・メイドツンデレを映画に誘ってみたら(その4)

『ええと……確か、こっちだったような……』
「確かって、大丈夫かよ。何か不安な道案内だな」
『横からゴチャゴチャ言わないで下さい!! 地図で見るより道は多いし人も多いしで戸
惑っているだけです』
「ふうん。じゃあ、道自体は当然頭に入っているんだな?」
『無論です。でないとエスコートなど、出来る訳ありませんから』
『(どうしよう……うろ覚えだから、いまいち自信無いのに…… どこかで地図でも見れれ
ば…… そうだ。あそこのコンビニなら)』
『タカシ様。ちょっとここでお待ちいただいて宜しいですか?』
「いいけど、何で?」
『ちょっとあそこのコンビニに寄って来ます』
「トイレ?」
『違いますっ!!(///////) どうしてタカシ様はいつもいつもデリカシーというものが存在
しないんですかっ!! もう少し考えて発言してください!!』
「いや、スマン。俺に付いて来るなって言うからさ。てっきりそうなのかと思って。てい
うか、何の用なんだ? 俺も一緒に行っちゃいかんのか?」
『ダダダダダ、ダメです!! タカシ様はすぐに余分な物に興味を持ちますから。ちょっ
と喉が渇いたので、飲み物買って来るだけですから、ここで大人しく待ってて下さい』
「了解。芽衣の言う通り、大人しく待ってる事にするよ」
『いいですね!! 絶対ですよ!!』
『(と、とにかく、サッと地図を見て、適当に飲み物買ってすぐに出ないと…… グズグズ
してると、タカシ様の事だから絶対中に入って来ちゃうから……)』


『ハァ……ハァ…… お待たせしまし……あれ? タカシ様?』
 キョロキョロ……
『いない。ど、どこへ行かれたのだろう。もう!! あれほどここで待っててって言った
のに、タカシ様はこれだから…… そ、そんな事より探さないと。でも、こんなに人が多
いと見つかるかしら。も、もしこのまま見つからなかったら……』
「わっ」

『ッっっっっきゃあああああっっっっっ!!!!』
「わわっ!! 芽衣。声が大きい!!」
『タッ……タカシ様!?』
「おう。それ以外何者でもないぞ」
『いっ、いっ、いっ……一体どこへいらしてたんですか!! どこから現れたんですか!!』
「ずっとここにいたよ。芽衣が待ってろっていうから、大人しく」
『嘘です!! 今、私が周りを見回しても全く姿が見えませんでしたもの』
「ゴメンゴメン。ちょっとあそこに立ってる人の裏に隠れてたんだ。俺がいなくなったら
芽衣がどんな顔するかなって思って」
『どうしてそんな意地悪なさるんですか!! 信じられません』
「別に、ちょっとしたイタズラで、意地悪って程じゃ……」
『タカシ様に何かあったら私の責任になるじゃありませんか!! 心臓が縮み上がる思い
がしましたよ』
「そうか。そんなに俺の事を心配してくれたのか。スマン」
『ちっ……違います!! えと、その……し、心配しなかった訳じゃありませんけど、あ、
あくまでその……使用人が主人の事を心配するのは当然の事ですから……』
「分かった分かった。何にせよ、芽衣の寿命を縮ませるような事をしたらマズイからな。
もうしないよ」
『そんな事を仰っても、タカシ様はどうせすぐにお忘れになって、また同じイタズラをな
さるから信用出来ません』
「いや。今度ばかりはもうしないって約束するよ。絶対に」
『分かりました。信用はしませんが言葉だけは受け止めておきます』
「随分とキツイ言葉だなあ。主人の言葉くらいもう少し信用してくれてもいいと思うんだけど」
『日頃のタカシ様の行いの悪さが原因です。これを機に少しは自重して頂けると宜しいのですが』
「分かったよ。反省する」
『その反省が口だけではない事を少しでも見せてください。期待はしませんが、お願いは
しておきます』
「分かったよ。それにしても、随分慌ててコンビニから出てきたな。何もそんな急ぐ事は
なかったのに」

