その1

俺「みことさん!…俺と勝負してください!」
みこと『またか。いい加減にしつこいぞ。…だが挑まれた勝負は受けるのが礼儀だからな。……来い!!』
俺「うりゃああああああっ!」
みこと『…またそれか。ワンパターンだぞ。(ばきっ!)』
俺「うわあああああっ!!(きらーん)」
みこと『ふむ。随分飛んだな。…新記録か。』
俺「う…うぅ……つ、次は負けません!…そして俺の…彼女に……(がく)」
みこと『わかったわかった。…まあお前には無理だろうがな。』
俺「そんなこと…やってみなきゃわかんないじゃないっすか…」
みこと『いや無理だな。もっと修行せねば、私に勝つことなぞできんぞ?』
俺「うぅ……」
みこと『ま、根性無しのお前には無理だろうがな。(すたすた)』
俺「くそー!ぜってー彼女にしちゃるー!!」
山田「よくやるねぇ、お前も。」
俺「うるへー。なんとでもいえ。」
山田「しっかし坂本先輩もすげぇよなぁ…私に勝ったら彼女になってやる!…なんて。いつの時代のマンガだよ。」
俺「みことさんの家の方針なんだと。…あの爺さんなら、わからんでもないがな…」
山田「古流武術の道場だっけ?先輩んち。」
俺「ああ、うん。」
山田「まあ、そのおかげで先輩にちょっかい出す奴もいなくなってるし、いいんじゃね?…いま挑戦してるのお前だけだろ?」
俺「そうだな…前はいっぱいいたみたいだけどな…」
山田「俺が見るに、先輩だってまんざらじゃないみたいだぜ。お前のこと。」
俺「そうかなぁ…」
山田「そうだよ。だから頑張って早く勝ってやれよ。…まってるんだからよ、みこと先輩は。」
俺「言われんでも。…そんじゃ、俺道場行くわ。」
山田「おーう、がんばれよー」

みこと『ふふ…その意気だぞ。がんばってくれよ、タカシ……』

〜翌日〜
俺「さってと。今日はどんなトレーニングを…」
山田「おい、大変だぞ!」
俺「なんだよ。どうした?」
山田「坂本先輩に挑戦者だ!」
俺「へぇ、珍しい奴もいるもんだな。」
山田「何でも、今度転校してきた奴らしい。」
俺「ふ〜ん……どうせコテンパンにされるんだろ?」
山田「一応見に行っとけよ。旗から見たほうがみことさんの癖を見分けられるかもしれんだろ?」
俺「ま…そうだな。行ってみっか。」

〜道場〜
みこと『ふむ…見ない顔だな。』
???「ははは、最近転校してきたんですよ。…荒巻といいます。以後お見知りおきを。」
みこと『荒巻か。…で、勝負か?』
荒巻「ええ。…あなたに勝ったら恋人になってくれると聞きましたので。」
みこと『耳が早いな。』
荒巻「自然と耳に入りましてね。…貴女は美しい…是非とも恋人にしたい、と思いました。」
みこと『まぁいい。ではかかってこい。』
荒巻「いえ、かまいません。貴女からどうぞ。」
みこと『…随分自信があるようだな。…後悔するなよ!!(びゅあっ!)』

