢い良く
地面へと叩きつけた。
「キャッ!」
「うお!」
ドドブランゴの攻撃が直接当たったわけではなかったが、地面に直撃した時の
衝撃で発生した地震で二人はバランスを大きく崩してしまう。
二人が動けない隙にドドブランゴは腕を大きく振り上げカナミ達を殴り飛ばし、タカシ
に向かって勢い良く飛び掛った。
「カナミ!纏さん!・・・ってクソッ!!」
それをすんでのところで回避したタカシは体勢を立て直し矢を射るが、ふと
違和感を覚えた。
「(コイツ・・・手答えがない・・・?)」
それから矢を5本束ねて一気に放つも、相手は怯む動作すらしようとしない。
「コイツは思った以上に硬いぞ!!攻撃を受けないようにしながら集中攻撃だ!!」
「ハハ・・・無茶言ってくれる」
「ま、とにかく殴ればいいんでしょ?だったら行くわよ!」
カナミは鎚を構え、相手の懐にもぐりこみ横腹目掛けて鎚を振り上げた・・・が、
ドドブランゴはふらりと身を翻して攻撃を意図もたやすく避けた。
「甘い!」
獲物の後方に回り込んだ纏は太刀を振り上げ切りかかろうとするも、ドドブランゴは
後ろへ勢い良く飛び跳ね、纏の体を吹き飛ばした。
「何じゃコイツは!?ただのドドブランゴではないぞ!!」
「俺もそう思う!!」
その時ドドブランゴは大きな咆哮を上げ、それに合わせたように数体のブランゴが
地中から飛び出してきた。
「ちょっとタカシ!コイツ等増えたわよ!?」
「落ち着け!相手を陽動させる奴等の作戦だ!獲物は一つだって考えろ!!」
タカシはそう言い聞かせたが、事態は悪化する一方だった。
ブランゴ達は機敏な動きでカナミ達を追いまわし、そこをドドブランゴが突く。
その集団攻撃を受けてカナミ達の疲労は限界まで達しようとしていた。
不意にタカシの脳裏にあの日のことが思い浮かんできた。
そう、例の書類のことだ。もしかしたらあのパーティを全滅に追いやったのもこの
ドドブランゴかもしれない。
この統率能力と戦闘能力は普通のドドブランゴには無い。明らかに多くの経験をつんだ
者にしかなせないものだ。
そう思っているとドドブランゴが地中に潜り始めた。
――――――マズイ
「散れ!絶対に立ち止まるな!!」
タカシの怒号が雪山に響き渡り、それを聞いたカナミと纏は一目散に走り出した。
ところが突然カナミの前に一体のブランゴが現れ、その前足でカナミを押し倒した。
「キャッ!・・・イタタ」
「カナミ!下だ!!」
カナミの下から何か大きなものが迫ってくる。その振動はカナミにも十分伝わり
振動は衝撃へと変った・・・
地中からドドブランゴは勢い良く飛び出し、それに衝突したカナミの体は空
高く吹き飛ばされ、地面に激突した。
「・・・ゲホッゲホッ・・・ガハッ!」
地面に勢い良く叩きつけられたカナミは血を二、三度吐いた。
腹部に激しい痛みが襲ってくるがそれを実感している暇などなかった。
ドドブランゴがカナミの目の前に迫ってきている。
それを見た纏とタカシは急いでカナミの元に向かおうとするが、間に合いなどしなかった。
「イヤ・・・イヤアアアアアアアアアアアア!!!」
ドドブランゴは体を大きく持ち上げ凍てつく程冷たいの吐息をカナミに吹きかけ、
抵抗する間も無くカナミはその場に力尽きた・・・
「タカシ!!カナミが・・・」
纏の声には恐怖と焦り、怒りの感情が篭っているのがタカシには手に取るように分かった。
「分かってる・・・一回退くぞ!!」
二人は様々な感情に押しつぶされそうになりながらその場を後にした。
その後、雪山に王者の叫び声が谺した・・・

タカシと纏はベースキャンプのベッドに横たわるカナミを眺めた。
タカシはマスクを外してカナミの頬にそっと手を触れた。
「・・・冷たい・・・・まるで死んでるみたいだ・・・・」
「息はあるが一向に意識が戻らん・・・このままでは・・・」
タカシはあの時のブーンの言葉を思い出した。
『お前の仲間を守れるのはお前自身なんだから用心しとけよ?』
ふとタカシは立ち上がると弓を背負い、歩き出した。
「待て!どこに行くのじゃ!?」
「俺が奴を倒す・・・こうなったのは俺の責任だ」
「悔しいのは分かる・・・じゃが今のお主では・・・」
「俺が復讐のために奴を倒すとでも思ってるのか?」
そう言ったタカシの眼はいつに無く真剣そのものだった。
「奴が俺達に抵抗するのは自分の誇りを守ろうとするためだ。
俺はナイトとしての誇りを守るために奴を倒さなきゃならない」
タカシはそう言って纏に微笑みかけた。
「そうか・・・だったら儂も・・・」
「駄目だ」
「何故じゃ?」
「今のカナミを一人にするのはよくない。纏さんが就いてやってれば、カナミが起きた時
心配しなくてすむだろ?それに・・・」
彼は一呼吸置いて言った。
「纏さんも同じような目に合わせたくない」
それを聞いた瞬間纏の胸の中から熱いものがこみ上げてくるのが分かった。
だが、自分の感情を出さないようにして言い放った。
「フン・・・儂も随分となめられたものじゃな」
「あ、いや・・・そういうわけじゃ・・・」
それを見て纏は意地悪っぽく笑ってタカシの顔を見た。
「分かったからさっさと行け。もしも負けたりしたらただではおかんぞ?」
「ああ、分かってるよ」
そう言ってタカシはベースキャンプを後にした。
「全く・・・どうしてくれるのかのう?またお主の事が好きになってしまったではないか。
それにしても、女子を二人も手にかけておいてそれに気づかぬとは・・・罪な男じゃ」
纏はタカシのいなくなったベースキャンプでそう呟いた。

