・MONSTER HUNTER TD 第4話

「それじゃ・・・これが例のブツだニャ・・・」
「ありがとうニャ・・・」
真夜中のドンドルマは勿論のごとく問題事は多くなる都市だ。
特に多い問題事と言えばモンスター素材などの違法取引である。
貴重な素材の流出を防ぐため高ランクのアイテムは無償な個人間での取引は禁止されているが、
時々影でこのような取引が行われているのだ・・・
いくら街を取り仕切るギルドナイトといえど、発生件数が多いので上手く立ち回れないのが現状である。
「本当に効くかどうかは分からないニャ。十分用心するニャ・・・」
「分かってるニャ・・・」
どうやら取引をしているのはアイルーらしい。
どちらもローブをかぶっていて顔は確認できない。
取引が終わった後、片方のアイルーは手に入れたものを大事そうに抱え、忍び足で走り出した。
あまり時間の経たないうちにとある部屋の前で立ち止まった。
そこは紛れもないタカシの部屋だった・・・
「ご主人ただいまだニャ・・・」

「ご主人・・・お帰りなさいですニャ」
「メイ!?どうして人間の姿に!!?」
「もう嫌なんだニャ・・・ご主人のことが好きでたまらないのに種族の違いだけで許されないなんて・・・」
「メイ・・・・・・・」
「だからこの姿になったんだニャ・・・ご主人に愛してもらえるように・・・」
「メイ・・・そんなに俺のことを思ってくれてたなんて・・・」
「ご主人・・・大好きだニャ・・・」
「俺もだよ・・・メイ・・・」
「ご主人・・・」
「ん?どうしたんだ?」
「このメイの初めてをご主人に・・・・・・




「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
太陽の光がさんさんと降り注ぐ心地の良い朝だ。ただ、今ベッドから飛び起きた彼以外にとってはだが・・・
「ハァ・・・ハァ・・・・・夢か・・・・」
彼、タカシにとって叫びながら飛び起きるという経験は初めてだった。
体は汗でべっとりと濡れていて、なんとも心地悪そうである。
「なんて夢見ちまったのかな・・・・・・溜まってんのか?俺は・・・」
無論、彼も男なのでこのような夢を見たのも一度や二度ではない。しかし自分の召使が人間になって告白する夢など
初めての経験だったし、ましてや更に進んだ行為など見たこともなかった。
しかし一番大きなものに彼の第六感を刺激する"何か"があったようだ。
「・・・・・・・・・着替えよう」
汗まみれになった自分の体に気づいた彼は着替えようとしてベッドから離れようとすると異変に気づいた。
タカシの横には夢に出てきた彼女が全裸ですやすやと寝息を立て横たわっていたのだ。
『ブワァッ!!』
またもや彼の体から汗が噴出し、濡れているシャツをこれでもかと言わんばかりに濡らした。
「(どういうことだ?何があった・・・思い出せ!俺!)」
彼は脳を総動員させて記憶を探る。
「(確か昨日はカナミが家に来た・・・それで襲い掛かったらハイキックで迎撃された・・・
べつにそれ以外は何もなかったはずだ・・・)」
そんな彼を尻目に少女はモゾモゾと動き、そして眠たそうに目を細めながら起き上がった。
「う〜ん・・・ご主人、おはようですニャ・・・」
なんともシュールな光景である。全裸の女は暢気に欠伸をし、汗まみれの男はこの世の終わりといった表情で
彼女をじっと見つめている。