俺「はぁはぁ…お、もう始まって………!?」
山田「なんだよ、どうし……な、あ、あれは…!!?」

みこと『う…うぅ…ぐ……』
荒巻「ふむ…豪語するわりには…ああ、これはすいません、女性ですからね。仕方がありませんね。」
みこと『ぐ…う……うぅ…』
俺「みことさん!!」
みこと『……うぅ……』
荒巻「おや、部外者が…まぁいい。みろ!坂本みことは俺に敗北した!…つまり、俺の女になったのだ!!」
みこと『く……!!ま、まだ…負けていない…!』
荒巻「おやおや……気が強いことで…嫌いじゃないですよ、そういうの。(ごっ!)」
みこと『あ!!?…ぐあっ!?…げほっ…げほげほっ!!』
荒巻「…ああ、大丈夫ですか?…しかし、俺の女になったんですから、服従してもらわないと…ね?(ごっ!)」
みこと『あぐっ!?…ぐあああっ!?』
俺「やめろ!もう勝負はついてる!」
みこと『うぅ…た、タカシ……』
荒巻「恋人同士の間に部外者が割り込むのは感心しないな。」
俺「何が恋人だ!痛めつけてるだけじゃないか!!」
荒巻「ふん。女は強い男に服従していればいい。…絶対的な服従には、力を見せ付けるのが手っ取り早いからな。」
俺「ふざけるな!…お前みてーな奴にみことさんを渡してたまっかよ!!(ごぉっ!)」
みこと『…やめろタカシ……お前では……!!』
荒巻「やれやれ……(す…)」
俺「(すかっ)…!?…へ、へへ…逃げ足は速いみてーじゃ…」
荒巻「横恋慕は見苦しいぞ。…(ごぉっ!)」
みこと『タカシッ!!』
俺「ごへぁっ!?」
荒巻「弱い奴が俺に歯向かうな。……ここで殺してやろうか?」
俺「う…うぅ……く、くそ……」
荒巻「ふむ、あばらを折ってやったつもりだが、まだ立てるか。では、もう一発…(ごすっ)」
俺「あぐ……!!ぐああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
荒巻「糞が…(ごっごすっ!げしっ!ばきっ!どかっ!)」
俺「ぐあっ!あああああっ!ああ…ぐ……ぅぅ……」
みこと『やめろ…やめて……もう、やめてぇぇぇぇぇぇっ!!』
荒巻「……(ぴた)」
俺「う……うぅ……み、みこと……」
みこと『わかった…恋人になる…なるから…もう…タカシを……殴らないでくれ……頼む……』
荒巻「ふん……口の聞き方がなっていないな。(ごすっ)」
俺「うあああああっ!!」
みこと『わかりました……恋人になりますから……もう……ゆるしてあげてください………』
荒巻「ふはははははは!そうだ!それでいい。…喜べ、負け犬。今日は許してやろう。みことに免じてなぁっ!!ははははははっ!!」
俺「う……うぅ………」
荒巻「それでは行こうか、みこと!クズは放っておいてなぁ!ふはははははははは!!」
みこと『…はい………』
俺「…み、みことさん……」
みこと『すまない…タカシ………』

山田「おい、大丈夫かタカシ!…すぐ保健室はこんでやっからな…」
俺「う…うぅ…!!」
山田「滅茶苦茶だぜアイツ……お前どころかみことさんまで手も脚も出ねえなんて…」
俺「くそぉ…くそぉぉっ!!ちくしょおおおおおおおおっ!!……………」
山田「お、おいタカシ!タカシ!!…………」

〜保健室〜
かなみ『あ〜らら、随分派手にやられたわね。』
山田「そうなんですよ。…めっちゃくちゃ強いですって、あの荒巻とか言うの…」
かなみ『ふぅん。そうなの。』
俺「う、うぅ…」
かなみ『…あら、気がついた?』
俺「かなみ先生…!?こ、ここは……」
かなみ『保健室よ。山田君が運んできてくれたのよ。感謝しなさい。』
俺「俺は…みことさん!」
かなみ『ダメよ。今は安静にしてないと。』
俺「でも…でも、みことさんが…!あの荒巻とか言う野郎に……!」
かなみ『しょうがないじゃないの。負けたんでしょう?』
俺「う…でも…俺は……」
かなみ『未練たらたらなのはカッコ悪いわよ〜?いいから、もう少し寝ときなさい。』
俺「カッコ悪くてもいい!ダメなんだ、アイツは…アイツは…!みことさんを泣かしたんだ!!」
かなみ『あらあら、熱いわねぇ。でも無駄でしょ?勝てなかったんだから。』
俺「でも…それでも俺は!」
かなみ『……本気みたいね。』
俺「本気です!…だから、行かせてください。…荒巻の野郎を倒さなきゃ……みことさんが…!!」
かなみ『わかったわ。…でも今はダメです。』
俺「ど、どうして!?」
かなみ『今行っても勝てるわけないでしょう?骨とかは大丈夫だけど、体中ボロボロよ?』
俺「関係ない…!この命捨ててでも…俺は…!」
かなみ『だ〜か〜ら〜…馬鹿ねぇ。どうせなら勝たなきゃ意味無いでしょう?』
俺「え……?」
かなみ『明日から私が稽古つけてあげるわ。…だから今日は休みなさい。』
俺「かなみ先生が…?」
かなみ『こう見えても坂本道場の師範よ、私は。』
俺「ま、マジで……!?」
かなみ『マジです。…君さえ本気なら、1ヶ月で荒巻に勝てるようにしてやるわ。……どう?』
俺「一ヶ月も…まってられっか…!」
かなみ『…なら勝手になさい。…まあ、絶対みことは手に入らないでしょうけど。』
俺「ぐ……」
かなみ『それでいいなら勝手にすれば?』
俺「糞………かなみ先生……俺…みことさんを守りたいです…!!」
かなみ『……なら、今は我慢なさい。……勝負は一ヵ月後よ。』
俺「はい…!!」
かなみ『安心して。荒巻が余計な事しないように手は打つから。』
俺「お願いします…!!」


こうして、打倒荒巻を目指して俺の修行の日々が始まったのだった。
待ってろよ、みことさん……!!


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