・メイドツンデレを映画に誘ってみたら(その2)

〜翌朝〜

「全く……朝食も簡単でいいって言ったのに……」
『こればかりはタカシ様のお言いつけでも従う訳にはいきません。大体、今日一日、体力
を使うと仰られたのはタカシ様の方ではありませんか。でしたら、尚更朝は力を付けない
といけません』
「確かに正論だけどな。けど、芽衣。結構早起きしたんじゃないか?」
『そ、そうでもありませんよ。タカシ様の言いつけ通り、目覚ましはギリギリ寝ていられ
る時間にしかセットしませんでしたけど……ただ、やはり体質が寝坊出来るようにはなっ
ていないので、早くに目が覚めてしまっただけです』
「たまーに寝坊するじゃん」
『や、やかましいです!!(////////) そういう時は、大抵寝不足で疲労が溜まっている時
だけで、普段は目覚ましに頼らずとも決まった時間に起きれます。年中寝ぼすけのタカシ
様と一緒になさらないで下さい!!』
「分かった分かった。そうムキになるなって」
『タカシ様が失礼な物言いをなさるからですよ。もう!!』
『(本当は……嬉しさの余り、緊張して……あまり寝付けなかったんですけど……)』
「どれ。芽衣。ちょっと顔、見せてみろ」
『へっ!? タッ……タタタタタ、タカシ様!! ちょちょちょ、ちょっと!! 顔近いですよ!!(//////////////)』
「よし。ちゃんと起きているな」
『何をなさるんですか!! いきなり顔を近づけて。びっくりするじゃありませんか!!』
「いやぁ。おどかしてゴメン。芽衣が寝不足じゃないかどうか、チェックしようと思って」
『そ、それって、こんなに顔近づけないとダメなんですか?』
「ダメっていうか……目がショボショボしてるかどうか見れば、はっきり分かるんじゃな
いかなって。根拠は無いけど」
『根拠もなしにそういう事はなさらないで下さい!! もう……(///////////)』
『(ビックリした……何をなさるのかと……でも、タカシ様の顔があんなお近くに……ぅぅ……(///////////))』
「悪い悪い。さあ。さっさと朝ごはんを食べようぜ。芽衣とこうして雑談してるのも楽し
いけど、今日は一日たっぷりあるからな。出掛けてからでも遅くないし」
『言っておきますけど、私は迷惑してるんですからねっ!! 自覚なさって下さいよ、もう!!』

「芽衣。支度は出来たか?」
『はい。私はとっくに出来ておりますが』
「とっくにって……お前、まさか、その格好で行くわけ?」
『何かおかしいですか?』
「いや、その……メイド服だろ? それ」
『エプロンを外せば、ただの黒い上下の服ですから。別府家の物は地味ですので、これで
外を歩いても目立たないのは、買い物にご一緒して頂いている時に、既にお気付きだと思っ
ておりましたが』
「そうじゃなくてさ。せっかくの外出なんだし、こう……もうちょっとオシャレな格好し
てもいいんじゃないか?」
『タカシ様は、御命令で、と仰られました。でしたらこれは、私の仕事の延長ですから、
当然仕事着で行くべきだと思ったのですが』
「何もスーパーに買い物に行く訳じゃないんだし、家事をする時の服装で出かけることな
いじゃん。もうちょっとオシャレしたっていいんじゃないか?」
『急にそんな事仰られても困ります。余所行きの服などと言われても、用意出来る訳ない
じゃありませんか』
「いくら芽衣でも私服くらい持ってるだろ? まさか、どこに行くにもメイド服というわ
けじゃあるまいに」
『そ……それはその……持ってますけど、タカシ様が仰るようなオシャレなものではあり
ません。外を歩くのに恥ずかしくない程度であれば十分ですから』
「なら、それでいいよ。普段、芽衣の私服姿なんて滅多に見ないから、俺にとってはどん
な服装でも新鮮だしな」
『……期待されるのは勝手ですが、がっかりなされても責任は持ちませんよ?』
「少なくとも、がっかりすることは無いさ。ほら、さっさと着替えて着替えて」
『ハァ…… 分かりました。タカシ様の仰る事であれば従わない訳には参りませんので、
着替えてきます』

