・MONSTER HUNTER TD 第17話


「うぅ・・・」
タカシはあまり柔らかいとはいえないベッドの上で眼を開いた。
彼は上半身を起こすと、辺りを見回した。
「おう、やっと起きたか」
タカシのベッドの左側にある椅子に腰掛けていたブーンが話しかけた。
「なぁ、ここどこだ?」
「ギルドの集中医療病棟だ。お前は一度も来たことないから知らないだろ?」
「ってことは俺ボートの上から今までずっと寝てたのか!?」
「そういうことだ」
タカシは納得したように頷くと、再び枕に頭を静めた。
「そういえば、アレどうなったんだ?あの・・・」
「アカムトルムか?」
「そう、それ」
「一応ギルドが火山の奥まで追い詰めることに成功した。討伐のクエストは発行したが、
受ける奴がいるかはどうかは疑問だな」
「いるんじゃないのか?ドンドルマだけじゃなくてもポッケ村に遠征させたギルドの
ハンターだっているだろ」
タカシがそう言うとブーンは微笑んで「そうかもな」と言った。
しばらくするとタカシが包帯で巻かれた自分の左腕を持ち上げて切り出した。
「しっかし、かっこ悪いよな〜俺・・・腕こんなになっちまって」
「全身焼かれなかっただけマシだろ」
「いやいや、物語の主人公とかだったら無傷のはずだ。否、でもよく主人公は
腕とかに傷を負うことが多いよな」
「お前の場合は主人公より影の薄い脇役って感じだがなww」
「そうですか・・・(´・ω・`)」
「ほれ、リンゴ剥いたぞ。食え」
「あ、サンキュ」
ブーンから受け取ったリンゴをタカシは頬張ると口の中にリンゴが入った状態で
喋り出した。
「あ〜こういうのはやっぱり尊大かお嬢のツンデレに食べさせてもらいたいな」
「諦めろ。ウチのギルドにはお前にリンゴの皮を剥くような女はいないさ」
「ハイハイ、ツンデレ乙」
口の中にあったリンゴを完全に飲み込んだタカシは天井をじっと見つめた。
そして彼は自分の昔の記憶を思い出した。
十二の時同じようにしてベッドに寝そべり天井を見つめていた日々・・・
「あ、そうだ。俺が怪我したってギルドの人間以外は知ってるのか?」
「いいや、知らないだろう。お前がここに運び込まれたのもつい昨日の話しだからな」
「だったらカナミと纏さんに今の状況を伝えといてくれないか?」
「なんで俺が・・・」
ブーンが渋った顔をするとタカシは両手を合わせて頭を下げた。
「頼むよ。この通り」
「・・・たくしゃーねーな。でも俺その二人の顔知らないぞ?」
「金髪のギザミシックルと黒のナデシコだ。多分すぐわかるよ」
その少ない情報にブーンは不満そうな顔を浮かべたが、しばらくすると部屋から出た。
それからまたタカシは天井を見続けた。
木で出来た天井には所々染みがついており、その模様が様々なモンスターにも見えた。
リオレウス、モノブロス、イャンクック、ワイバーンレックス、エンシェントサーペント・・・
しばらくすると下半身に異様な感覚を覚えたタカシはベッドから立ち上がった。
「(う〜トイレトイレ・・・)」

