「タカシ、あんた馬には乗れるの?」
「はい。騎士になるための条件の内ですから」
「じゃ決まり」
「は?」
「鹿狩りに行くわよ」
「姫! 森の中は危険ですと何度も……」
「うるさい家来。もう行くって決めたの。黙ってついてくる!」


「いないわね……」
「姫、戻りましょう。もう大分奥まで来てしまいました」
「何言ってるのよ。獲物を見つけるまでは帰らないからね!」
(だいたい、せっかく私と2人っきりなんだからもう少し一緒にいようとか言えないわけ? もぅ……)
「姫! 危ない!」
「え? きゃあっ!」

「いたたた……」
「ご無事ですかー! 只今そちらへ参ります!」

「姫、お怪我は?」
「大丈夫。あそこ斜面だったのね……うかつだったわ」
「姫の馬です。賢い子ですね。自分から戻って来ましたよ」
「ありがと。ごめんね、ファルシオン」
「ぶるるる……」
「すっかり暗くなってしまいました。急いで城へ戻りましょう」
「あ……うん」


「あの……さ。今日は、いろいろと悪かったわね」
「かなみ姫はもう少しご自愛なさることをお覚えになるべきですよ。あなた一人の体ではないのですから」
(え……それって……まさか、タカシ……)
「あなたは次の世代で国を治めるべき方なのですから。この国は姫にかかっているのですよ?」
「あぁ……やっぱりね……」

「姫……たまにはじいのこともお考えくださいませ……」


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