タカシは氷の洞窟を抜けて再びエリア6へと戻った。
どうやらドドブランゴは別のエリアに移動したらしく、そこにいるのは数匹のブランゴだけだ。
「(親玉がいないんじゃ意味無いよな・・・まぁそのうち来るだろ)」
タカシはポーチから丸薬を一つ取り出し口に放り投げた。
途端にタカシの体は徐々に赤くなり、血管が浮かび上がってきた。
「相変わらず怪力の丸薬はキツイな・・・効果は十分だけど・・・」
タカシはマスクを被りなおすと弓を構え、ブランゴ目掛けて走り出した。
外敵の接近に気づいたブランゴは、攻撃を開始しようとする・・・が、何もかも遅かった。
タカシの放った矢はブランゴの喉を貫き、次々と獲物を殲滅していく。
矢が標的に食らいついた爆音が3回鳴ると、雪山は元の静けさを取り戻した。
『ウオオオオオオォォォォ!!!!』
あの叫び声がまたもやタカシの耳に入った。
間もなく巨大な塊がタカシの目の前にズシリと音を立てて着地した。
ドドブランゴは牙をちらつかせタカシを殺気を含んだ目で睨んだが、タカシは全く動じよう
とはしなかった。
「来いよ」
そのタカシの挑発に乗ったかのようにドドブランゴは拳を持ち上げ振り下ろしたが、
タカシはステップを踏んでその攻撃を回避し、後ろに下がる状態で矢を射った。
そして着地するとまた矢を5本纏めて射ると同時に、体を翻してドドブランゴの直線上から
避けるようにして動いた。
その後もドドブランゴは次々と攻撃を仕掛けるも、機敏な動きで攻撃をかわし続けるタカシには
全く歯がたたない。
それに業を煮やしたのかドドブランゴは大きく叫び、手下のブランゴを呼び出した。
無論ブランゴはタカシに向かって突進するが、タカシはそのブランゴを踏み台にして飛び、
ドドブランゴの顔面目掛けて矢を放った。
『ドォン!!』
けたたましい爆音を立てて王者の象徴である二つの白い牙が破壊された。
それと同時に大きくのけぞったドドブランゴにタカシは次々と矢を放ってゆく。
最早ドドブランゴに勝機は無かった。その腕でなぎ払おうとしても全て避けられてしまい
攻撃を避けようとしても拡散する矢の前では役になど立たなかった。
それを察知したドドブランゴは足を引きずりながらエリアの端まで行くと飛び上がってその場を
後にした。
「逃がしゃしねーよ」

勝機を無くしたドドブランゴにとって今できることは体力を回復することだった。
洞窟の内部にある自分のねぐらに戻れば体力の回復が出来る。
おまけにそこは天井近くの高い位置にあってハンターの攻撃は一切届かないのだ。
ようやくの自分のねぐらについたドドブランゴはそこで信じられない光景を目にした。
そこには数匹のブランゴの死体と、そこに悠々と立つタカシの姿だった。
ドドブランゴは何も考えられなくなり、地面に着地した後タカシに向かって突進した。
しかしタカシの目の前まで迫ったところで急にドドブランゴの動きが止まった。
その足元にはシビレ罠が設置されており、そこから放出される電流がドドブランゴの
体を縛って離そうとはしなかった。
「チェックメイトだな。これでお終いだ」
そう言ってタカシはポーチから小さなボールを二つ取り出してドドブランゴに投げつけた。
そのボールがドドブランゴに当たると白い霧が噴出され、ドドブランゴは深い
眠りに落ちた。
「これでな・・・」
タカシはそう呟いて寝息を立てるドドブランゴの隣に腰を下ろした。
『ガサッ』
「!!!!」
その物音に反応したタカシは立ち上がって弓を構えた。
「弓を下ろせ。儂じゃ」
「纏さん、カナミ・・・」
そこにいたのは纏とその肩にもたれかかっているカナミだった。
「カナミが来たいと言うのでな。もっとも、来ている途中でまた気を失ってしまった見たいじゃが」
「そっか・・・」
カナミの顔色は前よりも良くなっているらしく頬は薄い桜色に染まっていた。
「うぅ・・・うん・・・」
「あ、起きたか。調子はどうだ?」
カナミは寝息を立てるドドブランゴを見た後タカシに視線を移した。
「なんで倒してないのよ・・・ヘタレ」
「随分とご挨拶だな。一応捕獲はしたんだからクエストは成功だろ?」
「ちゃんと倒さないと意味無いわよ。結局アンタはいつまでたってもダメダメね」
カナミの言葉にタカシは「ありがとよ」と言って返した。
「でもいい経験になったじゃないか。コイツ上位クラスの強さだぜ?」
「良くないわよ。死ぬかと思ったんだから」
「死ぬかと思うのはいい経験だ。でも、安心しとけ」
タカシはカナミに面と向かって言い放った。
「今度からは俺が守ってやんよ」
それを聞いた瞬間カナミの頭から湯気が噴きだし、その場に卒倒した。
「気絶しちゃったよ。どうしよう?」
「儂は知らん。お主で何とかするが良い」
「纏さん・・・なんでそんなに不機嫌そうなの?」
「知らん」
そう言って纏は一人その洞窟を後にした。
「・・・仕方ないか」
タカシはカナミを担ぎ上げるとゆっくりと歩き出した。


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