「次の舞踏会まであと一月……。それまでにタカシとの交際を正式に認めてもらえれば婚約は破棄できるわ。
 でも……タカシは私をどう思ってるのかな……」

 「かあさまがね、もう、タカシとあそんじゃだめだって……いやだよぉ、そんなの……」
 「そんな……どうしてだめなの? ぼく、かなみちゃんにわるいことした?」
 「うんん……タカシはわるくないの。……わたしが……おひめさまだから……」
 「……ぁ」
 「しもじものものとあそんでいてはいけない……って」
 「そう……なんだ……。かなみちゃんもやっぱりそうおもうの?」
 「そんなわけないじゃない! わたし、タカシのこと……だいすきだもん……」
 「かなみちゃん……」
 「ねぇ、タカシ……。やくそくしない?」
 「やくそく?」
 「うん」

 「もしわたしたちがはなればなれになっても、ずっとともだちでいよう……って」


「次の舞踏会まで……あと一月……。俺の想いは、かなみに告げられるのだろうか……」

「身分、か……」

 「おかあさん! なんでぼくたちはおひめさまとあそんじゃいけないの?」
 「タカシ……仕方ないことなのよ。私達下々の者とあの方達とは、住む世界が違うのだから……」
 「そんな……。なっとくできないよ!」
 「そうね……。でも、あきらめるしかないのよ」
 「いやだよ、もうかなみちゃんとあえないなんて! どうにもならないの?」
 「……もし、かなみ姫をお護りする騎士になることができれば……」

「せっかくここまで来たってのに、まだ越えられない壁があるってのか……。くそ……」


「姫様は日々お悩みになっておられます」
「でしょうね……」
「陛下。過ぎた事を申し上げますが、どうか姫様のお気持ちもご理解くださいませ」
「じい」
「ははっ……」
「わたくしはね、身分の違いなんてどうでもいいと思ってますの」
「では、なぜあのようなことを?」
「一つは、けじめです。王であるわたくしが率先して封建制度を崩す様な事をするわけにはいけませんもの」
「一つ、とは?」
「今のは建て前ですわ。もう一つはね、身分の前に崩れるような恋ならばするな、そういうことですわ」
「それでは……」
「かなみは強い子です。しかし、内面には非常に脆い部分も持っています。もし、あの二人が越えられない壁を越えることができたなら、
 きっと、お互いに支え合う強い絆ができることでしょう。わたくしは、それを期待しているのですわ」
「陛下……」
「ふふ。若い時には苦労をするものですのよ」

「リナ様……楽しんでいらっしゃいますな……」


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