・O K U S A M A

なぁみんな……結婚は人生の墓場、って言うよな?
俺はちょうどそんな感じだ、なんせ俺の与り知らぬ所で唐突にそれが決まった。
まだ若いのにウチの親は何を焦ったんだろうな? いつの間にか勝手に籍まで入れやがって。
相手は幼馴染の椎水……いや、もう別府かなみか。
腐れ縁の幼馴染と成り行きで結婚、今は子供まで出来て、その二人の為に会社に通う毎日。
ほら? 絵に描いた様な人生の墓場だろ?
でもさ、墓場の先には天国と地獄があるようで……どうも俺は前者を引き当てたらしい。

娘「ぱぱー、おかえりー」
タ「おう、ただいま。いい子でお留守番してたか?」
娘「うんっ、してたよー」
タ「そっかー、偉い偉い」
娘「ぱぱー、ごほうびになでなでしてー」
タ「おう、いいぞ、ほら」
娘「……えへへ」
この通り、可愛い一人娘はとても素直に育っている。外見も母親に似て有望で、将来が楽しみだ。
で、その母親はというと……。

か「……ちょっと、こんな時間に娘相手に何デレデレしてんの、この変態は……」
少々可愛げが足りないようだ……。
タ「あのなぁ、今日は帰りが早くなるってメールしただろ?」
か「あんたからのメールなんかいちいち見てないわよ、こっちは忙しいんだから!」
タ「で……その、飯は……?」
か「ふんっ、あんたなんかこれで十分でしょ……!」
かなみが俺に投げつけたのはカップ麺……嗚呼……愛のない食事の代名詞かよ
久しぶりに家で夕飯が食える時間に帰ってきたってのに……。
言いたいことを言うとかなみはさっさと奥に引っ込んでいってしまった。

タ「はぁ……虚しい」
俺は寂しくカップ麺を齧り(お湯を入れる気力もなかった)部屋に戻ろうとすると……。

か「ちょ……ちょっと待ちなさいよ」
タ「んー……? なんだよ」
か「そ……その……あ、あんたがあまりに惨めだから……用意してあげたわよ……」
タ「え……?」

食卓に並べられていたのは眩いばかりの料理・料理・料理!
これ、とてもじゃないがさっきの時間だけでぱぱっと作れる代物じゃないぞ。
タ「お前……これ」
か「か、勘違いしないでよ……!? 余り物で簡単に作っただけなんだから!」
そんなこと言ったって、これだけの量が余るってウチは飲食店でも経営してるのか?
娘「わー、きょうのばんごはん、すごくごうかだねー」
タ「あれ? 二人ともまだ食べてなかったの?」
娘「うん、だってきょうはぱぱがはやくかえってくるから、ままがいっしょにたべたいって」
か「い……言ってない、言ってないっ! こらあんた何ニヤニヤしてんのよ……!」
タ「あー……いや、本当だったら嬉しいなと思って」
か「な……っ、バ、バカなこと言ってないでさっさと食べなさい……っ!」
タ「ああ、いただきます」
娘「いただきまーすっ」
そんなわけで久しぶりの家族そろっての夕食、
途中、かなみが箸を持つ手をウズウズさせながら、俺の口元を見ている気がしたが気のせいだろうか。

か「そ……それで……その……味とかどうなのよ」
タ「え? そんなのめちゃくちゃうまいに決まってるじゃん」
そう、お世辞じゃなくかなみの料理はめちゃくちゃウマい。
か「…………そ……そう」
娘「よかったねー、ままー?」
か「……う、うん……じゃなくてっ……! 何であたしに言うのよ」
途端に赤面するかなみ。
訂正しよう、うちの妻は少々可愛げがありすぎるようだ。

