その10 魔法少女シャイリーちな

キーンコーンカーンコーン
「ちなみ、一緒に帰ろうぜ?」
『ふん・・・誰が君なんかと・・・それに・・・私・・・委員会の仕事あるし』
「なんだ、そうなのか・・・じゃぁ、しょうがないな」
『あ、あの・・・』
「ん?」
『な、何でもない・・・さっさと帰れ・・・』
「わ、分かったよ。じゃぁ、また明日な?」
『ふん・・・(はぁ・・・待っててって・・・言えなかった・・・一緒に帰りたかったのに・・・)』

『それじゃ、お疲れ様でした〜』
「お疲れっした〜」
『はぁ・・・もうこんな時間。暗くて嫌だけど・・・近道・・・しようっと』
トコトコ
『うぅ・・・やっぱり・・・暗くて薄気味悪い・・・怖いよぉ・・・』
ピカッ
『ふぇ・・・?今・・・何か光った・・・?・・・まさか・・・幽霊とか!?』
ピカーーーー
『ま、まぶしぃ・・・』
ぽん
[ふぁ〜ここが人間の世界ですかぁ]
『う・・・何・・・タヌキの・・・ぬいぐるみ?』
[あ、貴方・・・私がみえるのですか?]
『あわわ・・・ぬいぐるみが・・・喋った!?』
[ぬいぐるみとは失礼な!私は、デレール国からこの世界を救いに来たのですよ?]
『へ・・・救う・・・?』
[今この世界は、ツンパワーに満たされています。このままでは、デレの無い世界になってしまいます]
『ツンパワー・・・?デレ・・・?』
[簡単に言うと悪い力が強くなって、世界中のみんなが悪人になってしまうって事です]
『そ、そうなんですか・・・・』
[それを見かねたデレール国の王様がこの世界を救おうと私を使わした訳です]
『はぁ・・・そうなんですか・・・頑張って・・・ください・・・よろしくです』
[ま、待った!]
『へ?』
[わ、私の力はこの世界では殆ど使えません。ですから、この世界の人間の協力が必要なのです]
『それって・・・もしかして・・・?』
[その通り。私の姿が見えるという事は、貴方には隠された強いデレがあるという事です]
『・・・私・・・忙しいので・・・これで・・・』
[む・・・あっちの方向に、強いツンパワーを感じます。さっそく浄化をしに行きましょう!]
『え・・・わ、私は・・・関係ない・・・ま、待って・・・引っ張らないで〜〜〜』

「よぉ、お前、夜の学校で何してんだ?」
「あ、いえ・・・ちょっと待ち合わせを」
「そうか、そうか、そりゃ大変だな。それよりよ・・・俺達遊ぶ金がねーんだ」
「お前、ちょっと財布だせや?」
「僕、あんまりお金もって無いので・・・」
「良いからさっさとだせよ!オラ」
[む・・・あの人たちからもの凄いツンパワーを感じます]
『・・・あ!』
[どうしました?]
『あの・・・たかられてる方・・・孝樹だ・・・』
[お知り合いですか?]
『う、うん・・・その・・・幼馴染で・・・家がお隣なの』
[それなら助けないと]
『で、でも・・・私が出て行っても・・・』
[大丈夫、私がついてます。さぁ、このステッキで変身です]
『へ、変身・・・?でも・・・』
「オラ!さっさと出せよ!殴られたいのか?」
「ご、ごめんなさい。このお金は、幼馴染にプレゼントを買うお金なんです」
『(私に・・・プレゼント・・・?そのために・・・・ばか・・・)』
[さぁ、早く。でないと、彼が酷い目に会いますよ?]
『わ、分かった・・・行くです・・・』
ピカッピカッピカッ
『ちなみ〜ん・・・みんみん・・・大変身〜〜〜』
パァ〜〜〜〜
『魔法少女・・・シャイリーちな・・・こっそり登場・・・です』
[シェイリーちな、ステッキを高く掲げて「ミラクルコスチューム召還!」と叫ぶんだ]
『うん・・・ミラクル・・・コスチューム・・・召還!』
ピカピカ〜〜〜 どさっ
『な、何か・・・降ってきた・・・・』
[今の状況にあわせて、適切なコスチュームが召還されるんだ。さぁ、それを着て彼の元へ早く!]
『わ、分かった・・・ていうか・・・着替えるの?』
[説明は後です、さぁ急いで]
『うぅ〜ん・・・分かった・・・恥ずかしいけど・・・』
ぬぎぬぎ いそいそ
『よし・・・いくです!』