「誰だお前・・・?」
「ム、召使いの顔を忘れるなんてご主人失格だニャ。メイは傷ついたニャ」
「やっぱりお前はメイなのか・・・」
彼は真っ白になり、頭を抱えながらブツブツと小声で何かを呟いた。
「ご主人・・・何やらいつもと様子が違うニャ」
「そのセリフは今のお前が言えるものではないぞ・・・」
「何言ってるんだニャ?メイはいつものメイだニャ」
どうやらメイは今の自分の状況を分かっていないらしい。
「じゃあこの鏡に映ってるのは誰なんだよ!!」
そういうと彼は鏡をメイに突き出した。
「すごいニャッ!本当に人間になってるニャ!!」
「本当にって・・・どういうことだ!説明しろメイ!!!」
彼がそう言うと彼女は目をそらして自分は何も知らないといった感じの表情をしている。
だが取って付けた感が溢れ出している上に、しまったといった表情をしている。
「メイは何にも知らないニャ〜(;゚3゚)ご主人の気のせいだニャ〜・・・」
「お前・・・これ以上白を切るんなら実力行使に出るぞ。ん?」
「実力行使って・・・何をするんだニャ・・・・・?」
「喋るまで犯す」
タカシはいたって冷静に答えるがメイの体は真っ赤になっている。
「そそそそそそんなことしたら唯じゃおかないニャ!!いい加減な事言うんじゃないニャ!!(////)」
「それじゃ、いただきま〜す♪」
「いやああああぁぁぁ!!やめるニャ!!メイを食べてもおいしくないニャ!!!!(//////////)」
「い〜や・・・・その豊満な胸に滑らかな四肢、整った顔立ち・・・すげぇ美味そう」
「にゃめええええええええええええ!!!!!(////////////)」
タカシは指をワキワキと動かし徐々にメイに近づいていく。傍から見ればただの変態である。
「分かったニャ!話すニャ!!全部話すニャ!!(//////)」
「それでよろしい。最初からそうしてればいいのに」

「人間になる薬ねぇ・・・噂には聞いてたけど本当にあるとは」
彼は彼女の話を聞いて大方納得したような感じだった。
「でも、どうしてその薬の情報を?」
「『月間狩りに生きる』に載ってたんだニャ。それで珍しかったから・・・・」
「珍しかったで済まされる問題じゃないぞ。もしも毒だったらどうするつもりだったんだ?」
彼は先程とは打って変わって真剣な眼差しで少女に問いかけた。
「それは・・・・・」
彼女は口を閉じてしまい、埒があかないといった感じでタカシは言った。
「あのなあ、メイ・・・お前が何をしようと俺は何も言える立場じゃないがあまり心配かけさせないでくれ。」
「分かったニャ・・・」
「お前は俺にとって必要な存在なんだ。メイ無しじゃ生きていくことはできんよ・・・」
「ええええええええ!!!?????(/////////)」
「な、なんだ!?どうした?」
「あ・・・・・なんでもないニャ(/////)」
「?」
「(メイ無しじゃ生きていけないって・・・まるでプロポーズみたいだニャ・・・・(/////////))」
「しっかし・・・服はどうするよ?そのままだといろいろ問題があるし」
「メイは別にこのままでもいいニャ。普段通りだから変りはないニャ」
「いや、その格好でウロウロされると俺の理性が持たん」
「そうかニャ・・・」
タカシはしばらくどうするか考えていたようだが何かひらめいたようで、手をポンと叩いた。
「ティンときた」
「どうするんだニャ?」
「ちょっと待ってろ」

そういうと彼は部屋を飛び出し、しばらくすると手に何かを抱えて帰ってきた。
「じゃ〜ん!プライベートシリーズだ!!」
「それどうしたんだニャ?」
「ギルド受付嬢のワタナベさんから借りてきた。さあ、着ろ」
彼女は口では渋々承諾していたが、顔のほうはなかなか興味津々と言ったところだった。
着替え終わるとタカシは腕を組みメイをじろじろと見ていた。
「やっぱり似合うな・・・」
「べ、別にご主人に褒められてもうれしくなんかないニャ(///////)」
「いや、でも似合うって。なんか大人の女性って感じでさぁ」
じっさいその通りともいえよう。顔立ちは整っていて、クリーム色の髪の毛と蒼い瞳は
なんともいえない美しさをかもし出している。
「メイってさ、人間で言うと幾つぐらいなの?」
「レディに歳を聞くもんじゃないニャ」
「スマンスマン。でもちょっと知りたくてさ」
「ん〜・・・大体二十歳前後といたところかニャ」
「俺よりも年下な訳か・・・なんかメイの方が大人っぽく見えるなww」
「それはメイに喧嘩を売っているのかニャ(ビキビキ)」
「ちがうちがう!悪い意味で言ったんじゃないよ。ほら、俺こんな顔だから羨ましいなって・・・」
必死に誤解を解こうとするもメイはそっぽを向いてしまっている。
実際彼は童顔なので24歳の今でも10代に間違われるのがコンプレックスになっているらしい。
「フン、まあそういうことにしといてあげるニャ」
「ハハハ・・・スマンな『グ〜〜〜〜』・・・?」
部屋になんとも間抜けな音が鳴り響く。