『タカシ様はああ仰られたけど……どうしよう。余り地味な格好だと、タカシ様が連れて
歩くのにみっともない思いをされてしまうし……かと言って、オシャレし過ぎると、私の
身分に相応しくないし…… 万が一にも、タカシ様の彼女などと誤解されるような事があっ
ては……』

〜ここから妄想〜

店員「はい。こちら、彼女の分ね。ちょっとおまけしておいたよ」
私『ち、違います!! 私は彼女なんかじゃ――』
タカシ様「まあまあ。良いじゃないか、芽衣。そう頑なに否定しなくたってさ。おまけし
てくれたんだし、ラッキーって思っておけば」
私『冗談じゃありません!! そんな、その……タカシ様の恋人だなんて、そんな、絶対
に有り得ないこと……』
タカシ様「芽衣は、俺の恋人だと思われるのは嫌なのか?」
私『へっ……!? そ、その……嫌とかそのような事は、私の立場からは述べられませ
ん!! けど、そもそも、身分が違いますし、不釣合いも甚だしいです』
タカシ様「身分とかそんなのは、よその人から見れば関係ないよ。まあ、確かに芽衣は可
愛いから俺なんかじゃ釣り合い取れないかも知れないけど」
私『ちちち、違います!! 私なんてそんな……タカシ様の方がカッコいいから釣り合い
が取れないという意味でって……ああああああ。ちちちちち、違います!! いいい、今
のは言葉のアヤというか、言い間違いです!! 忘れて下さい!!』
タカシ様「俺の事、カッコいいって思ってくれてるのか?」
私『ですから、違いますってば!! その、あの……本気になど、なさらないで下さい!!』
タカシ様「そうなのか? 本気で言ってくれたのなら嬉しかったんだけどな」
私『へ? あの、それはどういう……ことです……か?』
タカシ様「正直な話……芽衣と俺が恋人同士に見られて嬉しかった。だから、芽衣が俺の
事をカッコいいって思ってくれるなら嬉しいし、その……良かったら……他人からそう思
われるだけじゃなくて、本当にそうなれればいいなって……」
私『ええええええっっっっっ!!!!! いや、その……私達は、主人とメイドの関係な
わけで、だからその……恋人同士とかそんな事は……』

タカシ様「この際身分とかは関係ない。芽衣の意思が……芽衣が、もし、いいって言って
くれれば……俺は……芽衣と、恋人同士になりたい」
私『そっ……そんな……こと…… 私も……タカシ様さえ……良ければ……(////////////)』

〜ここから現実〜

『なんて……わ、私ったら、何て事を考えているのかしら。そんな事、あるはずも無いの
に…… というか、こんな事している場合じゃないのに。タカシ様が待っていらっしゃる
のですから、早くしないと。うーん……これと……これが、無難かなぁ……』
「ああ。ダメダメ、そんなんじゃ。もうちょっと考えてコーディネートすれば、もっと可
愛い組み合わせになるだろ?」
『大きなお世話です!! 私だってちゃんと考えて組み合わせているんですから、タカシ
様に口出しされる筋合いは……って、えええええっっっっっ!!』
「おわっ!? どうしたんだよ? 急に大声出して。ビックリするじゃないか」
『おっ……おっおっ……』
「オットセイ?」
『違いますっ!! 驚いたのは私の方です!! なっ……ななななな…… 何でタカシ様
が私の部屋にいるんですかっ!!』
「何でって一緒に部屋入ったじゃん。気付かなかった?」
『どうして付いてくるんですか? これから着替えをしようという女性の部屋に入るなん
て、変態以外の何でもありません!! 正直……正直言って、私、タカシ様を見損ないました』
「ちょっと待て。別に、着替えにまで付き添う気は無いぞ。いくらなんでも、それくらい
のモラルはあるつもりだけど」
『じゃあ何で私の部屋に無断侵入してきたんですか!! ちゃんとした理由を仰って下さ
らないと、納得出来ません!!』
「いやぁ。芽衣にはさ。せっかくだから、出来る限りオシャレをして貰いたくて。どうせ、
地味で無難な服を選ぶつもりだったんだろ? そうはさせまいと思って付いて来たんだ」
『余計なお世話です。タカシ様にそんな事を言われる筋合いはありません』
「いいや。今日は俺に付き合ってもらうんだ。それなりに相応しい格好をして貰わないと、
俺が納得出来ない。と、いう訳で、今日は芽衣には俺の選んだ服装で出掛けてもらうから」