「この野郎!痛い目に合わないとわかんねーようだな」
「うぅ」
『待つのです』
「あーん?な、何だてめーは?」
『チワワ・・・ちなです・・・』
「何だこの犬のきぐるみ着た、イカレタ女は」
『・・・』
「な、何だよ・・・何か言えよ」
『くぅ〜ん・・・』
「くっ・・・こ、この・・・お、お前なんか・・・」
「兄貴、あ、あの目が・・・あの目が・・・」
「何だ?不良達が苦しんでるぞ?」
『くぅ〜ん・・・くぅ〜ん・・・』
「うはぁ、可愛い!畜生、そんな目で見るな!汚れた俺を見るな!」
「あ、兄貴、俺も耐えられません!」
「おい、子分行くぞ!ペットショップでチワワを買うんだ!!!」
「合点です」
ダダダダダッ
『あれ・・・?私・・・何もしてないのい・・・逃げてった・・・』
[シャイリーちなの力で、ツンパワーを浄化がされ、デレデレになったのです]
『ふぅ〜ん・・・そうなんだ・・・』
「あ、あの・・・」
『(わっ・・・孝樹・・・どうしよう・・・私が・・・こんなの着てたら・・・嫌われちゃう)』
「危ない所を助けてくれて、ありがとう」
『え?・・・気がついて・・・ない?』
「何がですか?」
『な、何でもない・・・何でも・・・あはは・・・』
「はぁ・・・」
『わ、私は・・・君を助けたかった・・・訳じゃないからね?ただ・・・使命だから・・・しょうがなく』
「それでも助かりました。ありがとうございます」
『ふ、ふん・・・それなら・・・報酬・・・よこせ』
「お、お金ですか?それは・・・」
『ち、違う・・・今は・・・チワワ・・・ちな・・・犬への・・・ご褒美と言えば・・・?』
「・・・こうですか?」
なでなで
『くぅ〜ん・・・』
「可愛いですね」
『か、可愛いとか・・・言われても・・・嬉しくないんだから・・・そ、それじゃ・・・』
「ま、待って!名前、教えてください」
『魔法少女・・・シャイリーちな・・・それでは・・・ごきげんよう・・・とう』
しゅぱっ
「ありがとーーー」

『(さて・・・こっそりと・・・今帰って来・・・た感じで・・・)』
「あ、ちなみ、今終わったのか?」
『勿論・・・たった今・・・委員会終わった・・・それより・・・何で・・・ここに?』
「その・・・一緒に帰りたくて。待ってたんだけど・・・迷惑・・・だったかな?」
『そ、そんなの・・・当たり前・・・でも・・・夜遅い・・・だから・・・仕方ない』
「一緒に帰ってくれるの?」
『どうせ・・・変える方向も同じ・・・好きにしろ』
「うん、そうさせてもらうよ」
『・・・ま、待ってて・・・くれて・・・あ、ありがと』
「え?今何か言った?」
『な、何でも・・・ない・・・気のせい・・・空耳・・・早く・・・帰るぞ!』
「そうそう、聞いてよ。さっきさぁ―」

[こうして私の魔法少女生活が始まった。この先、どんな事があるのか、ちょっぴりだけ楽しみ・・・かな?]

『たのしかった・・・です・・・しゃいりー・・・ちな・・・さいこう・・・です』
「なんか大人のお友達向けって感じだな。本当に子供向けか??」
『ふふふ・・・ちなも・・・いつか・・・まほーしょーじょ・・・なるです』
「あはは、なれると良いな」
『にぃに・・・あの・・・ちわわさんの・・・きぐるみ・・・ほしい・・・かうです』
「え?売ってないだろ?」
『じゃー・・・うりはじめたら・・・かって?』
「しょうがないな。まぁ、子供用サイズならそんな値段じゃなさそうだしな」
『やくそく・・・だからね?・・・まもらなかったら・・・はりせんぼん・・・ぷくぅ・・・だよ?』
「分かったよ」

目を開けて、再び昔の日記の文章を読む。
[まほーしょーじょ しゃいりーちな おもしろかった]
私と同じ名前の魔法少女の物語。確かに夢中になるはずだな。そういえば、このアニメを
最後まで見た記憶がないけど、最後どうなるんだっけ?

『バカ兄・・・聞きたい事がある・・・』
台所で牛乳を飲んでる兄を捕まえ、先ほどのアニメの話をしてみる。
「あぁ、シャイリーちなか。あれは、3回放送したんだけど、何かの事情で打ち切りになったぞ?」
どうりで覚えていないはずだ。という事は、来週と再来週で終わりという事か・・・。
「そういえば、最近DVDで出たはずだよ。たしか、初回特典が実寸大のチワワきぐるみとか」
『それ・・・何かの・・・嫌がらせ?』
「あはは、子供サイズならともかく、高校生が着れるサイズだもんな」
笑う兄を見て、ふと思い出す。そういえば、売り出したら買ってくれるって約束したな・・・。
『じゃぁ・・・それ・・・買っといて』
「はぁ?」
『昔・・・約束したよね・・・チワワきぐるみ・・・売り出したら・・・買ってくれるって』
「いや、DVDのオマケだからさ。きぐるみ売るわけじゃないだろ?」
『うるさい・・・単価で言えば・・・きぐるみの方が・・・高い・・・黙って・・・買え』
「ったく・・・お前は子供か」
呆れ顔の兄の背中を押して、部屋に戻る。パソコンの通販サイトで早速購入させて準備完了。
あとは、届いたチワワのきぐるみを着て、アニメのように可愛く『くぅ〜ん・・・』と鳴けば
頭を撫でてくれるのは間違いない。もしかしたら、抱き枕代わりになれとか言われるかも!?
自分の部屋に戻り、ベットに寝転がると、あれこれと妄想してはゴロゴロ転げ回る私でした。


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