娘「ままねー、ぱぱからめーるがきたとき、とーってもうれしそうだったよ」
か「ちょちょちょちょちょっと! う、嘘だからね……! 全部嘘なんだから……!」
かなみは相当テンパっているのか、ブンブン振る首が縦方向だ。
タ「ははは、なんにせよこんなおいしい料理が食べられて嬉しいよ」
か「あぅ……そ…そう……じゃあ……その……あの……」
急にもじもじしだすかなみ、やばい、何度見てもこの表情は可愛い。
か「……あ…あたしにも……その……ごほうび…とか」
タ「え? なんか最後の方よく聞き取れなかったんだけど?」
か「な、なんでもないわよ……っ! もう、黙って食べなさい!」
娘「ままはね、きっとごほうびになでなでしてほしいんだよー」
ええっ!? いや、さすがにそれは無いだろう。
『誰がそんな子供っぽいことで喜ぶかぁっ!』って怒り出しそうだ。

か「……………………(////)」
って、なんか否定しないしっ! それどころか首すくめて赤面してるしっ!
これは……久しぶりのかなみ素直モードですかね……?
タ「えっと……これでいいの?(なでなで)」
か「……ぁ…っ。べ…べつにこんなの嬉しくなんか……えへへぇ……(////)」
だからその表情は反則ですってかなみさん、娘が見てる前なのに我慢が効かなくなっちゃうじゃないか……!

…………ってな訳でその日は娘が寝静まった後に燃え上がりました。
なんか2人目出来ちゃいそうだな……。

か「嫌よ、2人目なんて」
タ「なんでだよぉ、にぎやかな家庭っていいじゃん。だから、な、もう一回!」
か「いやよぉ……だって……その…ますますあたしに構ってくれなく……なっちゃぅもん」
やべぇ、なんか今日のかなみは可愛すぎるぞ。
タ「だーいじょうぶだって、俺かなみのこと愛してるし……」
か「だってぇ……あの子にばっかりなでなでするし……ずるぃ……」
タ「ちょ……自分の娘に嫉妬するなって」
か「あたしだって……もっとタカシとべたべたしたいんだもん……いっつも帰るの遅いし……」
か「今日は早く帰ってきてくれて……ほんとに嬉しかったんだからぁ……」
うおぉ……よし、決めた。俺、明日から上司の誘いも全部断って帰るぞ。

タ「よーし、明日からのやる気も沸いたし、寝るかー!」
か「え……? もう寝るの?」
タ「ん? まだ何かある?」 聞き返すと、かなみは真っ赤に染まった顔の前で両手の人差し指を突き合わせながら
か「……ぇっと……その……二人目はやだけど……もう一回は……ぃぃょ……」
と、再び俺の理性を破壊するのであった……。


――別府家は今日も平和です。





さて、働く男の日曜日、といえば家族デーだろう。
まぁ正直一日中ごろごろして疲れを癒したい日でもあるのだが……我が別府家ではそれは不可能だ。
なにしろうちの奥様が休ませてくれない、かなみはかなりこの日を楽しみにしているようで、
カレンダーの日曜日には全て◎でチェックがついている。(正直それって意味ないと思うんだが)
そんな訳で、毎週日曜は出来るかぎり家族と過ごすようにしているのだが……。

タ「だからマジごめんって、しょうがなかったんだよ〜」
か「……………………ふんっ」
今日のかなみはご立腹。何故なら今週の日曜日……つまり今日、俺は急な仕事が入って出社する事になってしまったからだ。
家族でおでかけする約束をドタキャンしてしまう事になって、かなみが拗ねてしまった。
タ「ほら、この埋め合わせはするからさ、機嫌直してくれよ〜」
か「はぁ? なに言ってんの? 機嫌悪くなんかないわよ、べ・つ・に……!」
かなみ曰く機嫌が悪くないらしい目で俺は睨まれる……いやマジで胃とか心臓に悪いから勘弁してくれ。

タ「ごめんって〜、ほんとごめん、楽しみにしていてくれたのに……」
か「は…はぁ……っ!? ななな何言ってるの……っ! 馬鹿じゃないの!?」
タ「え? 違った……?」
か「ああああたしは、ただ娘の教育の為にはちゃんと休日一緒にいるべきとかそういうことを言ってるんであって別にアンタと一緒にいたいだなんて全然そんなこと……そりゃちょっとは思って…(ごにょごにょ)」
タ「か……かなみ?」
か「ああもう! うるさいうるさいうるさい……っ! あんたなんか嫌いっ!」
うわぁ……怒りの余り幼児化してしまったか……こうなるとかなみは頑ななんだよなぁ。
タ「あのさ……ごめんそろそろ飯食わないと時間が……」
か「ふん……馬鹿……」
そういってかなみが顎でさした先には、既に朝食とお弁当が準備されていた。
こんな朝早くから……本当に楽しみにしていてくれたんだな……。
かなみに申し訳ない気持ちになりつつも、朝食を食べ終えた俺は出社した。

