「タカシ、剣の先生がお休みなのよ。あんたの腕をひさびさに見てみたいわ」
「ご命令とあらば」
「それから」
「なんでしょう」
「使うのは真剣だからね」


「姫……やめませんか?」
「うるさいわね。男のくせに怖いわけ?」
「はい。万が一姫を傷つけてしまうかと思いますと……」
「ば、ばか。なめないでよね!」
(私を心配してくれてんだ……優しいのは変わんないな)
「じゃあ、行くわよ」
「はい。お受けいたします」
(こうして剣を振っている間は、一国の姫なんかじゃなくて一人の戦士になれる)
タカシは、かなみの剣を楽々と受けている。
(タカシ……昔はあんなに弱かったのに……ちょっと複雑。私が姫じゃなかったら、タカシは私をどう見てくれたかな……)


「タカシ、あんたわざと負けたでしょ」
「滅相もございません。やはり、かなみ姫はお強くてあらせられる」
「おだてたって駄目だからね。私が手を抜かれて喜ぶとでも思ったの? ばかにするにも程があるわ」
「……申し訳ありません」
「今日はもういいわ。下がりなさい」
「はっ。では失礼致します。どうぞ、ご機嫌を直されますよう……」
「うるさいわね、さっさと行きなさいよ!」
「はっ」
(ばか……。剣でなら私と向き合ってくれると思ったのに……)

「姫……じいはいつも見ておりますぞ……!」


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