・MONSTER HUNTER TD 第9話


やれやれ・・・リオレイアの討伐のときは酷い目にあった。
二人して俺をタコ殴りにするんだもの・・・流石に俺でも死ぬぜ?
まぁ、クエストを提案したカナミ自身はリオレイアを倒せたからそれなりに上機嫌だった。
ただ、纏さんが今後も一緒に行動すると言った時は少し不機嫌そうだったが二人の間に何かあったのだろうか?
俺にしてみれば纏さんのような人がパーティに加わることは良いことだと思う。
少々手荒いところはあるが腕は立つし、何より美人だ。
今まで散々カナミに他の人間とパーティを組むのを止めさせられたのだから少しばかりは
こういう気分に浸っても良いだろ?
しかし、仲間が増えると回復段を使わざるをえないという状況になる。
俺は一人のときなら弓を使う性質だ。弾丸の節約になるし、ポーチの中身を圧縮しなくてすむ。
しかしカナミも纏さんも持ってる武器は防御が出来ないと来たもんだ・・・
回復弾で援護しないと少々きつくなってくる。
俺は溜息を一回つくとアイテムボックスの中から調合書を数冊と、弾丸の材料を取り出しテーブルの上に並べた。
カラの実の両端をナイフで切り落としネンチャク草の樹液をつけて前にランポスの牙、反対側に
火薬を詰める。これでレベル1貫通弾の出来上がりだ。
しかしコイツのせいで俺が死線を彷徨うことになろうとはな・・・
弾丸はちゃんと確認してから撃つという初歩的なことをしなかった自分も自分だがあそこで弾が
貫通するなんて誰も思ってないよ。普通は・・・
俺は黙々とただ一人弾丸を作っていく。話し相手でも居ればいいが残念ながらメイは今日は出かけているし
カナミなんかをつれてくるとろくなことが無い。
精神が徐々に磨り減っていく感じがするよ本当に・・・
さて、弾が出来たら今度は武器の調整だ。
手入れを欠かしたら武器はあっという間にへそを曲げてしまうものだ。特に遠距離武器に関しては。
弓の弦を引いて痛んでないか確かめたり、ボウガンのインナーバレルを掃除したりと色々大変である。
当然大雑把な性格のカナミならこんな作業面倒くさがってやりはしないだろうな。
『トゴオオオオオォォォォォン!!!!』
噂をすれば何とやらという言葉があるが正にその通りだな・・・
爆音が聞こえた真上の部屋に住んでいるのはなんとあのカナミだ。
「しゃーねー・・・見に行ってやるか」
部屋を出て階段を上がり、カナミの部屋に向かう。
カナミの部屋の近くに来ると真っ黒になったアイルーがいた。カナミの家の召使アイルーだ。
「こりゃ酷いな・・・何があったんだ?」
「タカシさんかニャ?実はまたご主人が爆弾の調合に失敗したニャ」
やれやれ、またか・・・アイツに爆弾の調合をやらせるとろくなことが起こらん。
「カナミはまだ中にいるのか?」
「はい。いますニャ・・・」
「じゃ、入るぞ」
扉を開けたその先にいたのは真っ黒になったかナミと大タルの残骸だった。
「また随分とやらかしたもんだな・・・」
「何大タルに向かって話してんのよ!私はこっち!!」
カナミから野次が飛んできた。全く、冗談の通じない奴だ。
「ったく、お前いつになったら爆弾を作れるようになるんだ?」
「別に良いでしょ!?苦手なものは苦手なんだから・・・」
「言いわけねーだろ!!」
俺がそう言ってカナミの両肩を掴むとなんだかカナミの顔が赤くなった。
「え・・・それって(////)」
「これ以上俺にばっかり大タル爆弾作らせるなよ・・・火薬草とニトロダケがもうやばいんだよ」
「・・・・・・・・・・(ドゴッ!)」
「モルスァ!!」
何でか知らないがカナミに思いっきり殴られた。すげぇ痛え・・・
「とにかく、片付けなきゃなんないから手伝ってね」
「どうしてお前の話にはいつも脈絡が無いんだ?」
「いいから手伝う!!」
カナミの投げた大タルの残骸が俺の頭に直撃した。