タ「ただいま〜っ!」
朝とはうってかわって上機嫌で帰宅する俺、なにしろ今日はいいニュースがある。
娘「ぱぱ、おかえりー」
か「……………………」
今朝に引き続き機嫌の悪いかなみに睨まれるが気にしない。
タ「喜べかなみ、今日の代休で明日が休みになったんだよ!」
か「……え、ほんと? ……って何であたしが喜ばなくちゃいけないのよ! この子の為なんだから……っ」
かなみは否定するが、表情がとても嬉しそうなのでよしとしよう。
娘「えー、わたしあしたはおともだちとあそびにいくよー」
タ「ありゃ……マジで? どうしようか……それじゃ延期する?」
か「え……? そ…そうよね……別に行く理由もないし……」
一瞬でしぼんでしまうかなみ、だがここで娘から思わぬ一言が……
娘「だから、あしたはぱぱとままふたりででーとしてきてね」
タ「で…………」
か「でででででーーーとっ!?」

か「なななななななななに言ってるのよ! そそそそんなのする訳ないでしょ……!」
娘「えー……?」
か「ちょ…ちょっとそこ! なに真に受けてるのよ!」
タ「ま、まぁデートはともかく、かなみさえ良かったら買い物でも行くか? 久しぶりに二人で」
か「べ……別に今更あんたとなんか行きたくないわよ……そんなんで機嫌取れると思ったら大間違いなんだから!」
か「……でも買わなきゃいけないものとかあるし……ぶつぶつ……」
何かを呟きながらキッチンに引っ込んでしまった。

「〜〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜♪」
その後、キッチンから嬉しそうな鼻歌が聞こえてきたのは気のせいではないだろう。
娘「まま、うれしそうだねー」
タ「ああ、何だかんだで期待してくれてるみたいだな」
か「ちょっと……! 聞こえたわよ! 期待なんかしてないって言ってるでしょ……っ!」
夕食は大変おいしゅうございました。

そして翌朝……。
か「……何よ。なんか言いたいことでもあるの?」
タ「なぁ……やっぱり期待……」
か「してないって言ってるでしょ……! 馬鹿なこと言ってないでさっさと行くわよ!」
そんなこと言ったってなぁ……朝から2時間も部屋に篭って、これ以上ないほど気合入れておしゃれしてるし、
昨日もベッドの中でひたすらにやけてたし……。
か「何してんの……! 置いてくわよ!」
スキップで駆け出す姿のどこをみたら期待してなかったと思えるんだろう。

タ「なぁ……これってやっぱりデートだよなぁ……」
か「だから違うって言ってるでしょ……あたしは嫌々付き合ってやってるんだから……」
タ「じゃあさ、なんでそんな気合入れておしゃれしてきてるの?」
か「こ、このくらい普通よ……あんたが適当すぎるだけでしょ」
タ「じゃあさ、さっきからなんで恋人同士が行く店ばっかり回ってるの?」
か「そ…そりゃ平日はこういう店のほうが空いてるからよ……」
タ「じゃあさ、なんでさっきから俺の手握って離そうとしないわけ?」
か「しょ……しょうがないでしょ、仲良く見せないと世間体とかあるし……その…夫婦……なんだから」
『夫婦』と口にした瞬間、一気に紅潮するかなみはとても愛らしい。

……っていうか、結婚して数年経った夫婦って普通仲良く手を繋いで買い物に行くだろうか。
ま、いいか。他所は他所、うちはうちだ。
タ「じゃ、もっと仲のいいとこ見せつけてやらないとな、かなみ」
か「ちょ、ちょっと! 調子に乗らないでよ……ひゃっ! 腰に手を回すなぁ……っ! もう……」
なんだかんだ言って抵抗しないどころかちょっと嬉しそうなかなみ。
他所にはきっとこんな可愛らしい奥さんはいないに違いない、ざまぁ見ろ。

