311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/12/15(土) 20:19:58.95 ID:o3KYe6jVO
お題
・ツンデレに電話で「もうちょいで帰るから全裸で待機してて!」って言ったら
・急いで家に帰ったらツンデレが全裸で正座してました
・全裸のツンデレに「アンタが脱げっていうから脱いだんじゃない!」って逆ギレされたら



47にもなって何やってんだよ親父…



・>>311の親父さんに5レスくらい捧げる

 週末の夜である。
 しかも、今週はトラブル続きで、殆ど家に帰れないほどの激務だった。
 それもどうにか、休日出勤までした甲斐あり、一区切り決着がついたわけだ。
 となれば、日本のサラリーマンとしては、『一杯どうよ?』となるのは目に見えてまして。
 さらにそれを言い出したのが上司となれば断りにくいもので。
 ついでに同僚からは『結婚してから付き合いわりぃぞ? 今日くらい付き合えよ!』などと言われた
日には、数件はしごコースへまっしぐら。酒も嫌いじゃないし、問題が片付いた開放感も手伝い、つい
羽目をはずして大分に酔っ払ってしまったのだ。
 いやいや、それでも一応連絡は入れたんだよ? 明智君。
 なんてったって、おいらはSHI・N・KO・N! 新婚さんなの! わかる? わかんねーかなー、こう
いうの。
 家に帰ったら、世界一可愛い俺の奥さんが待ってるんだよ、うん。だから、遅くなるときは連絡入
れないと、あとで凄く怒られるの。
 具体的には、翌朝朝食抜きだったり、お弁当もナシだったり、おまけに財布からも金を抜かれて夕
食まで何も食えなかったりね。で、そのお金を返してもらうときも、もうそりゃ延々お説教って奴で
すよ。
『あのね、誠に遺憾なんだけどさ。あんたとあたしは一応は夫婦なわけ。だから、連絡くらいくれな
いと、困るの』
『別に締め出して先に寝ても、こっちは困んないんだけど、もし事故とかだったら、世間体が悪いで
しょ? 別にあんたの保護者でもなんでもないんだけどさ、あたしが目を離してる間に事故った、と
か言われたら鬱陶しいわけ』
『解った? 大体、掃除に洗濯に料理までやってあげてんだから、これ以上余計な手間かけさせない
でよね』
 ――うん、俺たち、愛し合って結婚したんだよ? 本当だよ? この辺のやりとりをこれ以上回想
してたら、心が折れそうだから、カンベンしてもらって、なによりこの酔っ払って気持ちいい感じを
苦い思い出で台無しにするのは無粋ってもんだぜ、ベイベ。
 とか言ってお店で同僚と盛り上がってると、携帯が鳴った。
 ったく、誰だよ、ってありゃ、おいらでした。ごめんごめん。
「は〜い! もしもすぃ〜!?」
『……あのね、今何時だと思ってんの?』
「おぉ〜! マイスィートはにぃ〜! ね、カミさん。俺のカミさんから電話」
 横の同僚に自慢すると、凄い顔された。
『……遅くなるったって、限度があると思うんだけど。……今日はもう帰んないの?』
「いやいやいやいや、帰るよハニー。先に寝てておくれでないかい?」
『あんた、合鍵忘れてるでしょ』
「うぇ?」
 言われてからスーツのポケットを探ると、確かにいつも鍵を入れてるところにない。
 まぁ、仕方ないか。こういう日もあるよね。
『……あたし、先に寝るからね。マンガ喫茶でもどこでも、適当に朝まで時間潰してから帰ってきて』
「え〜、そりゃないぜ、はにー。もちょっと、もちょっとで帰るからさぁ。ね? 待っててくれよぉ、
全裸で」
『……』
 無言で電話が切れた。
 あー、また怒らせちまったのかなぁ。
 いや、でもかなみも酷いと思うんだよ? 付き合いだした頃は、かなり可愛かったのにさぁ。手ぇ
繋ぐだけで顔赤くしたりしてさ。そりゃ、口が悪いのは元々だったけど、それでも本当に酷いことは
言わないって言うか、えと、なんつったらいいのかなぁ。要するに、照れ屋さんなんだと思うよ? 
うん。
 でもさ、結婚したら、あんまりこうベタベタしてないっていうか。甘い結婚生活なんてなくてさぁ。
旦那さんは悲しいのよ。解る? 解んない?
 ――みたいな話を隣の同僚にしてたら、店から叩き出された。
 ったく、嫉妬か。男のクセに、女々しい奴らめ。
 いいもんね。俺帰るもん。はにーのとこに帰るもん。そうそう、今何時くらいだろ――
 ――
 ――――