『主人を待たせないのもメイドとしての努めですから。いつも呑気に構えていらっしゃる
タカシ様とは違います』
「それはいいけどさ。そんな慌てて地図で道確認しても、しっかり覚えられたのかな、と思って」
『!!!!!(/////////) だっ……だだだだだ、誰が地図なんて見てたって言うんですか!!
私はそんな事してません!!』
「ほう。証拠現場はバッチリと押さえてあるんだけどな」
『んなっっっっっ!! 何てことなさるんですか!! 勝手に人の事を盗撮しないで下さ
い!! 犯罪ですセクハラです東京都迷惑防止法条例で訴えますよ!!』
「ま、何と抗議されようが、この地図を見てる女の子は間違いなく芽衣だよな?」
『た、確かに写っているのは私です。け、けど何でこれだけで地図を見てるって分かるん
ですか!! 見ている本が分からない以上、証拠になんてなり得ません』
「芽衣がこんな時に趣味の雑誌なんて立ち読みする訳ないだろう? なら、今必要なのは
地図くらいしかないじゃん。それとも、違うのなら何を確認したのか教えてくれるか?」
『うっ…… ううううう………… えっ……と……その……それ……は…………』
「即座に答えられない段階で認めたようなものだな。まあ、別にいいよ。そう格好つけな
くたって、キチンとエスコートする為にはちゃんと道を調べる事は重要だもんな」
『いっ……言っておきますけど!! 道が分からなくなったからではありません。あくま
で確認の為であって、ちょっとその……あまりの人の多さと道の複雑さに自信がなくなっ
たものですから、念の為にと、そう思っただけです』
「そうか。で、ちゃんと道は確認出来たのか?」
『無論です。ご安心くださいませ。これでもうバッチリです』
「よっしゃ。なら、行くか。案内、バッチリ頼むぜ」
『そ……その前に、ちょっと……宜しい、ですか……?』
「あん? どうかしたのか?」
『あの……お手を……貸してもらえます?』
「手を? こうか?」
『あっ…… は、はい……』
 キュッ
「ちょっ…… ど、どうしたんだよ。いきなり人差し指を握ったりして」

『こっ……これはですね、その…… さ、さっきみたく、また雲隠れされては困りますし、
そうでなくてもこの人の多さですから、ちょっと目を離した隙にはぐれたなんて事になり
かねませんし』
「……俺は子供か」
『背丈が伸びてるだけで、子供と大して代わりありません。でっ……ですから、その……
失礼かとは思いましたが、こういう処置を取らさせて頂きました。その……あ、あくまで、
使用人としての立場からですから……』
「最後、いちいち強調しなくてもいいって。それとさ」
『え? そ……その……何かご不満でもおありですか……?』
「うん。どうせ握るんなら、人差し指だけじゃなくて、手を繋いだ方がよっぽど効果的じゃね?」
『てっ!? ててててて、手ですか!?』
「うん」
『冗談ではありません。そ、そんな恐れ多い事はメイドとしての立場で要求できるような
事ではありません』
「メイドとしての立場はともかくとして、芽衣は俺と手を繋ぐ事は嫌なの?」
『へっ……わ……わた……?』
「そう。芽衣自身はどう思っているんだ?」
『わ……わた……しは、そそそそそ、そんな……いっ……嫌とかいいとか……というか、
出来る訳ないじゃありませんか!! 無理です。そんな事……(//////////)』
「何で? そう難しい事じゃあないと思うんだけどな……」
『とっ……とにかく!! 無理なものは無理なんです!! ゆ、指を握るだけでもその……
精一杯なんですから、これ以上は要求なさらないで下さい!!』

『(あああああ……私のバカバカバカ!! で、でも……こうしてタカシ様の指を握るだけ
でも、すっごく恥ずかしいのに、手だなんて……やっぱり、そんなの……む、無理ですよ
……ゴメンなさい、タカシ様……(///////////))』


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