「あ〜疲れた・・・」
あれから1時間かけてやっと片付けは終わった。
しかし散々こき使っておいてありがとうの一言も無しとは厳しいもんだ・・・
「あれ・・・纏さん?」
なんか俺の部屋の前でそわそわしている纏さんを発見。
「まーつーりさん」
「キャフゥッ!!!」
なんか脅かすつもりは無かったのに奇声を上げて飛び跳ねるほど驚かれた。
「な、何じゃお主!ここで何をしておる!!」
「何って・・・ここ俺の家だし。纏さんこそ何してんの?」
「ま、まあとにかく中に入れてくれぬか?立ち話もなんじゃ」
そういって有無も言わさず俺の部屋に侵入していく纏さん。
でも拒否する理由も特に無いので部屋に招き入れ椅子に座らせる。
「・・・狭い部屋じゃなのう」
「何、狭いほうが落ち着くからな。改築とかする気もないし」
「つまらん奴じゃのう・・・」
「つまらなくて結構。ところで何しに来たの?」
俺がそう言うと纏さんは少し口ごもった様子になった。
「お、おう。そうじゃのう・・・実はな・・・」
そういって懐に手を忍ばせる纏さん。あ・・・見えそう。
「これを持ってきたんじゃが・・・」
そういって纏さんがテーブルの上に置いたのはやたらでかいのビンだった。
「何ですか?これは・・・」
「物置の整理をしてたら見つけたのじゃがな・・・」
しかし見るからに怪しい・・・その原因はビンに書いてある『鬼殺し』の三文字だ。
確か鬼といえば東方の神話に出てくる獣人族で、棍棒を振り回すヤバイ奴だとか・・・
恐る恐るビンの蓋を開けて匂いを嗅いでみた所どうやら中身はただの酒のようだ。
「何だ、ただの酒か。だったらカナミも呼んで一緒に「ま、待て!」・・・どしたの?」
「あの・・・その、あれじゃ!そんな怪しいものをカナミに飲ませるわけにはいかぬじゃろう?」
「いや。中身普通の酒だし」
「そ、そうじゃ!カナミは酒に弱いそうじゃ!」
「いや、アイツ結構飲むよ」
「む・・・ええい!とにかく!これは物置の中にあったものを処分するために仕方なくやっておるのじゃ!
それを手伝わせるのは失礼じゃろう!?」
なんか言い足りないのだがこれ以上言ったら何時間話すことになるのかわからないので
とりあえず解ったことにする。
「ハイハイ、解りましたよ。」
「やっと解ったか。いいか?これは処分するためであって決して
お主と二人っきりで飲みたいというわけではないぞ!!(/////)」
なんかはっきり言われると傷つくな・・・・
とにかくコップを二つ取り出して片方を纏さんに渡す。
「それじゃ、乾杯」
飲んでみると少々度は強いようだが味のほうは結構なものだ。
「へぇ、結構美味いな」
「そ、そうじゃろう!?なんたって儂が・・ムグッ!」
急に手で口をふさぐ纏さん。何やら行動が怪しい。
「儂が・・・どうしたの?」
「な!なんでもないわ馬鹿者!(/////)」
なんだか今日の纏さんは少し変だ。まあこんなことはカナミと一緒にいたら日常茶飯事なので
別に気にするほどのことでもない。
「そういえばタカシは一体どこに行っておったのじゃ?」
「ああ、カナミの部屋だよ」
「カ!カナミの部屋じゃと!!?」
とてつもない形相でテーブルを叩く纏さん。そのせいでコップから酒が零れてしまった。
「ななな何をしておったのじゃ!?」
「何って・・・カナミの部屋の片づけだよ」
「そ、そうか・・・(ホッ)」
なんか安堵に近い息が漏れたような気がしたが気にしない。
「大タル爆弾の調合を失敗したらしくてな、大爆発を起こしてそれの片づけさ」
「何故大タル爆弾の調合で爆発を起こすのじゃ?ww」
「さあねぇ・・・俺にはあいつのすることは良く分からん。
ちなみに真上がカナミの部屋なんだけどさ、なんか真夜中にギシギシ音がするし
時々俺の名前を叫んでるし・・・一体何やってんのかね?」
「ブッ!!」
なんか纏さんがすごい勢いで酒を噴いた。俺何か言ったか?
「纏さん、どうかした?」
「いや、何でもない。ところで・・・お主とカナミはどのような仲なのじゃ?」
「ん〜〜ただの幼馴染って所かな?まあお守役みたいなもんだよ」
「カナミにはお守など必要とは思えんがの。ただ単にお主が付きまとっているだけではないのか?」
「いや、言っておくけど付きまとっているのはアイツだし、本当はアイツかなり脆いぞ・・・」
「どういうことじゃ?」
俺はコップをテーブルを置いて、酒を注ぎ足して一気に飲み干した。
「カナミの親父さんは腕の立つハンターでな、俺の足の怪我から立ちなおらせてくれたのも
実はその人なんだが・・・・」
「それで・・・どうかしたのか?」
「前にも言ったが俺が17の時にその人が亡くなってな・・・相当悲しかったのかカナミの奴二週間近く家出しやがったんだ。
今だったらああだけどカナミの奴昔は体が弱くてな・・・あの時は本気でどうなるかと思ったよ」
「そうじゃったのか・・・」
「まあ、その分昔は大人しかったんだけどな・・・今はどうしてあんな風に変わっちまったのかねぇ?」
「それは・・・父を亡くした悲しみからではないのか?」
「いや、なんか違うんだよな。よく分からんが・・・」
それから俺達は酒のビンが空っぽになっても色々話し合った。
最近新種のモンスターが次々と発見されていることやら最近の武器や防具に
ついて等色々だ。
話していた分かったが、どうやら纏さんはハンターとしては俺のことをそれなりに認めてくれているらしい。
ただ、一人の人間としてはまだまだ駄目な様であるが。

