・ ツンデレが激しく寝坊したようです

『……………………』
「――ぃ…… めい……」
『……ん……』
「めい…… 芽衣!!」
『……何ですか……私は……その……忙しいんれすから……声を掛けないで……』
「芽衣!! 起きろ、芽衣!!」
『……え……?』
「芽衣!! 起きろってば!!」
『――っっっっっっきぃやああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!!』
「おわっ!!」
『ななななな、何なんですかあっっっっ!!!!! 何で何で何で、何でタカシ様がここ
にいるんですかっっっ!!!!!』
「鼓膜が破れるかと思った……」
『質問に答えてくださいっ!! こ……こここここ……ここは私の寝室ですよっ!!
い……いくら私がタカシ様の使用人であってもですね……勝手に人の部屋に入るなんて
不法侵入です!! 覗きです!! 夜這いです!! 痴漢です!!』
「いや。その点は重々よく承知している。たとえ芽衣のパジャマ姿を見るのと引き換えに
しても、勝手に部屋に入るのは良くないとは思ったんだけど……」
『だったら何で入ってくるんですかっ!! つまりは確信犯ってことですか? 分かって
てやるなんて最低ですっ!! 私はタカシ様だけはそんなことしないと信じていたから、
緊急時に備えて鍵も付けずにおいたというのに……見損ないましたっ!!』
「まあ、何だ、その……芽衣。言い訳はしない」
『当たり前ですっ!! ここまで公然とやらかしておいて言い訳も何もありますかっ!!』
「ああ。俺はもう何も言わないから、お前も何も言わずにあれをみろ」
『何を訳の分からない事を言って私を混乱させようとしてるんですかっ!! あれ、なん
て言わずにはっきり仰ってください!!』
「わかった。この目覚まし。時計の文字盤を良く見てみろ」

『まだ3時じゃありませんか。こんな真夜中にどういうおつもりで――』
「じゃあ、壁に掛かってる時計を見てみろ」
『何をそんな遠回しな言い方をしてご自身の罪をごまかそうとしてらっしゃるんですかっ!!
って……あれ? あれ? あれ?』
「どうだ。時間、違ってるだろ?」
『へ……あはははは……壁掛け時計……いつの間にか止まってたんですね? 頂き物をイ
ンテリア代わりに掛けただけですから、余り気にしませんでした……』
「そう見えるか?」
 キョロ……キョロ……バッ!! ペシペシ、ペシペシ!!
「一生懸命目覚ましを叩いてもな。動いてないものは動いてないぞ。諦めろ、芽衣。今の
時間は7時45分。これが現実だ」
『ひっ!! 7時45分って……ちちちちち、遅刻じゃないですかっっっっっ!!!!!』
「まあ、まだギリで間に合わん事も無いが……」
『めっ、目覚ましが止まって…… って、どうして起こしてくれなかったんですかっ!!』
「いや。何度も部屋をノックしたけど、起きる様子がなかったからな。強行突入させて貰った。
つか、起こした主人を責めるメイドってのもさすがにどーかと思うが」
『あっ…… も、申し訳ありません。錯乱して、つい…… と、とにかく、タカシ様は
キッチンで待っていてください。すぐに朝食の支度をしますから』
「朝飯なんて食ってる時間あるか? つか、お前の方こそさっさと着替えないと間に合わないぞ」
『朝食抜きは健康によくありません。それと、私の事なんて気にしないで下さいっ。タカ
シ様は自分の事だけ考えていればいいんです』
「そういう訳にも――って、押すなって」
『グズグズしてないで、早く言う事聞いてください。こんな緊急時にまで手間掛けさせる
と怒りますよっ』
「わかった。わかったから押すな。つーか、お前は着替えなくていいのかよ」
『今はそんな暇ありません。とりあえずタカシ様を送り出すのが最優先ですから』
「それじゃ、お前が遅刻するぞ」
『私の事は構わないで下さいと言ったでしょう? ゴチャゴチャ言わないで、さっさと言
う事聞いて下さい!!』
「全く。まあ、コイツの事だから、言っても聞かないだろうけどなあ……」

