「ホライズンの息子、スカルチノフの息子、タカシです。この度は近衛騎士として採り立てていただきまして、まことに恐悦至極に存じます」
「はいはい。堅苦しい挨拶はいいわ。それよりタカシ、久しぶりね。別にわざわざ家来に会いたいだなんて思ってなかったけど、何やってたわけ?」
「はい。父の下にて、剣神としての修行を受けておりました。剣神とは……」
「わかってるわよ。鍛冶と剣術でしょ。あんたね、強くなったつもりかもしれないけどね、あの程度で私を守りきれるだなんて思わないことね。
 今のままじゃまだまだ私の足元にも及ばないわよ」
「はっ。かなみ姫の剣の強さはよく存じあげております」
「ふーん……。まぁ、せいぜい頑張りなさいよ」
(何よ……敬語なんて使っちゃって……幼なじみが久しぶりに会ったのに、何か言うことないわけ……?)

「姫様……素直じゃありませんな……」

「ねえ、タカシ」
「なんでしょう、姫」
「どうして敬語なんて使うのよ。昔は普通にしゃべってたじゃない」
「あの頃は私も無知で愚かな子供でございました。姫にあのような無礼を働いていたかと思うと、今でも赤面せずにはいられません」
(別にあの頃を忘れているわけじゃないんだ……)
「じゃあ、私が命令したらタメでしゃべってくれる?」
「それはなりません、姫。騎士とはいえ、私は卑しい平民の出でございます。姫とは違う身分の人間なのです。それに……」
「それに?」
「『家来』が『主人』と対等な口を利くなど、恐れ多いことです」
「あ……」
(あのこと、覚えてたんだ……)
「じゃあ、どうしてもタメ口を利いてくれないわけ」
「ええ。そも、なぜ姫は私にその様な事を望まれるのですか? 会話でしたら、ご友人や婚約者殿となされば……」
「あーはいはい婚約者ね。あんなの放っておけばいいのよ」
(何よ……あんたにとって私は友人じゃないっての? いいわよ。あんたがそんな態度なら私にも考えがあるわ!)
「じゃあ、改めて命令するわ。タカシ、あなたは今この時から私の家来よ」
「はっ! この身は既に剣とともに姫に捧げる心構えにございます」

「姫様……」


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