「纏さ〜ん。もう帰らないと」
「もう飲めんぞ・・・ウヘヘヘ・・・(//////)」
駄目だ、完全に酔っ払って眠り込んでいる・・・体を揺すっても全然起きやしない。
「ム、ご主人が女の人を無理やり酔わせて襲おうとしているニャ!」
どうやらメイが帰ってきたようだ。
「誰もそんなことしねーよ。とりあえずお帰り」
「ご主人ならやりかねないニャ。とりあえずただいまだニャ」
「帰ってきたところ早速悪いがこのコップ洗っといてくれ。俺は纏さんを家に届けてくる」
勝手なことだが家まで送っていくことにしよう。部屋もベッドも狭いのでこの家に泊めることは不可能だ。
「もしや送っていくという口実で夜道で押し倒したり・・・」
「だからしねーよ!!」
これ以上メイに何か言われたら敵わないので纏さんを担いで部屋を出る。
外の冷たい空気と、酒のせいですっかり高くなっている纏さんの体温を感じていると
カナミ以外の女性にほとんど触れたことのない自分に少し絶望した。
「あ〜やっと着いた・・・」
やっと纏さんの家に着いたので上がりこみ布団を敷き、おいしくいただきたいという感情を
鋼の理性で押し殺しながら纏さんを寝かせ帰路に着いた。
「あ、そうだ」
帰路に着く途中のメゼポルタ広場にある掲示板へと向かう。
最近ドンドルマからこの広場に掲示板を移動させるせいで書き込めなかったり、三日で記事が撤去されるなど
色々困ったことがあるものだ・・・
俺は目当ての記事を見つけ『保守』と書き込んでから帰路を急いだ。

翌日、纏さんに『軟弱者』と言われた上にカナミから『裏切り者』と言われた。


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