昼食をとったあとは洋服店に入り、かなみの服を選んでいる。
正直かなみは何を着ていても魅力的なんだが、真面目に選ばないと怒られるので一つ一つ吟味していく。
タ「なぁ、これなんかいいんじゃね?」
か「ん、どれどれ? ……ってこれミニスカートじゃない! こ…こんなの穿ける訳ないでしょ!」
タ「そっかなぁ……可愛くていいと思うけど……」
か「ば……馬鹿じゃないの!(い、いまさらミニだなんて恥ずかしくて見せられるわけないじゃない……っ!)」
タ「んー、そうかな……似合うと思ったんだけど……」
か「…………(で…でもタカシが喜んでくれるなら……その…いいかな……)」
タ「そうだなぁ、他に何かあるかな……」
か「…………(でも……こんなのがいいだなんて……やっぱりタカシはえっちよね……別に悪い気はしないけど……)」
タ「なぁ、かなみ。これなんてどう?」
か「…………(もしかしてこれ穿いてたら襲われちゃったりして……きゃっ…そんな……いきなり……)」
タ「おい、かなみ……聞いてる?」
か「…………( 妄想中 )」
タ「もしもーし、かなみさん? 大丈夫?」
か「…………はっ! あああああんたねぇ……っ! む……娘の見てる前でななななんてことするのよ……っ!」
かなみはいきなり顔を上げると、俺を睨みつける……ねぇ、俺なんかしましたか?
ってかなみ、さっきのミニスカートなんか持ってどこ行くんだ……? え……? 買うの?

店員「こちら1点で……円になります」
タ「あ、支払いは俺が……」
店員「あら、隣の恋人さんへのプレゼントですか?」
恋人、という言葉にかなみがピクッと反応する。
かなみは可愛い容姿で、俺は割と童顔なので、ふたりとも年齢以上に若く見られることは結構多い。実際まだ若いけどな。
タ「いえ、恋人じゃなくて妻です」
別に訂正する必要もないんだが、何となく。
か「……っ! なななな何言ってんのこんなとこで……! つ…妻だなんて…も、もう、妻だなんてぇ……っ!(////)」
タ「いたっ……ちょ…バシバシ叩くなって……!」
おいおい……もう結婚して数年経つんだからいい加減慣れてくれよ。
か「べ…別にね……あんたに妻なんて言われてもちっとも嬉しくないんだからぁ…………やだもう…えへへぇ……」
タ「わかったから落ち着け、叩くのやめれ!」
いい加減マジで痛いからさ…………周囲の視線がな。
こうやってこの界隈でも馬鹿ップル認定されていくんだろうなぁ。
近所じゃ今では二人で歩いてるだけで妙に微笑ましい視線で見られるし……。

か「もう……今日はタカシのせいで大恥かいたじゃない……」
タ「どの辺が俺のせいなんだか……」
家に帰るなり愚痴るかなみ、つーかそんな嬉しそうな顔で言われても説得力ありません。
娘「おかえりー、ままたのしかったー?」
か「ぜ……全然っ! 楽しい訳ないじゃない! ただの買い物だし……っ!」
ただの買い物にしては、すげぇ嬉々として色々と連れ回されたんですが……。
まぁいいか、俺も楽しかったし。いい休日だったよ、今日は。

その夜、かなみの部屋の前を通ると……。
か「……やっぱりちょっと恥ずかしいわね……でも…タカシが見たいなら……その……」
鏡の前で今日買ったミニを穿いてなにやら顔を赤くしているかなみ。
か「ふふ……はやく襲いに来ないかなぁ……なんてね…えへへ……」
そんな声が聞こえた気がしたのは気のせいだろうか。

次の日……。

か「ちょ……ちょっとあんたに話があるんだけど……」
タ「ん? なになに……?」
か「えっと……その……あぅぅぅ……」
なんだろう、妙にもじもじしているが。
娘「ままー、がんばれー」
か「そそそそその、これ……べ、別にたいしたもんじゃないからさっさと受け取りなさい!!」
タ「え……?」
丁寧にラッピングされた何かを俺に手渡すかなみは、セリフと表情が全く合っていない。
この表情にセリフを当てるなら『好きです……これ受け取ってください!!』辺りが妥当だろう。