「あれ?団長・・・?」
用を足し終えたタカシは病棟の自分の部屋の前に佇むリナに視線を合わせた。
彼女の様子はモジモジしていてどこか落ち着きのない様に見える。
「団長、どうしたんですか?」
「ひゃぁう!!?あ、貴方何故そこにいるんですの!?」
「いや、それは俺が聞きたいんですが・・・あ、もしかしてお見舞いですか?」
タカシがそう言うとリナはわざと視線をそらすようにしていった。
「ま、まぁそういうことですわ。一応団長なのですから来るのは当然の義務ですわ」
リナは胸に手を当てて言い張ったが、その声は少しばかり動揺していて、あまり威厳が無かった。
「そうですか。それじゃ上がっていってください。立ち話もなんですし」
「そ、それでは・・・お邪魔しますわ」
リナは優雅な足取りで部屋に入るとベッドの傍にある椅子に腰掛けた。
タカシはその真向かいになるようにベッドの上に座った。
「髪形変えたんですね」
そのタカシの言葉に反応したリナは少し俯いた。
彼女の髪型は調査に行く前のプリンセスロールとは違い、ウェーブのかかったロングヘアーだった。
「ええ、気分を変えるためですわ。その・・・こんなことがあったのですから・・・」
リナはタカシの左腕をみると、俯いて小さく呟いた。
「申し訳ありません・・・私のせいで・・・」
彼女の語調は暗く、弱いものだった。
「団長」
タカシは優しくリナを抱きしめ、それに驚いたのかリナは慌てて振りほどこうとした。
「な!何をするんですの!?離しなさい!!(//////)」
「あまり思いつめないでください。この傷は自分でつけたようなものですから」
その言葉はどこまでも優しく、落ち着いていた。
「でも、貴方は私を助けようとして・・・」
「もし俺が自分の身が惜しかったなら団長を助けようとはしませんでしたよ。まぁ火傷
を負うなんて思っても見ませんでしたけどねww」
「何ですの?それは・・・」
リナは少し微笑むと、タカシは笑みを浮かべて言った。
「ほら、笑った。やっぱり団長は悩んでる顔の時よりも笑ってる顔の方が似合ってますよ」
「な、何を言うのですか!?そんなこと・・・(////////)」
「あ、照れてる時の顔も可愛いなwww」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!(////////////)」
リナは自分の顔が真っ赤になるのを感じた。そしてタカシの腕を振り解くと眉を吊り上げて
言い放った。
「いいですか!?これから2ヶ月休養をとって怪我の回復に努めなさい!これは団長命令です!!
わかりましたか!?以上!!!!(//////////////////)」
リナはそう言うと剣幕に圧倒されたタカシを尻目に部屋を出て行った。
その後、部屋には一人あっけに取られ、腕を組むタカシが一人残っていた。

リナは病棟の廊下をツカツカと早歩きで進んでいた。
彼女の表情は怒っているとも見て取れたが、真っ赤にした顔をみると怒っているのとは違う
感情が読み取れた。
「(なんですのあの男は!?人をおちょくる様に!(///////))」
リナは誰もいない廊下の真ん中で脚を止めた。
「(でも・・・何なんですの?この気持ちは・・・)」
リナは自分に芽生えた感情に驚きを隠しきれなかった。
胸の奥からあふれ出してくる暖かい何か・・・
「それって恋じゃないんですか?」
「ひやぁあ!!?トモコさん!?脅かさないでください!!」
突如として現れたトモコにリナは精一杯の言葉を投げたが、トモコは意地悪そうな顔をして
リナに話し出した。
「いや〜団長もアレですね〜タカシ君に恋なんて」
「な、何を言っているのです!?誰もあんな男に恋などしていません!!いいですか!?
私は年上で聡明で落ち着きのある人が好みなのです!あのような男など眼中ですわ!!(///////)」
リナは精一杯の否定をしたが、トモコはお構い無しといったようだ。
ただ、顔を真っ赤にしていても説得力は無いに等しいものだが。
「ロマンチックね〜。自分の腕を犠牲にしてまで助けてくれた年下の白馬の王子様に惹かれる
美しい女性騎士・・・憧れるな〜そんな恋」
相変わらず笑みを浮かべるトモコの顔と対照的にリナの顔はこれ異常ないくらいまでに
高潮して、いつ爆発してもおかしくないくらいだった。
否、もう爆発してしまった・・・
「トモコ・マウントフィールド!!それ以上言うのは慎みなさい!これは団長命令です!!
以上!!(/////)」
その剣幕に押されたトモコは渋々とその場を立ち去った。
「ハァ・・・ハァ・・・そうですわ。私は決してあのような男のことなど・・・・(/////)」
リナは冷静になりつつある頭でタカシのことを思い浮かべた。
つい先程の彼の抱擁、言葉・・・・
『照れている時の顔も可愛いですよ。団長(ニコッ)』
「・・・・可愛い・・エヘヘ・・・・・・・・・・・・ハッ!!!!(//////////////)」
彼女は廊下の壁に自らの頭を何度も何度も叩きつけた。その度に木製の壁は悲鳴を上げたが、
尚もリナは頭を壁に打ち付けるのを止めようとはしなかった。
「(何をしているんですの!?リナ!!私は仮にも誇り高きギルドナイトの団長のはず!!
何故あのような男一人に・・・・・もう!何なんですの!?あの男は!!!(///////////))」
その光景を陰から見ていたトモコは口に手を当ててほくそえんだ。


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