『何か仰いましたか?』
「いや。何にも」
『……何をお考えかは知りませんけどね。とにかく、タカシ様は絶対に遅刻させませんか
ら。いいですねっ!!』

『済みません。お待たせしました』
「いや。そんな事より、芽衣もさっさと着替えて来い。つか、お前、メシはいいのか?」
『一食くらい抜いたって死にやしません。タカシ様に心配されるほどの事ではありませんから』
「お前、さっきと言ってる事が違うじゃねーか。健康に良くないんじゃなかったのかよ」
『タカシ様の体調管理はメイドとしては当然の事です。あと、変に体調を崩されると、余
計な仕事も増えますし』
「だからって自分が良いって事にはなんないだろ? 大体、その細い体で朝抜いて午前中
持つのかよ」
『食べないとは言っておりません。あと、私の体をいちいち観察するのも止めて下さい』
「そうは言ってもなあ。どうしても、その……パジャマ姿でキッチンに来られると、目を
引いてしまう訳で。ああ。一応言っておくけど、性的な意味じゃないぞ。いつもメイド服
か学校の制服しか見ないから、珍しいってことだからな」
『と……当然です!! もし、その……タカシ様がそんな目で見られたのだとすれば、私
もその……考え直さないと……っていうか、くだらないこと言ってないで朝ごはん食べて
ください!!(///////)』
「つーか、それだったらさっさと着替えて来たらどうだ? 本気で遅刻するぞ」
『そんな暇はありません。今からタカシ様のお弁当を作らないといけませんから』
「はあ? 今からか? ちょ、ちょっと待てよ。そんなもん作ってたら、絶対間に合わん
ぞ。つか、俺も待ってたら遅刻するし」
『タカシ様は先に行っていてください。あとからお渡しする場所をメールしますから。そ
れと、私の自転車を使ってください。そうすれば間違いなくギリギリ予鈴には間に合うはずです』
「お前はどうするんだよ? そんなことやってたら、1限にすら間に合わんぞ」

『私の事は気にしないで下さい。これは私の失態ですから、タカシ様が気に病む事ではありません』
「別に、弁当くらい無くたって、購買でパンくらい買うからいいってのに」
『ダメですよ。どうせタカシ様のことですから、カレーパンとかコロッケパンとかカロリー
ばっかり高いものをお選びになられるのでしょう? 別府家の長男たるもの、キチンとし
た食生活を心がけないと』
「ふう……やれやれ。芽衣は頑固だからな。どうせ止めても聞かないんだろ?」
『頑固なんかじゃありませんっ!! 私はただ、仕事に忠実なだけですっ!!』
「わ、わかったからそう怒るな。とにかく、お前が俺の食生活を考えてくれるのは嬉しい
が、一つだけ俺の話を聞いてくれないか?」
『時間が無いので、お弁当の準備をしながらでも宜しいですか?』
「それは後だ。とにかく着替えて学校に行く準備をして来い」
『私の話を聞いてなかったんですか? とにかく、お弁当を準備するまでは私は自分の事
は後にしますから――』
「どうせ間に合わないんだから、順番が変わるだけだろ? でな。やっぱ、その、年頃の
女の子が男の前でパジャマ姿でうろうろするのはどうかと思う訳で……」
『――!!(///////) タッ……タカシ様のバカッ!! スケベッ!! さっきは、あんな事
言ってらしたクセに、やっぱりそういう目で見てらしたんですねっ!!』
「見ないようにしても、やっぱその……どうしても男っていうのは、そうなって来るようで……」
『そう言う事でしたら、分かりました。私もタカシ様のイヤらしい視線に晒されるのは真っ平
ゴメンですから!!』
 パタパタパタパタ……バタンッ!!
『ハア……ハアッ…… タカシ様のバカ……私だって、恥ずかしかったのを我慢していた
のに、あんな事仰られたらもう……我慢出来なくなっちゃうじゃないですか……(///////) と、
考えるのは後回しにして、とにかく着替えないと』

「フウ…… 何とか着替えに行ってくれたか。ああ言わないとテコでも動かないからな。
上手く行って良かったけど、絶対スケベ野郎だと思われただろうな。まあ、仕方ないか……」

『タカシ様。これで宜しいですか?』
「よし。ちゃんと制服に着替えたな」
『タカシ様の目の毒になられたようなのでは致し方ありませんから。で、タカシ様。さっ
さとお出にならないと、本当に間に合わなくなりますよ』
「分かってる。それじゃあ行くか」
 ギュッ!!
『えっ!? ちょ、ちょちょちょ……ちょっと待って下さい!! ななななな、何で私の
手を握――』
「よし。ほら、学校行くぞ」
『ちょ、ちょっと待って下さい!! 私はまだ仕事が……って、ひ……引っ張らないでく
ださいってば!!(///////)』
「こうでもしないと、テコでも動きそうに無いからな。全く、俺が弁当はいいって言って
るのに……って、コラ!! 抵抗すんなって!!」
『冗談じゃ……あ……ありません!! いくら……タカシ様が……ご主人様とはいえ、私
の仕事には……口出しさせません!!』
「ったく、筋金入りの頑固者だな、お前は」
『頑固じゃありません!! 職務に忠実と言ってください!! それに、タカシ様だって、
一度言い出したら、人の言う事なんか聞かないくせに、私にばかり言わないで下さい!!』
「ああ。俺は頑固者だからな。そういう訳で、ちょっと強硬手段を取らせてもらうぜ」
『きょ……強硬手段って……何を……? ちっ……近寄らないで下さいっ!!』
 ガシッ!!
「よいしょっと」
 グッ!!
『ヒッ……!! きゃああっ!! きゃあ!!きゃあ!!きゃあっ!! ななななな……
何するんですかっ!! ひっ、人の事、いきなり抱き上げて……お、お、下ろしてくださいってば!!(//////////)』
「お前が素直に学校に行くって約束すれば下ろしてやるよ」
『ズルイですっ!! ここ、こんな事と引き換えなんて……ち、力づくなんて卑怯です!!』
「何と罵られようが構わん。このままだと、自転車置き場までこのまま抱いて行くことになるがいいか?」