「そういえば朝何にも食べてないな・・・」
「それじゃ今すぐ作るニャ」
そういってメイが厨房に入ろうとするも問題が発生した。
「・・・・・・入れないニャ」
そう、厨房の入り口はアイルーでしか入れないほどの狭さであり、人間になった彼女は入ることができないのだ。
「これじゃご飯が作れないニャ・・・・どうすればいいのかニャ・・・・・」
「まあそう気を落とすなって。確かこの中に・・・」
そういって彼はアイテムボックスをごそごそと漁り、こんがり肉を取り出した。
「本当は魚の方がいいかも知んないけどこれで我慢してくれ」
そういって彼はメイに今朝の朝食であるこんがり肉を渡す。
メイは受け取った肉に口を付けずじっと眺めていた。
「どうしたんだメイ・・・食べないのか・・・・・って泣いてる?」
彼女は確かに泣いていた。悲しげな眼から涙の粒が零れ落ちていた。
「メ、メイ?どうしたんだ?何が・・・・」
「ご主人に楽させてあげたかったんだニャ・・・・・」
「え?」
「人間の姿になったらもっといろんな事ができると思ってたんだニャ・・・
ちっこいアイルーなんかよりも力があるしご主人も一緒にいるなら人間のほうが嬉しいと思ったんだニャ。
でも・・・結局ご主人に迷惑かけるだけだったニャ・・・メイは召使い失格だニャ」
「・・・ばーか」
「フニュ!?」
タカシはメイの頭に軽く手を乗せた。
「厨房に入れないくらいで何をそこまで悲観してんだよ。召使い失格?バカなこと言うんじゃねーよ。
その姿になったのだって俺を思ってなったんだろ?俺はその気持ちだけで十分ありがたい。
それにさっきも言っただろ?メイ無しじゃ生きていくことはできないってさ・・・・」
「ご主人・・・グスッ・・・・うぅぅぇぇぇぇぇぇん」

メイは泣きながらタカシに抱きついた。タカシもメイを優しく受け止める。
「ほらほら泣くなって・・・な?」
「・・・グスッ・・・分かったニャ・・・もう泣かないニャ」
「よしよし・・・ってメイ、顔になんかついてるぞ?」
彼が顔に触れるとそこにあったのは紛れもなくヒゲだった。
「ヒゲが生えて・・・って猫耳まで!?」
「ど、どういうことだニャ!!?」
「まさかもう時間切れとか?」
「ニャアアアアアァァァァァァ!!」
彼女の体はあっという間にいつも通りのアイルーの姿に戻っていた。
その小さな体には大きすぎる服から頭だけが覗いていた。
「こんなに短時間で戻るのか・・・」
「メイもびっくりしたニャ」
二人とも安堵の息が漏れた。
「ま、めでたしめでたしと言いたいところだが一応お仕置きは受けてもらわないとな」
「ええ!?マジかニャ!!?」
「マジだ。俺のためとは言えど危険なことをしたんだ。その自覚を持ってもらわないとな」
「うぅ・・・分かったニャ。それじゃ何をすればいいんだニャ?」
メイは恐る恐るタカシに尋ねた。
「そうだな・・・それじゃ」
「なんだニャ・・・・・?」
「飛びっきり美味い朝食を作ってもらおうかな?」
タカシはニッと笑ってメイのほうを見るとメイは嬉しそうに「了解だニャ」と答えた。


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