 ――どう見ても終電ブッチです。本当に(ry

 ……やべぇ。
 一気に酔い醒めちゃった。

 今から帰るとなると、タクシーしかない。でもそれやったら、絶対また怒られる。『こんな無駄金使
って!』って。
 でも、マンガ喫茶なんかで一夜明かす気分じゃない。
 つーか、アレじゃん。俺ダメじゃん。
 今週、全然かなみと話してない。いくら今週トラブってたからって、これはマズい。夫婦の語らいっ
てのは大事だろ、やっぱ。
 こういう小さな綻びから、離婚って始まるって聞くし。どうしよ、どうしよ。
 って話をタクシーの運ちゃんにしてたら、家の前で叩き出された。
 なんだよー、俺客だろー?
 などと思いながら、こそこそとドアの前まで移動。
 チャイムを押す……のはやめとこう。鍵が開いてたら幸いなんだけど……って、あれ? 明かり点い
てるのか?
 なんだかな。
 家の明かりってのは、普通安らぎの象徴みたいなもんだと思うけど、今回はなんか怖い。
「……ただいまー……」
 小さい声で言いながら、恐る恐るドアを開ける。
 ……かなみは出てこない。
 単に消し忘れただけか? そう思って、靴を脱ぎ、居間へ入る。
 と。
 ……いた。

「……おかえり」

 激烈に不機嫌な声で、こちらを睨んでいる。
 それだけ見れば、いつものかなみなのだが、様子が変だ。変だというか、おかしい。かなりおかしい。
 まず、床に正座している。この状況、正座させられるなら俺だと思うんだけど、どうだろう。
 そして、なにより変なのは。
「あの……服は……どした?」
「う、うるさいわね! あ、あんたが脱いで待ってろって言ったから、脱いでたんでしょ!!」
 逆ギレされた。
 一気に恥ずかしくなったのか、手で胸と大事なトコを隠すように、その場に屈んでしまう。
 恨めしげにこちらを見上げる視線にたじろぐが、それどころでもない。
 なだからな背中のラインから、張りのある腰のラインに、思わず唾を飲み込んでしまう。
 だが、その前にどのくらいこの格好でいたのだろうか。暖房は効いてるとはいえ、身体にいいとは言
えない。慌てて鞄を放り出すと、着ていたコートをかけてやる。
「そりゃ、その……悪かった。でもほら、あれは俺も酔っててさ」
「知ってるわよ! そんなの!!」
 コートの襟を掻き合わせると、かなみは眉を吊り上げた。
「電話で喋って、そんなことも解んないって思った!?」
「い、いや、そんなことは……」
「今日は土曜日なのに……」
「あぁ、土曜日だ。でも言ったろ? 仕事が……」
「解ってるって言ってんでしょ!」
 いつもの淡々とした説教とは違う、感情を爆発させる訴えに、俺はどうしていか解らず、固まるしかで
きなくなった。
 かなみは続ける。
「仕事なのは解ってんの! 付き合いだってあるんでしょ! そんなの、子供じゃないんだから解ってん
の!」
 ――気付く。
 かなみの目尻に、涙が溢れそうになっていた。
 叫んだ拍子に、それが一筋、こぼれる。
「解ってるけど……仕方ないじゃない! 今週なんて帰ってこなかったり、あたしが寝てから帰ってきたり
でろくに顔も合わせてないし! あたしが居なくても、あんたはバリバリ働けちゃうし! そしたら、あた
しなんか、あんたに食わせてもらってるだけじゃない!」
「……」
「居なくてもいいかも、なんて思ったら……もう、気を引くのなんて、こんなやり方しか……あたし……」
 声は徐々に萎んでいき、ついには消えた。
 代わりに響く嗚咽の中、俺はそっとかなみを抱き寄せる。コートの下の肌が暖かくって柔らかくって、頭
の真ん中に少しだけ残っていた酔いをスポンジのように吸い取ってくれた。
「その……そんなこと、言うなよ」
「……ぐす……」
「かなみが家のことしてくれるから、俺は安心して仕事にいけるわけでさ」
「…………うぅ」
「疲れて帰ってきても、かなみの寝顔で明日も頑張ろうってなるっていうか。やっぱ、コンビニ弁当よりは、
かなみの弁当で昼休みしたいし……」
「…………」
「えっと、だからさ。居なくてもいい、なんて言うなよ、な? 俺には、かなみが必要だぞ?」
 必死に宥めているのだが、その必死さが露骨な分、自分でも据わりが悪い。
 言ってることも、微妙に支離滅裂だし。
 だが、それが幸いしたのか、かなみはもう泣き止んでいた。
 赤い顔で、少し俯き、
「……馬鹿」
といつも調子で呟く。
 俺は安堵のため息をついて、やっと笑みを作れた。
 と、かなみが肩をぶるっと震わせた。
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫なわけないでしょ……さ、寒いわよ……」
「とりあえず、風呂入れ、な?」
 手を貸して立ち上がらせ、風呂へ歩かせようとした。
 だが、かなみは俺の背広の裾を掴んだまま、進もうとしない。
「……どした?」
「……あんたも、お酒臭いから、お風呂に入りなさい。
 そ、その……ガス代、勿体無いから、一緒に入るのを、特別に許可してあげる」
 いつから我が家の風呂は許可制になったんだ。
 そんな疑問もあったが、あんまり今は重要じゃないな、うん。
 なにせ、目の前には奥さんがコート一枚は全裸という凄まじい格好をしているわけだ。
 その上一緒にお風呂。明日は休日。
 答えは一つでしょう。
「い、言っとくけど、それ以外の目的なんかないんだから、へ、変な期待は……っ!」
 言い訳を始めたかなみの口を、無理矢理塞いで抱え上げると、俺はそのまま風呂へ直行した。


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