『冗談じゃありません!! 自分の服くらいは自分で選びますから!! 人の話を聞いて
下さいってば、もう!! あああああ…… ク、クローゼット漁っちゃダメです!!』
「うーん…… 思ったよりはオシャレって言うか、最近の流行っぽい感じだから、コーディ
ネート次第では十分可愛らしく着飾れるけど……ジーンズよりかスカートの方が好きなん
だよな…… なあ、芽衣」
『なあ、芽衣、じゃありません!! いい加減に人のお洋服を漁るの止めて下さい!!』
「お前さ。ミニスカートとか持ってないの?」
『は? ええと、その……ミニスカート、ですか? な……ななななな、何でそんな……
私が持ってる訳ないじゃありませんか』
「持ってる訳ないって事もないと思うんだけど。普通に似合いそうだし。てか、今の態度。
ちょっと誤魔化してるんじゃないか?」
『何で私がそんな事をごまかさなくちゃいけないんですか!! ていうか、そんな事より
もう着替えますから、タカシ様はとっとと外へ出て下さい!!』
「どれどれ。どうやら一枚くらいありそうな雰囲気だな。もうちょっと探してみるか」
『やああああっっっっっ!!!! もういい加減止めて下さい!!』
「お? これは……」
『そっ……それは、ダメです!! しまって下さい』
「へぇ。チェックのプリーツスカートなんて、可愛らしいものもちゃんと持ってるじゃん
か。うんうん。やっぱり芽衣も女の子だなー」
『そ……それはその、店員さんの口車に乗せられて、つい買ってしまった物ですから…… 
だからその、私には全然似合いませんし、それを着て外出するつもりもありません!!』
「そうか? 俺は似合うと思うけどなー。よし。じゃあ、下はこれにしてと。後は……こ
のパーカなんて合いそうだな。白のキャミソールと組み合わせて……」
『ひ、一人で勝手に決めないで下さい!! どうしてタカシ様はいつもいつもわがままな
んですか!!』
「ソックスは…… おお。ちゃんとオーバーニーも買ってるじゃん。実は、こっそりと着
る気満々だったんじゃないのか?」
『違います!! ソックスは、別にメイド服のロングスカートの下に履いても、暖かいし、
タイツよりかは履きやすいとそう思って買ったまでで、別にミニスカートとの組み合わせ
を意識した訳じゃありません!!』

「まあいいや。とにかくこれで決定な。はい。それじゃあ俺はリビングで待ってるから、
着替えたら顔出してくれ。いいな?」
『どうしてこう、人の話を全く聞かないんですか!! 自分勝手にも程があります』
「芽衣に意見聞いてたら、日が暮れそうだからな。こればっかりはご主人様権限を使わせ
て貰うぜ」
『普段は主人らしい振る舞いを嫌うくせに、こういう時ばっかり……ズルイですよっ!!』
「何とでも非難してくれ。とにかく、今日はその服で付き合って貰うからな。それじゃあ、
宜しくな」
『あ、ちょっと!! タカシ様!!』
 バタン……
『もうっ!! バカ!! 全然私の言う事を聞いて下さらないじゃないですかっ!! ど
うしよう……確かに、タカシ様に可愛いって言われたらとか……そんな事考えてたら……
思わず買ってしまったスカートだけど、まさか本当にタカシ様の前で履く時が来るなんて
…… は、恥ずかしい……』


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