エピローグ

その後のことは、とにかく目まぐるしいほどの勢いで進んだ。
まず、一番心配していたリナ女王陛下へのご報告は、意外とすんなりと済んだ。
これにはかなり厳しいことを言われるものだろうと身構えていただけに、拍子抜けしたほどである。
ただ、それからというものの、陛下が事あるごとにご自分を「お義母様」と呼ばせたがったり、
それを見ていたかなみが何故か不機嫌になったりして、しばらく困惑することになる。
舞踏会での発表自体も、これまたすんなりと済んだ。
一部の貴族のご婦人方が批難の声をあげたりしたが、なぜか会が終わる頃には姿が見えなくなっていた。
その次の日に陛下が妙につやつやとした顔色をなさっていたのが気になったが、追求しないほうが身のためなのだろう。

ヤマダ王子とは、一波乱あった。決闘を申し込まれたのである。
もっとも、その決着はまだついていない。
なぜなら決闘の最中にかなみが乱入して王子をぼこぼこにのしてしまったからだ。
それ以降かの国との交友関係が崩れたかといえばそうではなく、
その後王子からはなぜだか慕われてしまい、いまでは親友として国を越えた仲になっているので、今では決闘のことは酒の肴になっている。
もっとも、やはりかなみが不機嫌になるのだが……。

そして、そういった厄介事が全て済んだ後、国を挙げて、盛大に婚姻の儀が行われることになった。 

コンコン
「はい」
「タカシ様」
「じいか、どうぞ」
「では失礼いたします……おお……これはよくお似合いでございますな」
「はは、そうですか。ちょっと派手なような気もするんですが……」
「そのようなことはございませんよ。ささ、姫様の準備が整いましたので、こちらへ……」
「はい、わかりました」
「しかしタカシ様。じいにはもっと気軽に話しかけてくださってよろしいのですぞ」
「いやあ、どうもまだ慣れなくて」
「これでは姫様もさぞかしご苦労なさったことでしょう……」
「ははは……よくわかりますね。もしかして、見てました?」
「さて、わたしには何のことだかわかりませんな。ほっほっほ……おっと、こちらです」
「かなみ、入るよ」
「う……うん……いいわよ」
「かなm……」
「……何よ、変なら変って言えばいいじゃない」
「いや、その……」
「……その?」
「凄く、似合ってる。綺麗だ、本当に……」
「……ばか」
「本当に、結婚するんだな、俺たち……」
「うん……。あたしね、今までドレスなんか大っ嫌いだったけど……」
「……けど?」
「タカシのためなら、着ても、いいかな、なんて……」
「かなみ……」

「あの、さ。今まで、あたしからははっきりとは言ってなかったけどさ……」
「うん」
「……好き。タカシのこと、だいすきだよ」
「……うん。俺もだ、かなみ」
「タカシ……」
「かなみ……」

「姫様……誓いのキスでしたらあとでゆっくりとでも……」

ばっ!!

「ばばば、ばか! キスなんてするわけないでしょ!! こんな、こんな……」
「……あ〜、かなみ?」
「〜〜〜〜っ! じいやのばか!」
ドスン!!
「ぐはっ! ちょ、なんで俺が……」
「知らないんだからぁーーーーっ!!」
「姫様! お待ちくだされ〜!!」
「……」


どうもかなみは、いつになってもおてんばなまんまのようで、
でも、それがあいつのかわいいところでもあるんだよな、なんて思う俺もいて、

ああ、重傷だなあ、なんてつぶやくのだった。


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