『やめて下さいっ!! お願いですから、このまま外へ出るなんて事はしないでください!!』
「じゃあ、大人しく付いて来るって約束するな?」
『ぐっ…… わ、分かりました……や……約束しますから……だから、その……下ろしてください……』
「よし。じゃあ、ゆっくり下ろすぞ…… ほら」
『うう…… こ、こんなやり方はズルイです。卑怯です。反則ですっ!!』
「苦情は帰ってからゆっくり聞く。今はとにかく、学校行くぞ。ほら」
 グイッ!!
『きゃあっ!! ちょっと!! 手も離してくださいってば!!(////////)』
「それはダメ。途中で逃げるかも知れないし。とにかく、このまま連れて行くからな」
『待って下さいっ!! その……逃げたりなんて……し……しませんから……(///////)』
「芽衣は嫌なのか? 俺と手を繋ぐ事が」
『へっ!? い……いやそのあの……あうあうあう……(////////)』
「隙ありっ♪」
『わっ!! たっ……ひ、酷いじゃありませんか!! 変な質問を振っておいて、その……
答えようとしているうちに引っ張るなんて……』
「鍵、閉めたか」
『あ、はい。じゃなくて!! 私の文句も少しは聞いてください!!』
「聞いてるよ。その前に俺の質問の方にも答えてもらわなきゃな」
『だっ……だから……それは……(///////) 答えにくい質問しないで下さい!! タカシ様
相手に、その……答えられる訳、ないじゃありませんか……』
「どう取っていいのか微妙な答えだな。まあいいか。うん。変な質問して悪かった」
『(タカシ様に手を握られて……嫌な訳ないじゃありませんか…… むしろ、嬉しくて嬉し
くて……タカシ様の手の感触が……温もりが、じかに感じられて…… だ、大丈夫かな……?
私の体……こんなにも熱くなってること……タカシ様にバレたりしたら……ど、どうしよ
う……(/////////))』カアアッ……

「よし。じゃあ、芽衣。後ろに乗って」
『自転車はタカシ様がお一人でお使いください。私は走っていきますから』
「却下。芽衣の足じゃ間に合いっこないだろ? それじゃあ何の為に無理矢理連れ出した
か分からなくなるじゃん」
『だから、最初からそうする必要なんてなかったんです!! お一人でさっさと出かけて
いらっしゃれば、もっと余裕がありましたものを……』
「そういう訳にはいかないよ。俺のせいで芽衣を遅刻させたりは出来ない」
『タカシ様のせいじゃありません。私の不注意のせいなのですから、タカシ様が気に病む
必要なんてないんです』
「それでも…… 俺の為にいろいろと世話してくれて、それで芽衣が先生に呼び出し食らって
怒られたり、罰を食らったりするのは……そう思うだけでも耐えられないから……」
『……………………』
「どうした? 芽衣」
『……ズルイです、タカシ様は……そんなこと言われたら……こっ……断れなくなるじゃ
ないですか……』
「だから、最初から断る必要なんて無いって。ほら、乗って」
『けど、私達が二人乗りしてるところを誰かに見られたりしたら…… それで、私達の仲
が勘違いされたり、もしくは万が一にもバレたりしたら……』
「学校の近くまで来たら、俺が降りる。俺の足なら間に合うかもしれないし、まあ、俺は
別府家の人間だからな。遅刻したところで、大したお咎めも受けないだろうし」
『ダメです!! タカシ様は、その……』
「言う事聞かないと、また抱き上げて無理矢理乗せるけど、それでもいいか?」
『うっ…… ズ、ズルイです……そんなの、い、嫌に決まって……』
「なら、大人しく乗る。いいね」
『…………はい』
「よし。それじゃあ俺も……よっと。じゃあ、しっかりと俺の体に掴まって。めちゃくちゃ飛ばすからな」
『しっかり掴まっていいんですね?』
「ああ。振り落とされないように――」
『えいっ!!』

「グエッ!! ちょ、ちょっと芽衣、タンマ!! 幾らなんでもやり過ぎだって!! 
ゴホッ!! 腹が苦し……」
『さっきから、手を握ったり、抱き上げたりされたんで、その……お返しです!!(///////)』
「分かった。悪かったから、ちゃんと掴まってくれ。ふう…… じゃあ、行くぞ」
『は、はい……』
「そりゃああああああああっっっっっっっ!!!!!!!」
『きゃっ……きゃああああああっっっっっ!!!! タタタタタ、タカシ様っ!! と、
飛ばしすぎですっ!!』
「言ったろ? 飛ばすって。振り落とされんなよっ!!」
『きゃああああっっっっ!!』

『(タカシ様……私のような使用人の事を……気を使って頂いて、有難うございます…… 
タカシ様の背中……広くて、暖かくて…… 今だけは、その……ほんの少しだけ……甘え
させてください。エヘヘ……(/////////////))』


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