ピアノのおけいこ その3

タ「到着!」
リ『ここは・・・神社?』
タ「そう。無駄に石段が多くて参拝客もほとんどいないけど」
リ『なぜ神社に?』
タ「俺の好きな場所なんだ」
リ『・・・かわいい巫女さんでもいらっしゃいますの?』
タ「そうそう、老成属性で萌えるんだこれが・・・って違う!wwwまあ登りゃわかるって」
スタスタスタ
リ『・・・ふぅ、まだ上には着きませんの・・・?』
タ「もうちょいだ。疲れたか?」
リ『そ、そんなことありませんわ・・・はぁはぁ』
タ「しょーがねーな・・・ほれっ、俺の手につかまれ」
リ『えっ・・・け、けけけ結構ですわ(///)』
タ「遠慮すんなって、ほら」
ガシッ
リ『きゃっ!?』
タ「あとちょっとだからな、頑張れよ」
リ『ええ・・・(タカシの手・・・暖かい・・・///)』

・・・頂上・・・

タ「ふぅ、ほら、着いたぞ、リナ」
リ『はぁはぁ・・・やっとですのね・・・』
タ「それだけの価値はあるぜ。ほら、見ろよこの夜景」
リ『まあ・・・キレイ・・・』
タ「なっ?」
リ『・・・』
タ「・・・」
リ『・・・』
タ「・・・」

リ『タカシ・・・どうして何も言いませんの?』
タ「ん?何が?」
リ『今日の・・・結果のこと・・・』
タ「あれは、俺が中3の頃だった・・・」
リ『え?な、なんの話ですの?』
タ「当時、俺は野球部でピッチャーだった」
リ『(え?そんなことやっていたんですの?今は漫画読んでばかりですのに・・・)』
タ「3年の最後の大会があってさ、俺の中学優勝候補だったから、すっげー期待されてたのよ」
リ『期待・・・』
タ「俺ら単純だったからさ、期待されたらやるっきゃねーって、毎日毎日練習ばっかしてた」
リ『・・・』
タ「まわりの大人はみんな"頑張って優勝してね"って、そればっか」
リ『(・・・似てますわ・・・)』
タ「頑張ったさ、そりゃ。来る日も来る日も投げ込みやって、週末は練習試合やって」
タ「それでいよいよ大会の試合を迎えて・・・5回までは順調に投げてたんだけど」
リ『何かありましたの?』
タ「ヒジがさ・・・もたなかった・・・」
リ『え・・・?』
タ「いきなり激痛が走って・・・それからは冷やしてごまかしながら投げたんだけど」
タ「・・・そんな状態で抑えられるわけなくて・・・」
リ『じゃあ・・・』
タ「試合は負けた。打線は点取ってくれたんだけど、俺がそれ以上に打たれたから・・・」
リ『・・・』
タ「試合後は責められたよ。なんで万全の状態で試合できるよう調整しなかったんだって」
リ『そんな・・・』
タ「期待に応えようとしてただけなのに・・・かえって裏切っちまった・・・」
リ『・・・』
タ「そんな思い・・・もう誰にもさせたくない・・・」
リ『そうでしたの・・・そんなことが・・・』

タ「・・・なーんちゃって!」
リ『・・・え!?・・・もしかして・・・』
タ「そ、今の全部冗談www」
リ『じょ、冗談!?』
タ「引っかかったなwドッキリでしたー!カメラはあちら」
リ『カ、カメラ!?』キョロキョロ
タ「ねーよwwww」
リ『もう!タカシのいじわるっ!!><』
ポカポカ
タ「こらこらwやめれwww悪かったからwww叩くなwwww」
リ『そんないじわるな人、知りませんわ!プンッ(///)』
タ「悪かったって・・・じゃ、そろそろ帰るか」

・・・リナ宅・・・

リ『た、ただいまですわ・・・』
父「おお、リナおかえり」
リ『あの・・・お父様・・・』
父「外は寒かったろう?暖かい紅茶でも入れてやろう」
リ『え?・・・お父様・・・?』
父「そうだ、確かミルフィーユがあっただろう。セバスチャン、持ってきてくれ」
リ『お父様!』
父「な、なんだね?」
リ『・・・(ジーッ)』
父「どうしたんだい・・・?」
リ『・・・不自然ですわ』
父「(ギクッ!)」
リ『何か隠してらっしゃいますわね?』
父「そ、そんなことはないぞ(汗)」
リ『台詞が露骨に棒読みですわ・・・それに左の眉がピクピクしています』

父「・・・ふぅ、リナはなんでもお見通しだな・・・」
父「口止めされていたんだが・・・実はタカシ君からさっき電話があってね」
リ『(電話?いつの間に・・・あっ!あのお手洗いに行った時・・・)』
父「リナを強引に食事に誘った、元気が戻ったらちゃんと家に帰す、と」
父「だから、帰ったら発表会のことで責めないで欲しい、暖かく迎えてやってくれと・・・」
リ『・・・タカシが・・・そんなことを・・・』
父「タカシ君から聞いたよ、リナがどんなに頑張っていたか」
父「・・・どんなにプレッシャーをはねのけようとしていたか・・・」
リ『お父様・・・』
父「確かタカシ君は○○中出身だったね?」
リ『え?ええ、そうですけれど・・・?』
父「以前に名前を聞いたことがある気がして引っかかっていたんだが・・・」
リ『(な、なにかよからぬことでもやったのかしら・・・)』
父「2年前の中学野球の県大会に出ていたね」
リ『えっ!?』
父「大会のスポンサーをやっていた関係で試合を観に行ったから覚えているんだが・・・」
父「そういえば別府タカシというピッチャーがいた。5回まで完璧なピッチングをしていたのに、急に崩れてね・・・」
父「でも、鬼のような形相で投げ続けていた・・・何かに耐えるかのように」
父「後で知ったことだが、ヒジを壊したそうだね」
リ『(そんな・・・あの話は本当でしたの・・・?)』
父「私に電話をしてきた時も・・・必死だったよ。最初は何を言っておるのかと怒ったんだが・・・」
父「あの時の投球の表情を思い出してね。結局、私が折れたよ・・・初めてだ、他人に折れたのは」
リ『(タカシ・・・)』
父「すまなかった・・・私はリナを苦しめていたんだな・・・」
リ『そんな、謝っていただくことなんて・・・』
リ『お父様が期待して下さるのは嬉しかったですわ・・・私が少しペースを乱してしまっただけ・・・』
父「リナ・・・」
リ『そんな暗いお顔をなさらないで・・・また次頑張ればいいだけですわ(ニコッ)』
父「リナ・・・強く・・・なったな」
リ『(タカシと一緒なら・・・また頑張れるから・・・/////)』

・・・翌朝・・・

タ「よっ、リナ。おはやう」
リ『おはようですわ。今日も放課後レッスンしますから、空けておいて下さいね』
タ「げっ!今日もやるのか!?」
リ『当然ですわ。次こそ優勝しますわよ』
タ「な、なんだそのいきなりな前向きモード・・・」
リ『私はいつでも前向きですわ』
タ「でも、それなら俺なんかよりもっと耳の肥えた人を・・・」
リ『タ カ シ で な い と ダ メ で す の !』
タ「・・・えっ・・・?」
リ『(はっ!)・・・え・・・いえ、べべべ別にその、そんな意味ではなくて・・・(///)』
リ『タカシの素人ならではの新鮮な意見というか、その・・・』
リ『も、もう!とにかく放課後音楽室に来ること!いいですわね!?(///)』

Fin.


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