まぁそんな訳で、かなみが逃げるように部屋を出て行ったあと、ラッピングの中身を確認してみる。
中から出てきたのは、新品の綺麗なワイシャツと、メッセージカードだった。

――タカシへ
 昨日は無理矢理つきあわせちゃってごめんね。面と向かって言えなかったけど、とっても嬉しかったです。
 スカート、プレゼントしてくれてありがとう。見たいときは言ってね、ちょっと恥ずかしいけど……
 お返しにこれを送ります。普段口に出せない『ありがとう』と『大好き』の気持ちを込めて。
 これを着てお仕事頑張ってください、でも仕事中もちょっとは私のことを考えてくれると嬉しいです――

うわぁ……なんかマジにすげぇ嬉しいんですけど……。
よーし、これ着て明日からも頑張るぞ、っと。
あれ……? ところで俺の古い方のワイシャツはどこ行った……?

か「えへへ……タカシの匂いだぁ……しあわせ……」
はい、犯人発見。俺が入ってきているのにも気付かないほどトリップしちゃってるし。
全く……俺のワイシャツ一枚なんて際どい格好をされたら、俺だって我慢が効かなくなるぞ。
タ「あのなぁ……お前、そんな格好して、誘ってるのか……?」
か「え……あああああアンタいつの間に、こ、これはその……ぁぅぁぅ……」
瞬時に真っ赤になって言い訳を考えるかなみだが、そんな格好では誤魔化せるはずもない。
ああ…くそう可愛いなあ……もう食べちゃうか。娘も寝てることだし……
か「え……? え……? 食べちゃうって……その……ええぇぇぇぇっ」
あ、声に出てたか。いいや別に気にしない。そもそもかなみが可愛すぎるのが悪い。
か「か…かわいいだなんて……その……ひゃっ……なにするのよぉ……」

(検閲されました……我が国の制度に言ってください)

か「も……もう……強引なんだから……」
タ「嫌だった?」
か「べ…別にいやじゃないけど……いつもより……その……激しかったから…………タカシにされて嫌な事なんてないよ(小声)」
タ「だってさ……あんなメッセージ送られたら、そりゃ燃えちまうさ」
か「…………そ…そう……」
内容を思い出したのか、恥ずかしがって目を逸らすかなみ。
タ「あー、でも本人の口からもその言葉を聞きたいなぁ」
か「い…いやよ……」
タ「ええ? なんで。いいじゃん、俺聞きたいなぁ」
か「い……いやよぉ……だって、言ったらきっと歯止めが効かなくなっちゃうから……」

タ「え……?」
か「タカシのこと好きって気持ちが全部噴き出しちゃうもん……言いたかった事全部いっちゃうもん……」
タ「……いいじゃん、それ、聞かせてよ」
か「……やだ……だって聞いたらタカシ絶対ひくもん……」
タ「ひかないって、俺だってかなみのこと大好きだし」
か「……ひくわよぉ……あたしの心の中、タカシのことが好きすぎておかしくなっちゃってるもん」
タ「え……」
か「何年一緒にいたって全然倦怠期なんて来ないし……それどころかどんどん好きになっちゃってるし……」
タ「……かなみ」
か「一日中タカシの事考えてない時間なんてないし……タカシが構ってくれるならどんなことされても嬉しいし……」
タ「……………………」
か「ほ……ほら、ひくでしょ……これなんて思ってることのほんの一部なんだから……」
タ「ごめん……かなみ……」
か「や……やっぱりひくじゃない……話さなきゃよかった……」
タ「違う、それ聞いてますますかなみのこと愛しくなっちゃった……あとムスコが起きちゃった」
か「……ば…ばかぁ……」
嬉し恥ずかしすぎてつい下ネタが出ちゃう俺。でも本気でムスコがかつてないほど元気なんですけど……。
タ「愛してるよ……かなみ。可愛すぎてまた我慢できそうになくなっちゃったんだけど……いいかな……?」
か「……ばか……言ったでしょ……タカシにされて嫌な事なんてないもん……(////)」


――別府家は今日も平和です。



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